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背徳と呼ばれた令嬢ジュディリスは、聖力と魔力を併せ持つ大聖女の器でした  作者: 麦色 ろっこ


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エピソード45 初出動

「よーし、まずは受け身からだ!」

「受け身?」


「地面に転がされても怪我しない方法だよ。ジェマは癒せるからって雑に倒れてもいいって思ってるだろ?」

「そ、そんなこと……(あるかも……)」


 どしん、と後ろに引き倒され、思い切り尻餅をついた。


「いったぁ~!」

「ほらみろ! 尻餅ついたら腰やっちまうんだ。ちゃんと背中から丸め込む!」


 エレインが軽々とお手本を見せて、くるんっと受け身を取る。

 ……いや、あれ絶対真似できないんですけど!?


「転びそうになったら、体を後方へそらさないようにして、体の重心を前に移すんだ。前方に体を投げ出すイメージだな。転んだら手で地面をしっかりついて体を支える。お尻、腰、背中と順番に地面につけていくみたいに体を転がして衝撃を分散させる」


 む、難しい〜。


「さあ、次はレイピア(短剣)の扱いについてのレクチャーだ」


 ギョエ〜〜! 先に全身の痣を治してからでいいですか〜?


 とまあ——こんな風に毎日毎日……、地道な努力と鍛錬を重ね、いつの間にか、馬の速足にも怯えなくなっていた。

 受け身も、最初ほど派手に尻餅をつくことはなくなった。


 ラヴォイエール邸を一人で出てから数ヶ月。帝都ではその間に色々な出来事があった。


 いちばん大きな事件は皇帝陛下の御側室と第二皇子がお亡くなりになった件だ。


 同じ時にお二人が亡くなられたので、他殺だったのでは、とまことしやかに囁かれているけど、確かなことはわからない。公式発表では病死ということになっているからだ。


 第二皇子は昔からご病弱だということだったけど。 感染するような伝染病の流行もないし、他殺だったとしたら、犯人の捜索などの話も聞こえてこない。


 ——なぜか胸の奥に、妙な引っかかりが残った。


 そして背徳の令嬢と言われたラヴォイエール家の娘がヒルステッド卿との婚約を解消して消息を絶ったという件も、噂好きの人達の間では色んな憶測をよんでいた。


 ふしだらな真似をした令嬢が勘当されたのだとか、身分の低い男と駆け落ちしたとか……。


 どれも事実を知らない者の、勝手な想像だ。

 そう思おうとしても、胸の奥がざわつく。だけど憂鬱になるので今は考えないことにした。


 そして、トルエンデ騎士団の魔獣討伐にわたしを同伴してもらう許可が下りたのが三日前。


 その後、初の騎士団出動の指令がたった今出されたところだ。


「ダナール近郊の森に魔獣複数体の侵入が確認されました。直ちに第一、第三部隊で向かいます」

 テオドール副団長の声だった。


「あそこは帝国精鋭騎士団の管轄じゃないのか?」

「ちっ、なにが精鋭だよ、面倒な魔獣は全部こっちに押し付けやがって」

「ダナールの私兵団はどうしたんだ?」


 アレン団長はそんな騎士団員達の騒めきを一喝して鎮めた。


「てめえら、面倒がるな! これも仕事だろ? ダナールや精鋭騎士団の連中に恩も売れるし、後からでも軍資金をたんまり巻き上げれんだろ?」


 アレン団長はいつもながら、口は悪いけど皆の指揮の上げかたは心得ているな、と感心する。


「それに今回からはジェマ殿がついてきてくれんだぜ? 痛いのを我慢せずに済むんだ。ありがてーだろ?」


 少し気恥ずかしい気はするけれど、期待してもらって嬉しい。胸を張って立つわたしの背筋も伸びた。


「そーだなぁ、ありがたい。ジェマ嬢頼むぜ」

「よろしくな」


「はい、微力ながら頑張ります!」


 エレインに肩を叩かれた。


「今回は残念ながら、あたしは留守番さね。教えたことを忘れずに、気をつけて行っといでよ、ジェマ」


「ありがとう。行ってくる」


 いつもの団服の上衣の下に革製の胸甲を装着した。他の騎士達はさらに籠手、脛当ても装着している。


 重いので、兜の代わりに、厚手の濃紺の布製頭具をつける。帆布を多層に縫い合わせて、中に詰め物をしたものだ。


 最短時間で身支度を済ませ、馬を疾走させてダナールの森に向かう。


 さすがトルエンデ騎士団、歴戦の団員達は馬を全速力で飛ばしていても、統率がとれている。


 先頭の騎士が銅鑼を鳴らしながら馬を走らせているので、進路上の人達は、その音を合図に道の脇に控え、念のためテオドール副団長が風魔術で街道の両脇に空気の壁を作っている。


 トルエンデ騎士団の出動を見守るために、街道脇で見守る人達からは、惜しみない声援が聞こえてきて、胸が熱くなる。


 予想より早く現場に着き、辺りの状況の確認を急ぐ声が聞こえた。


 魔獣の数は、魔力の元を辿ると……少し離れた所に七体感じとれる。


 付近には血の臭いが漂っていて、ダナールの私兵達が数名倒れているようだ。


 近くで馬から降り、我先に彼等に駆け寄ろうとして、アレン団長に叱責される。


「待て! ジェマ、ミュゲルの前に出るなと言っただろ。ミュゲル、安全確認を」


 そうだった、早く助けたくて気が焦っていた。

 魔力は感じとれるから、魔獣がいないのは把握できても、危険がないとは限らない。


 それに個人行動は周囲に迷惑をかける。


 ミュゲルが「了解です。ジェマ様後ろに下がって」と叫んだ。


「ごめんっ、下がる! 確認をお願い」


「負傷者二名、死傷者一名。付近に危険なし」

「了解! 行きます」


 勢い込んでミュゲルのもとに駆けつける。

 息がある二人とも重傷で、一人は足が裂けているし、一人は肺を損傷しているようだ。


「慈愛の光よ、痛みを取り去り、安らぎを与えたまえ」


 祈りを唱えると、両手のひらから白い光が溢れて、片手は裂けた足に、片手は肺に光が膨らんで、静かに収束していく。


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