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背徳と呼ばれた令嬢ジュディリスは、聖力と魔力を併せ持つ大聖女の器でした  作者: 麦色 ろっこ


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エピソード52 臨時収入の行方

「では、軍部はラヴォイエール侯爵家に公式文書で処分を言い渡したんですね?」


 わたしはお祖父様に詰め寄り、強い口調で確認した。

 あれほど討伐の指揮を削ぎ、邪魔をしたのだから、父にはちゃんと罰を受けてほしい。


「ああ……。トルエンデ騎士団は私設で少数精鋭とはいえ、公務も引き受ける準国家騎士団だからな」

「公爵閣下は軍の重鎮で指南役でもありますしね」


「ま、まあそうだな。歴とした公務の妨害だと——この私が強く抗議したからこそ、尻の重い軍の重鎮達も腰を上げたようなものだな」


 お祖父様が得意そうに鼻の下を伸ばした。

 

「うちが魔石採取に魔窟に行かなくなるだけで、困る面々は相当数いるしな。一千万エリトの罰金と戒告処分だそうだ」


「そのエリト金貨はもちろん、我がトルエンデ騎士団の活動費に頂けるんですよね?」


 テオドール副団長の目がキラリンと鈍く光る。


「一割は軍部に入ることになる。まあ手間賃のようなものだな」


「ふむ、まあ迅速に動いてくれたことを考慮すると、高いとは言えないでしょう」


 テオドール副団長は趣味も兼ねて魔道具やら怪しげなものの開発研究をしているので、そのための費用を捻出したいと思っているのだ。


「まあ、残りは被害補填やら補償金としてうちに入ってくるわけだが、ジェマのお陰で負傷者の治療費も節約できているから、武具や騎士服を新調して、宿舎の補修に……」


 お祖父様の呟きから予算を計上しているのか、テオドール副団長が紙に数字を書き殴っている。


 明らかに臨時収入を狙っているようだ……。


「それにしても、ラヴォイエールの一団が泥だらけのズタボロな姿で帰路に着く姿は、なかなかの見ものでしたわ」


 その光景を思い出していたらしいシリカ副団長は、美しいけれど冷徹な笑みを浮かべる。


「とくにあの生意気な小娘。ひらひらしたドレスが帰り際には泥に塗れて、涙目になっていましたわ。本当に哀れでした」


「でも兵達は雇い主の侯爵に従っただけだし、ちょっと気の毒ですよね。重症者はいなかったのかしら?」


 心配顔になると、シリカ副団長はわたしの肩に手を置いた。


「優しいのね、あんな失礼な振る舞いをした人達に。でも安心していいわ。負傷者は結構いたけど、命を落とした者はいなかったらしいわよ」


「よかった! そこが気がかりだったんです」


「私がしんがりを務めたのです。奴らでなんとか捌ける程度だけを取りこぼしていたので、安心してもらっていてよかったのに」


 さ、さすがガルム副団長。計算した分の魔獣をわざと取りこぼしたんですね。


「ところで、最近は魔窟に潜ってばかりだよな。魔獣の討伐依頼が減ってる」


 アレン団長が溜息混じりに呟く。


「やっぱりジェマが俺と遠乗りついでに、あちこちの結界の綻びを補強しているのが大きいと思うが……」


 魔獣の侵入が減っているのはいいことよね。アレン団長は活躍の場が減って物足りなさそうだけど。


「最近は辺境派遣騎士団が底力をつけてきていると聞いています。なんでも統率する騎士団長が変わったそうですよ」


 テオドール副団長が仕入れてきた情報によると、このトルエンデ騎士団よりも数で勝っている辺境派遣騎士団を頼る領主が、最近増えてきているらしい。


 辺境派遣騎士団のほうが早く駆けつけられる領地は仕方ないとして、数で見くびられるのはなんだか悔しい。


 少数精鋭の名を轟かせる機会が減るのを無念に感じる団員も、少なからずいるんじゃないかと思う。


「まあ、若い連中で対抗意識を持つ者も増えるかもしれないが、あちらさんはあちらさん、こっちはこっち。いがみ合わずに上手く棲み分けていくのがいいね」


 さすがお祖父様、些末な意地とか沽券なんかに拘らない、大物の余裕を感じさせる発言だわ。


「でもよー、最近ネームド魔獣を全然見かけなくねぇ? 身体がなまっちまうよな」


 アレン団長がボヤく。

 そんなもの、見かけなくてよくない?

 団長の癖に脳筋発言ばかりするのは、やめてほしいわ。


「ああ、辺境派遣騎士団長が最近二体も一人でネームドを倒したらしいですよ」


 テオドールがそう言うや否や、隣でガタンと椅子を蹴る大きな音がする。


「なんだと……? ネームドってどいつだ?」


 見ればお祖父様が引き攣った顔をしている。


「あー、たしか三つ目のワイバーンと、草色のオークでした」


「な、なんだと? 二体とも昔、私が討ちもらした奴らじゃないか!」


 かなりショックを受けた顔をしているお祖父様を見て、誰かの仇うちとかで、ずっと追い求めていた個体なのかしら? と気になる。


 それなら、なんとしても自分の手で討ち取りたかったでしょうね。

 理解できる気がするわ。


「くそっ、まさかやつは……私の討伐記録を更新しようと狙ってるんじゃあるまいな……」


 歯噛みするお祖父様を見て、脱力する。


 なんじゃそりゃあ〜!

 わたしの心配は全くの見当違いだったみたい。


 お祖父様の正体は全然大物じゃなかった!


 それにしても、その新しい凄腕の辺境派遣騎士団長ってどんな人でどんな実力なんだろう?


 好奇心をくすぐられる。

 会ってみたい……。


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