第006話 村改造計画
現段階では計画段階です。
実行はまだまだ先ですが。
「村の区画整備?」
“そう、何も田畑の移動とかしろということではなく今ある家の建て直しの許可がほしいんだ。”
「しかしな…先立つものが無いからどこも出来んぞ…」
“あぁ、その点は心配要らない、手空きの人間を借りることはあっても基本全部私がするから。”
そう言いながら大きな『紙』を取り出し見せるラン。
「おまえ、こんな高級なものどこから?」
“(あぁ、やっぱり『紙』そのものは存在するんだ、製品の質はまったく違うだろうけど…)”
“そこは気にしないで、村の復興計画と一環として『紙』の製造も出来るかはまだ検討中だし。”
「いや、しか“気にしないで!”…わかりました…(やっぱり女は怖い…)」
“これを見てわかるように街道と繋がっている村の中央道路の拡張の整備とその道沿いの家の再建。
見栄えがある程度整わないと防犯の意味でもまずいのよ。
それにきれいな村で無いと宿屋を再建しても泊まる人も少ないと思うよ?”
ランは理由まで詳しく説明しなかったが一言“スラム街と貴族街の差”でなんとなくだがカールドも理解したようだ。
地球では『割れ窓理論』として環境犯罪理論上では当たり前の理論になっている。
簡単に言うとアメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが唱えた「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」 という理論だ。
これが恐ろしく当たっているため最近の防犯では当たり前のように取り入れられている。
まぁ、そのあたりを説明しても時間がかかるし理解しにくいだろうから簡単にスラム街と貴族街の差で想像させたわけだ。
紙にはこの村の再整備案が図で描かれていた。
区割り等は大きく変更することは無い。
ただ道に沿って家をきれいに並べなおすのが主体の整備だ。
同時に村の中央から半径2kmほど先に『壁』と『堀』の計画も描かれていた。
これは現在の村人の田畑の場所を確認した上でその外側を取り囲むように壁で囲むようにしたらこうなったわけだ。
「この『壁』と『堀』もランがするのか?」
“うん、木の伐採で人手借りるかもしれないけどあとは主に『土魔法』と『道具』で何とかなりそうだしね。”
「魔法って…ランお前魔法が使えるのか??」
“あ、うん、ちょっとだけね…”
「人は見かけによらないものだな…」
“どういうことよ?”
少し怒った顔して問い詰めるとカールドは簡単に話してくれた。
『攻撃や工事に使えるような魔法を使えるのは貴族だけだ』だそうだ。
何も魔法を秘匿したとか魔法使いが貴族という意味ではなく大昔この地に大魔法文明があった事からわかるように一般人にも魔力は備わっている。
しかし代を重ねるごとにこの能力は弱まってきたらしい。
一般人にしてみたら竈に火をつけるとか簡単な魔法だけでさほど問題にならなかった。
おかげでますます弱くなり今では簡単な魔法ですら発動できない程の魔力しか持っていない人がほとんどになったそうだ。
変わりにその手の生活用品用の魔道具が普及したのだが…やはりそれなりに高いものである…
しかし貴族は違う。
ある意味本当にそう思っているかは別として『いざと言う時民を守るために魔法は必要である』の建前を元に魔力の強いもの同士の婚姻を進めた結果一般人よりは魔力の保有量が多く魔法を使えるものが多いそうだ。
もっともカールドに聞く限り中級クラスの魔法がひとつでも使えると『大天才』あつかいだとか…。
さらに最近では魔法が扱が扱えない貴族の子は村八分状態が他国の貴族社会では見られるらしい。
この国は冒険者が建てた比較的新しい国ゆえに古くからの貴族の血筋なんてものはごく少数でほとんどが一般人出身の為『魔法使い』が貴族のステータスではなく貴族でも魔法が使えないものは結構いるらしい。
逆に先祖返りだろうか一般人でもごくまれに魔法使いが生まれることがあるという。
もっともそういったものは即国からスカウトがきて国に仕える者がほとんどだとか。
その他のごく少数はほとんど『冒険者ギルド』に所属しているということらしい。
“(これはとっとと『冒険者ギルド』で冒険者登録しないと余計なことに巻き込まれる可能性が高いですね。)”
そう思って熊悟郎に聞いてみるとそうしたほうが良いといわれた。
魔法のことも詳しく聞くと属性も六つ全部そろっているものはいないという。
魔法の属性は基本が火・風・土・水の4つ。
これに光・闇の属性がつく。
別に闇=悪ではない。
闇の属性は『麻痺』・『暗視』・『暗闇』といった補助魔法が主である。
この世界の人はこのうち大抵1属性のみでごくまれに2属性がいる程度だという。
2属性にもなると宮廷魔術師レベルだとか…
6属性全部持っている俺はどうなるのよ…
もしかしてばれたら『魔王』様扱いじゃないだろうな…
とりあえず極力隠すことにしよう…
この村以外では…
もう『白い魔王』様扱いは御免です…
(ゲーム世界ではとあるイベント以来ランは『白い魔王』と2つ名をつけられてしまった)
“とりあえずこの整備計画も今すぐには無理だからその前に村の人たちに根回しをかねた説明会をひらくよ。
先に王都行かないといろいろややこしいことになりそうな予感がひしひしするし…
どっちにしろちょっと道具も仕入れたいからね。
それに『さらわれ人』のことも調べたいしね。”
そのランの言葉にハッとするカールド。
“いや、帰りたいとかじゃないよ。
『さらわれ人』がどんな生活していたか調べときたいんだ。
それによってもこちらの対応も考えないといけないからね…。
なんかいやな予感がヒシヒシとするんだよね…”
それを聞いたカールドもホッとすると同時に苦笑もしていた。
それを見るとどうも『さらわれ人』のあつかいも色々あるようだ。
“(定番の異世界トリップや転生物には大抵チートが付けられてなんで問題にならないんだというような行動するのも多いですからね。
そんな人間みつけたら世界のためだとかいって解剖しそうな人も地球では数人知ってるし俺も捕獲に追いかけそうだもんな。
というか普通国がだまっていないだろう…
とりあえずどれくらいまで許されるのか調べてそれで路線を決めたほうが良いな…)”
それと王都で雑貨店を営んで現地に溶け込んでいる陸上自衛官ともコンタクトをとっておきたい。
場合によっては協力してもらわないとな…
主に作った製品の販売路線で…
とりあえず行商人が再び来るまでに狩をして王都での活動資金作らないといけませんね。
できれば魔獣を10匹ばかりつぶして魔核とりでもしますか…
研究のためにも数匹余分に倒して『魔核(魔石)』の使用法も調べたほうが良いですね。
さてと昼から山を探索してみますか。
スキル使う前に勝手にしたら不味い気がして根回し編をいれたらさらに村改造が遠のいた?
とりあえず王都に行く前に金策をさせることにします。
なんか本当にゲームみたいに強さの前にまず装備の世界になってきたな…
異世界もまずは金の世知辛い世の中でした。(笑)