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転生かぐや姫は帝の寵愛を蹴って鬼退治に出掛けました  作者: 雪途かす


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2/12

壱:すくすく育ったかぐや姫

 案の定、私はかぐや姫と名付けられた。


 お爺さんは讃岐造さぬきのみやつこという、これまた記憶通りの名前だった。

 

 一つ驚いたのは、お爺さんやお婆さんが話す言葉が、国語の授業で習ったような古い言い回しとかはなく、私が知っているごく普通の日本語だったことだ。

 それはまぁ、私がこの世界に転生したことで、何らかの力が働いて自動的に古文での会話が理解できるようになっているだけなのかもしれないけど。


 そんな不思議なこの世界で、お婆さんは喜んで私の世話をしてくれた。

 身長が十センチくらいしかなかった私だが、一年ほどで成人女性の大きさに成長した。


「竹から生まれたから、普通の人間とは違うんじゃろうとは思っておったが、まさかここまで成長が速いとは……」


 しみじみ語るお爺さんと、うんうんと頷くお婆さん。

 仮初の家族ではあるが、親身に世話してもらったこともあり、私もすっかり二人の娘の気分になっていた。


「……それにしても、これだけ美しい娘ですから、きっとすぐに噂が広がって、至る所から嫁に欲しいと言われるのでしょうね……」


 お婆さんがそう呟くと、お爺さんはばっと振り返り、顔を真っ赤にして怒り出した。

 

「馬鹿を言うな! かぐや姫に結婚なんてまだまだ早いわい! どこぞの馬の骨とも知らん小倅に、大事な娘をやれるものか!」


 その怒りように、私も驚いてしまう。

 まさか、お爺さんがここまで親バカになろうとは。


「お父様、心配してくれてありがとう」


 そう言って微笑むと、お爺さんはみるみる上機嫌になって、竹を取りに出掛けて行った。


 ただ、実際に原作では、そろそろ求婚の申し入れが入り始める頃だ。

 うろ覚えだが、確か名のある貴族から始まり、最終的に帝からも求婚されたはずだ。


 かぐや姫はそれを退けるために、無理難題を提示して、それを持ってこられた人と結婚するとか言うんだったよな。


 だがしかし、肝心の無理難題の内容が全然思い出せない。

 宝石のなる木とか燃えない布とか、確かそんな実在しないものだったような気はするんだけど。


 そんなことを考えていると、竹を取りに行ったはずのお爺さんが、とんでもない速さで帰ってきた。


「たたたた、大変じゃ! かか、かぐや姫を、よ、嫁に欲しいと……!」


 ぜぇぜぇと息を切らせているお爺さん。

 先程の様子から、求婚なら断るのでは、と思っていると、お爺さんは妙に興奮した様子で続ける。


「上様が……!」

「上様ですってっ?」


 お婆さんが驚いて立ち上がる。


 上様って誰だ。

 この辺りの領主か。


 そんなことを考えていると、お爺さんは鼻息荒く私に詰め寄ってくる。


「かぐや姫! 喜べ! お前は明日から上様の正室じゃ!」

「はぁぁぁっ?」


 思わず大きな声を出してしまった。


 あれだけ娘は嫁にやらんと言っていたのに、急に寝返って明日嫁に行けとは、一体どういう了見なのだろう。


「お父様! 私は嫁になど……!」

「上様じゃぞっ? この世で最も高貴なお方じゃ! この上なき縁談じゃ! 何が不満か! 結納金もたんまりくれるとの仰せじゃぞ!」


 この世で最も高貴なお方。つまり、帝か。


 私は愕然とした。

 本来の竹取物語では、確か帝は、五人の貴族の求婚を断った後に登場するはずだ。

 まさか、貴族たちを差し置いて真っ先に求婚してくるとは。


 しかも、お爺さんは結納金に釣られて私を売る気でいる。詰んだ。


「わ、私は嫁に行くつもりなど……!」


 断ろうと口を開くが、お爺さんが勢いよく被せてくる。


「今代の上様は途轍もない美丈夫だと聞く! かぐや姫の夫に相応しい! 正室の養父母ともなれば、生涯安泰じゃ!」


 最後のそれが本音か。

 おいじじい、さっきと言ってることが真逆だぞ。


 思わずそんなことを考えてしまう。


「婆さんや! こうしちゃおれん! 明日の輿入れに備えて最上級の着物を買うて来るんじゃ!」


 お爺さんはお婆さんをそう言って促し、家中のお金を掻き集めると、そそくさと町へ出掛けて行ってしまった。


「……は?」


 思わず声が出てしまう。


 いやちょっと待って。

 何がどうしてこうなった。


 貴族たちからの求婚をすっ飛ばして帝から求婚されて、渋るはずのお爺さんは結納金に釣られて私を売ろうとしている。


 私はまだ何もしていないのに、竹取物語のシナリオから逸脱し始めている。

 まぁ、竹取物語は日本最古の物語で作者不詳、諸々につけて諸説ありと言われる代物だから、実はモデルとなった話が存在していて、それは全然違った展開だった、という可能性がない訳ではないのだけど。


 いずれにしても、今の私ができることは、貴族や帝からの求婚を回避して、『月』へ帰るという結末へ導くことだけだ。


 そのためにも、今ここで帝の求婚を受ける訳にはいかない。


「お父様、お母様、ごめんなさい……」


 私は、誰とも結婚する気はないと書き置きして、家を飛び出したのだった。


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