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第十一話 針の筵のバカップルの愛?の逃走劇

けど、いい案が浮かんだと同時に、予鈴がなったので、仕方なく雪華を担任に預けて教室に戻った。


そのとき、また今にも泣きそうな顔をしたけど、休み時間にまた会いに来るということで手をうってもらった。


さすがに、教室にまで連れて行けない。


それに、教室に戻ってから、思い出したが、いまだに先ほどものことを引きずっていた。


思いっきり、戻ってくると同時に視線を浴びた。


それを半ば無理やり無視すると、自分の席について、授業を待った。


そして、ついに放課後になった!!


なんだか、漫画の前回あらすじのような気がするのは僕だけなのだろうか??


ま、まぁ、気にしても仕方ないか。


なんとなく、嫌な予感がするし。


これ以上突っ込んではいけないと。


だから、それは置いておくとして、職員室から雪華を連れ出すと、誰もいない教室へと入る。


雪華といえば、何がなんだかわからず、ぼんやりとしている。


まぁ、いきなりこんなところに連れ込まれれば当然か。


僕は、窓際の席に座ると、雪華を手招きする。


こんなところに連れ込んだ理由はひとつしかない。


友達から逃げ出すためだ。


雪華と一緒にいるところを見られて、勘違いでもされたらたまったものじゃない。


確実に嫉妬の渦中に叩き込まれることになるだろう。


だから、かえるまで待っておくことにしたんだ。


雪華は、一瞬また首を傾げたが、すぐに僕のほうにとてとてと歩いてよってくる。


なんとなく、子犬みたいだ。


そして、雪華も座る。


場所は僕のひざの上。


まぁ、なんとなく予想はしてたけど。


けれど、僕はそれに対して何の文句も言うつもりはなかった。


逆に優しく頭をなでてやる。


今日一日良く頑張った。


その意味を込めてだ。


しばらくの間、僕たちはそうしていた。


窓の外を見れば、空は茜色に染まっている。


そして、僕の膝の上にはいまだに雪華がいる。


普通の人にしてみれば、たぶん羨ましい。


そんなことを思わせるような状況だろう。


僕だって、最初はそれなりにうれしかった。


父親失格かもしれないけど。


でも、今は違う。


雪華には悪いけど、今はなんと言うか、わずらわしくなってきた。


別に、ただちょこんと座ってるだけなら、そんなことは思わないと思う。


だけど、雪華は大人しく座るどころか、頬擦りするわ、耳たぶをいじるわ、髪をいじるわで、僕の体で遊び始めている。


こんなことされて、いつまでもにこにこ機嫌よくいられない。


それでも、何もいわないのは、僕なりに反省しているからだ。


それをしたいほど、寂しかった。


だから、されるがままの状態になっているんだ。


携帯を取り出す。


授業が終わってからかなり時間がたっているみたいだ。


もうそろそろ、友達も帰ってしまっただろう。


「雪華、そろそろ帰ろっか?」


帰ってしまって大丈夫だろう。


「おいしい晩御飯が待ってるからね。」


雪華も、その言葉を聞くと同時に立ち上がる。


どうやら、お腹がすいてるみたいだ。


まぁ、子供だから仕方ないか。


僕は心の中でそう思うと、雪華を連れ立って、教室から出た。


教室から出ると強烈な視線を浴びた。


最初のうちはなんともなかった。


人通りの少ない教室を選んでいたからだ。


けれど、もちろん、ずっとそんなわけもなく、しばらく歩けば、普通に生徒はたくさんいる。


そんな中を歩けば、視線が集まることは当然だ。


なんと言っても、隣にいる雪華は、中身はおいておくとして、容姿はもう完璧。


誰がなんと言おうと、美少女。


それ以外なんでもない。


そんな中を僕は歩いた。


はっきり言って、針の筵を歩いて気分だ。


隣にいる雪華といえばしっかりと僕の腕を胸に抱きこんでいる。


どうやら、雪華も一応周囲からの強烈な視線に気づいているんだろう。


おびえている感がある。


だからこそ、こうやって僕の腕を一生懸命に抱きこんでいるんだろう。


唯一、頼りになるのが僕だから。


だけど、僕にしてみれば、さらに地獄と化すからやめて欲しい。


余計に視線が強くなる。


嫉妬からだ。


しかもあまり感触のよろしくないものだから、精神的にくる。


まぁ、まだ、知り合いに見られてないだけましだけど。


これでもし、見られたとなると立ち直れない。


そこを何とか抜けると、二人して靴に履き替える。


校外に出れば、まだましになる。


校内だからこそ、目立つんだ。


校外になれば、単なるバカップルですむ。


まぁ、カップルじゃないんだけど。


靴を履き替えると、外に出る。


だけど、そこで足を止めない。


ほとんど走っているのと変わらないぐらいの速度で校門の外へと向かう。


早く逃げ帰りたい。


その一心からだ。


いつもなら、グラウンドで部活をやっている人たちを見ながらのんびりとだけど、今日はそうも行かない。


これ以上は、耐えられない。


命にかかわる。


「雪華、いい?僕はものすごくお腹がすいてる。だから、早く帰りたい。その気持ちわかってくれるかい?」


だから、急がなくちゃいけない。


そのためなら、僕はどんなに汚い手を使おう。


純粋無垢な雪華をだます事だってしよう。


わが身恋しさならなんだってする。


「うん。わかった」


雪華も、お腹がすいたのだろう、すぐにうなづく。


これで了承も取れたわけだ。


「よし、いそごう」


さぁ、さっさと逃げよう。


僕は、いったん腕を解くと、雪華の手をしっかりと握る。


そして、力強く地面をける。


さっさと逃げる。


それなら、走るしかない。


周りが、呆然としているのがわかる。


でも、そんなことを気にしている暇はない。


そんなことよりも逃げることを。


撤退することのほうが、重要だ。


結局、僕と雪華は普段の半分の時間で家に帰った。

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