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第八話 どきどきのお風呂タイム

家に帰って、夕飯を食べる。


帰ってくるのが遅くなったため、冷蔵庫に入れておいた昨日の残りと簡単にできるもので済ませる。


いちいち新しく作ってたら、たぶん遅くなってしまうと思う。


そんな事になれば、折角機嫌を直した雪華がまたすねてしまうかもしれない。


それなら、無難に無難にしておくほうがいい。


まぁ、疲れたから、手を込んだのを作る気が起きないのも歩けど。


「ねぇ、パパ。そろそろ行こう?」


僕は、夕飯を食べてしばらくぼんやりとしてた。


今日一日疲れたから、そうさせてくれてもいいと思う。


そして、雪華は雪華で、今日買ったものを袋から出して、感嘆の溜め息をついてはうっとりとした顔で見ている。


その顔はかわいいんだけど、なんとなくちょっぴり抜けてるようにも感じられる。


そもそも、雪華はファッションについて何の知識ももっていないはずだ。


だから、服を見て、感嘆の溜め息なんてつきようが無い。


たぶん、なんとなくそうしてるだけなんだろうけど、それを考えるとやっぱり抜けてるように感じる。


「ねぇ、パパ」


と、それはいいとして、雪華が呼んでいる。


これにちゃんと反応しなかったら、それはそれでまた、機嫌を損ねてしまうかもしれない。


気をつけないといけない。


「あぁ、ごめん。雪華はもう準備できたの?」


「うん、当然」


僕はその返事としてそう訊ね返す。


けれど、雪華はそれが愚問の如くはっきりと頷く。


その声はとても嬉しそうだ。


「そっか、ちょっと、準備してくるから、待ってて」


これなら、大丈夫そうだ。


まぁ、かなりの覚悟を決めて、雪華のお願いをかなえることにしたんだ。


そうならないと、かなり辛い。


僕は、部屋に戻ると、着替えを準備する。


「んじゃあ、いこっか」


そして、雪華を連れ立って、居間を出る。


ここまでくればみんなも判るだろう。


雪華のお願いが何か。


そう、雪華のお願いは、一緒にお風呂だった……


僕は、さっさと服を脱ぐと、身体を軽く流してから浴槽に入る。


その際、壁の方へと向くことは忘れない。


雪華と一緒に入る。


精神年齢はまだまだ子供と言っても、身体は十分お年頃。


正常な男子の僕には、刺激が強すぎる。


浴室の扉が開く。


どうやら、雪華が入ってきたらしい。


「~~~♪」


しかも、かなりご機嫌らしく、鼻歌を口ずさんでいる。


そんなに、僕と一緒に入るのが嬉しいのだろうか。


子供?の考えることは分からない。


「先に洗ってから入っておいで」


それはさておき、最初のうちに釘をさしておく。


今のご機嫌な雪華じゃ、いきなり浴槽の中に飛び込んできかねない。


もしそんなことになったら、たまったものじゃない。


そんなに広くも無い浴槽に二人して入れば、ぎゅうぎゅううづめになることは間違いない。


そんなことになれば、ただでさえ、今の状況でも心臓に悪いのに、さらに悪化しかねない。


こう言う状況になれてないんだから当然だ。


「うん、わかった」


そんな僕の内心も知らず、雪華は素直に頷くと、洗い始める。


ただ、僕としては、正直助かった。


雪華の洗い方のおかげだ。


まだまだ子供な雪華の洗い方は、雑で、バシャバシャやっている。


子供のお遊びみたいだ。


これがもし、しずしずと洗われようならたまったものじゃない。


さらに意識させられる事になっただろう。


雪華が、全部洗い終わると今度は僕が浴槽から出る。


もちろん、背中を向けて、だ。


身体を洗い終わったばかりの、水気を含んだ状態はさらになまめかしくなると思う。


そんなものを見せられたら、目の保養どころか、毒だ。


僕は、浴槽から出ても、雪華には背中を向けて洗い始める。


相変わらず背中越しにご機嫌な鼻歌が聞こえてくる。


そういえば、今更ながらに思ったけど、昨日はちゃんとは入れたのだろうか。


まぁ、見たわけじゃないけど、さっきの感じだったら、ちゃんと洗えてたと思う。


だけど、なんとなく違和感がある。


精神年齢はまだまだ、子供。


なのに、身体の洗い方は知っている。


なんとも、奇妙な話だ。


まぁ、自分でできるから、いちいち僕が面倒見なくてすむから、助かったと言えば助かったけど。


それに、いちいちそんな事を気にするのは、止めにするはずだったはずだ。


考えたところでどうこうなるような事じゃないのは確かなわけだし。


そんな事を考えながら、体を洗い流す。


だけど、そこで背後の気配が変わった。


さっきまで聞こえてた鼻歌が聞こえなくなった。


どうしたのだろう?


内心でそう思いつつも、どうしようもない。


振り返る事ができるわけでもないし。


だけど、もしかすると、はしゃぎすぎて、湯あたりしているかもしれない。


それでも、やっぱり振り返る事は出来ない。


一体どうしよう。


半ば、頭が混乱しかけ始めたちょうどそのとき


「パパ♪」


いきなり、何かが覆い被さってきた。


いや、たぶん、パパと言ってるから、雪華なんだろうけど・・・


それよりもどうにかして欲しい。


背中に、じかに当たる女の子特有の柔らかさ。


二つのふくらみ。


そんなの、僕には刺激が強すぎるって!!


「ええっと、それじゃあ、そろそろ出るね」


僕は半ば以上錯乱しつつ浴室からほうほうのていで逃げ出した。


洗い終わってからだったのが、不幸中の幸いだ。


精神年齢が低いからなんだろうけど、相変わらず突拍子のないことばかりしすぎだ。


雪華としては、単なる親子のコミュニケーションなんだろうけど、もう少し考えて欲しい。


こんな事がしょっちゅうあったら、僕の心は休まる暇もなくなってしまう。


こんな時、ママ役の誰かがいてくれば助かる。


まぁ、それこそ、無理だろうけど。


本当に、彼女でもいればよかったのに。


そうなれば、ママ役をしてもらえるから……


て、待てよ。


そもそも、そんな事いったら、逆に雪華と僕の関係を誤解される事は間違いない。


雷が落ちたところに言ってみたら、そこには少女がいた。


それで、風邪をひいたらいけないからって、その子を連れて帰ろうとしたら、パパにされてしまった。


しかも、その子は天使。


そんな事を言って、誰が信じてくれるだろうか。


むしろ、年下の子にパパと呼ばせている変態と思われるに違いない。


そして、あえなくお別れになると思う。


……最悪だ。


と言うよりも、そもそも、僕に彼女なんて出来ないか。


まぁ、結末は結局そうなるんだけど、自分で考えて、少し寂しい。


泣けてくる。


まぁ、今は友達とばかしている方が楽しいからいいけど。


嘘じゃないから。


単なる虚勢じゃないからね!!


「パパ、身体拭いてちょうだい。」


「うん??」


けれど、そんな無駄な事を考えていたのがいけなかったんだろう。


僕は雪華に呼ばれて、ほとんど条件反射で振り向く。


そして、見ることになる。


一糸纏わぬ雪華の姿……


当然の如く僕は顔を真っ赤にして


「じ、自分で拭いて!!」


脱兎の如くその場から逃げ出した。


冷蔵庫から、麦茶を出すと、コップについで、それを一気に飲み干す。


別に、長い間入ったわけじゃないのに、かなり身体が火照っている。


それもこれも、雪華のせいだろう。


雪華にしてみれば、親子のスキンシップかもしれないけど、僕にしてみれば、迫られているようにしか感じられない。


おかげで、今にものぼせ上がりそうで、麦茶でも飲んでないとやっていられない。


それぐらいでしか、身体を冷やせられない。


なんだか、雪華が来て、まだ二日目、まだ一日しかたってないのに、すっごく疲れた気がする。


これが、まだまだ、続くんだ。


しかも、いつ終わりが来るのかも分からない。


これじゃあ、雪華がある程度しっかりする前に、僕の方が気疲れでダウンしてしまいそうだ。


そもそも、こんな日々がこれからも続くと思っただけで、今もさらに疲れた気がする。


「ねぇ、パパ」


麦茶をもう一杯つぎ、それを飲み終える頃に、雪華も台所にきた。


頭がまだ生乾き意外なところはしっかりとふけている見たいだし、今日買ったばかりのパジャマもしっかりと着れている。


これで、どうして、精神年齢が、低いのかが不思議だ。


「うん、どうしたの??」


と、それはいいとして、雪華の調子が気になる。


なんだか、今にも泣き出しそうな顔をしている。


「どうして、パパは、私から逃げたの??」


そのわけをきいてみたんだけど、すぐに耳が痛くなった。


いや、耳だけじゃなくて、頭もだ。


できれば、言われたくない事だった。


だけど、雪華にしてみれば、言わないと気がすまないんだろう。


甘えようとすると、すぐに僕が逃げ出すから。


まぁ、答えようと思えば簡単なんだけど、果たして、雪華が納得するだろうか。


たぶん、いや、まず間違いなくしないと思う。


そもそも、僕の気持ちを理解すら出来ないと思う。


さて、それなら、どう説明すればいいだろう。


「やっぱり、パパ私の事嫌いなの??」


どう説明すればいいだろう。


だけど、いくら考えても答えも出なくて、押し黙っていると、いよいよいつ泣き出してもおかしくないぐらいの顔をし始めた。


大きな瞳は涙で滲んできている。


「いや、そんなことはないよ。パパは雪華のこと、大好きだよ」


これ以上、そんな顔をさせるのは、なんとしても避けたい。


説明うんぬんよりも、雪華をなだめることが先だ。


「んじゃあ、どうして、すぐに逃げたの??お風呂も一緒に入るのいやっていうの??」


だけど、そう思ってもすぐに、元に戻ってしまう。


どうやら、答えないといけないみたいだ。


けど、僕にどうしろと言うんだ??


素直に、言えというのか?


でも、はっきりいって、雪華にそれが通じるとは思えない。


だけど、言わないと雪華は絶対に泣いてしまうだろう。


現に、また少し涙が滲み始めた。


僕は内心で溜め息をはくと、覚悟を決めた。


「パパは恥ずかしいんだよ」


事実をありのままに言うしかない。


「恥ずかしいの??」


だけど、やっぱり、雪華には、通じていないらしく、頭に?が浮かんでる。


それでも、僕は半ば挫けそうな志を何とか持ち直させると。


「うん。あのね、女の子が、男の子の前でお洋服を着ないでいることは、とっても恥ずかしい事なんだ。もちろん、パパの前でもね」


雪華に分かりやすいように説明する。


まぁ、微妙に話をすりかえてはいるけど。


けど、これなら、たぶん雪華も分かってくれるはずだ。


どうして、洋服を着ない事が恥ずかしいのか、ということには触れていないけど、雪華には十分だと思う。


まだまだ、幼い雪華にはそこまでは、まわらないはずだ。


「でも、ママは、パパとはいっしょにお風呂に入ってもいいのよ、って言ってたよ??」


確かにまわらなかった。


そこに突っ込む事はしなかった。


だけど、それ以上にもっと厄介な事を聞いてしまった。


というか、そもそも、彼女の母親は何を考えているんだ!!


だけど、正直言って困った。


何が困ったかと言えば、もちろん雪華の母親の言った事だ。


雪華の中では、たぶん一番優先されるのは、『ママ』の言葉だ。


だから、僕の事を『パパ』なんてよんでいるんだ。


もし、『ママ』の言葉がなかったら、僕が『パパ』になる事なんてなかったと思う。


つまり、全ての元凶は、彼女の母親にある。


だからといって、彼女の母親にだって、色々と都合があるんだろう。


そうじゃなくちゃ、見ず知らずの人間に、こんな精神年齢の低い女の子を任せたりはしない。


だから、責めるわけにも行かない。


て、少しはなしがずれてきた。


今気にしなくちゃいけないのは、お風呂だ。


というよりかは、世間一般的な常識が抜けてしまってる。


だからこそ、一緒にお風呂に入りたがるんだ。


普通、年頃の女の子が同世代の男の子と入ろうとは思わないはずだ。


雪華も、外見に合った精神年齢になってもらわないと困る。


そうじゃなければ、僕が耐えられない。


誰か、ちょうどいい人材は無いだろうか。


「ねぇ、パパ。眠い」


「あ、と、んじゃあ、そろそろ寝ようか??」


それを考えるのもいいけど、まずは雪華の面倒を見るのが一番大事だ。


考える事は後でもできる。


今やらないといけないことをしておかないと。


じゃないと、また今日みたいな羽目になってしまう。


それだけは、勘弁してもらいたい。


今日一日はしゃぎ過ぎたんだろう、布団の中に入ると雪華はすぐに寝てしまった。


相変わらず、今日も僕のふとんで。


一緒にお風呂に入ったんだから、今日ぐらいはいいだろう。


そう思ったんだけど、それはそれで別の事らしい。


まぁ、お詫びのしるしに一緒に入ったわけだから、当然なのかもしれないけど。


それに、今日は昨日と違って、平静でいられるから、別に良いし。


やっぱり、したことあるかないかでは、微妙に違ってくるみたいだ。


まぁ、今も恥ずかしいといったら恥ずかしいけど。


それでも、たぶん昨日みたいに眠れないって事なんてないと思う。


僕は首だけを動かして、隣で寝ている雪華を見る。


僕の腕をしっかりと抱きしめている。


その顔は、ひどく安心していて、幸せそうだ。


気がつくと、いつのまにか、雪華の頭を撫でていた。


まぁ、それぐらい可愛かったんだから、仕方ないか。


「ん~」


それが、気持ちよかったのか、雪華は表情を崩す。


可愛らしい笑みを浮かべる。


なんと言うか、まさしくエンジェルスマイル、天使の微笑って言うやつみたいだ。


まぁ。雪華は天使なので、そのままかもしれないけど。


でも、そんな事関係ないぐらい、本当に可愛らしくて、見てるこっちまで幸せになりそうだ。


おかげで、今の僕の心も穏やかだ。


今日一日の疲れが吹き飛んでしまうほどだ。


だからといって、この笑顔を見たいからといて、今日みた稲湖とは絶対にしたくないけど。


あれは、かなりきつい。


あれだけは、勘弁して欲しい。


「んにゃ、むにゃ、パパ」


それに、一緒に寝てれば、その笑顔はいつでも見れるか。


なんか、半ば以上毒されたような事を思い浮かべてしまったけど、それもなんかどうでも良くなった。


まぁ、文句ばっかり言っても仕方がない。


今の状況を精一杯楽しまないとね。


最後に心の中でそう呟くと、僕は眠りについた。

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