冒険者とつるはし売り
「つるはし~、つるはしはいらんかね~?」
「つるはし売ってないじゃん」
「つるはしはないけど、冒険に役立つアイテムなら売ってるよ」
「変なお店……じゃあこれとこれください」
「まいどあり」
「つるはし~、つるはしはいらんかね~?」
「おいおい、つるはしを売るなら鉱山だろ……って、売ってねーじゃねえか!?」
「つるはしはないけど、冒険に役立つアイテムなら売ってるよ」
「なんだそりゃ!? ……まあいいや、これとこれを買おう」
「まいどあり」
「つるはし~、つるはしはいらんかね~?」
「つるはしなんてどこで使うの? ……あら? つるはしが置いてないわね……」
「つるはしはないけど、冒険に役立つアイテムなら売ってるよ」
「何かの合言葉なのかしら……それはそうと、なかなか品揃えが良いわね。これとこれをもらえるかしら?」
「まいどあり」
やがてこの地のモンスターは駆逐され、平和が戻った。とある冒険者グループは魔王を討って名をあげ、大金を得たそうな。
しかし冒険者の大半は死んだ。
つるはし売りはそのぶん太った。
そして今日もどこかで声が響き渡る。
「つるはし~、つるはしはいらんかね~?」




