プロローグ
1942年より始まったスターリングラードの戦いでは当初さしたる犠牲も無く奪取できる、ナチスドイツ総統アドルフ・ヒトラーは考えていた。
しかし、最初こそ奇襲に成功したもののそれ以降は大きな戦果もなく、泥沼の戦いが繰り広げられることとなったのである。
「戦況はどうなっている!? なぜいまだにスターリングラードが獲れないのか、その理由を簡潔に述べてみろ!」
東プロイセン、ラステンブルクの狼の巣ではヒトラーが部下を叱責。苛立ったヒトラーはスターリンのように粛清をしかねないような勢いであったがなんとか律していた。
「本国へ命令書を出せ! 『この都市を落とせるだけの大量破壊兵器を持ってこい』とな」
「わ、分かりました」
この命令の後、数日が経過し、ヒトラーの元にはいくつかの品が届けられた。
「こ、これは毒ガス弾です。中にはマスタードガスが詰められて──」
外で部下は恐る恐る届けられた兵器を説明していくが、椅子に座ったヒトラーはしかめっ面で髭を撫でるだけでいい顔はしなかった。
「それを使用すれば向こうも使ってくる。それは使えん。次!」
「これは相手に触れずに爆発させる殺人光線です」
「それはいつぞや我々を騙そうとした詐欺師のものではないか! どこに持ってたこんなガラクタ!」
その後もガラクタばかりが並べられ、一部はヒトラー自ら破壊した。
「お次は……」
「まともな物なんだろうな!? もしまともじゃなければお前達をダッハウに送ってやる! ユダヤ人と同じく列車でな! ヒムラ―の仕事を増やして過労死させてやる!」
「ご安心下さい。これは本当に素晴らしい兵器です」
唾を飛ばして激昂するヒトラーをよそに部下が取り出したのは小さな箱、中には注射器が一本入っていた。
「なんだこれは? 毒ガスなら──」
「これはとある科学者が開発した……そうですな。『サメ化促進剤』とでも名付けましょうか」
「サメ化促進剤?」
部下はソビエト兵の捕虜を連れてくるとその注射を向けた。
「助けて! ドイツ大好き! こ、言葉もしってるよ! なに見てんだくそやろう!」
「……早く打て」
「いやだ! いやだ!」
暴れようとするソビエト兵にその注射を打つと、ほどなくして兵士に異変が生じた。
「ぐ、げ、があああああああああ!!」
身体がブクブクと肥大化し白かった肌が青白いサメのような肌に変化、背中からは背びれが、尻からは尻尾まで生えてきたではないか。
結果、ソビエト兵は足だけ人間のサメに変化した。
「簡単な命令を理解します。小銃程度であれば死なず、加えて死を恐れない」
「お、おお……これは何というか」
どうぞ試してください。部下の言葉にヒトラーはそのサメに命令をしてみる。
「よし! 頭を下げろ! お辞儀をするのだ!」
するとサメはゆっくりと頭を下げた。
「ほ、ほほう。お前私の言うことが分かるのか?」
サメはうん、と頷いた。
「よし! それでは行け! ソ連兵を殺してこい!」
「ゴゲァアアアア!!」
サメは叫ぶと、人間の足で一目散に戦場へと走って行った。
「速度は人間と変わらないようだが、敵の捕虜を戦力に変えられるというなら確かに良いものだ」
「この薬は色々な生き物に仕えます。魚に鳥、昆虫、犬に至るまで」
「素晴らしい兵器だ! 鉄十字勲章を期待していいぞ。これをもっと本国から持ってこさせるんだ。急げ!」
そう言って椅子から立ち上がったヒトラー、だが彼の足元には先ほど壊したガラクタが転がっていて……
「あっ……」
ヒトラーはガラクタに躓き、前のめりに転倒、部下の持っていた注射器に頭をぶつけた。
「大丈夫ですか!? あっ……」
「げ、があああああああああああ!!」
起き上がったヒトラーは苦悶の表情を浮べながらその場をのたうち回る。
ヒトラーの額には先ほど部下が持っていた注射器が突き刺さっていて、中の液体が注入されてしまっていた。
「グゥアアアアアアアアアア!!」
ヒトラーの身体は肥大化し、先ほどのサメとは少し違う姿に変わっていく。顔面はヒトラーそのままに体はサメに、そして肛門にはなぜかロケットブースターのようなものが付いていた。
ヒトラーシャークの誕生である。
「ふはははは! なんだこの肉体は! 素晴らしい! 力が満ちてくる!」
「は、はい……」
「この力があればソ連なぞ恐れるに足らん! 出撃だ!」
何故か人の言葉を喋るヒトラーシャーク、空を見上げると肛門のロケットブースターを起動、空へと舞い上がった。
「ご、ご武運を」
一方その頃、スターリンは……
「デェエエエエエエエエエエエエエエエン!! ふはははは、見事な身体だ! これこそ偉大なる共産主義の思想が形になった理想の身体である!! デェエエエエエエエエエエエエエエエン!!」
スターリンはウォッカを飲んでヒトラーのようなサメに変化していた。
アカシャークの誕生である。




