九話 底を知らない。
テスト終了~~~!!です。
ですが徹夜続きなので今回は短文になります。
すみません・・・
太陽が中天から少し進んだ。
私たちはその暖かな日差しが燦々と降りそそぐ緑が生い茂る庭・・・ではなく土がむき出しのとても広い鍛錬場にきていた。
混沌ここに極まれり!な時間のせいで大分時間を浪費したおかげで、本来広間で行うはずだった魔力測定を、測定器を置いている鍛錬場まで来てやる事になった。
この後に体力・技量を測るのだからいちいち移動せずに済むのはありがたいが・・・
なんとも締まらない理由だ。
「かなり無意味に時間を浪費したけれど、これから私は何をどうすればいいの?」
にこりともせずに、わざと棘のある言葉をシュトラテスに投げかける。
案の定シュトラテスは大して動じた素振を見せずに、どこからとも無く大振りの水晶を三つ宙に浮かせて持ってきた。
どれも、一抱えほどもある大きな水晶だった。
・・・テンプレすぎて何も言えない。
透明と薄氷と橙の内、目の前に持って来られたのは透明な水晶だった。
「じぃじ、これは?」
「属性の水晶といっての、名の通り属性を判別するものでな、姫の場合は確認作業じゃの」
ということらしい。ちなみにじぃじとは言わずもかな、シュトラテスのことである。
「これは水晶に手を乗せるだけじゃて、ものは試し、やってごらん」
言われるがままに手を伸ばす。
未知のものに不安を覚えるもそれは一瞬の事。
手を置いたときにはすでにそんなもの覚えてすらいなかったのだから。
水晶は白の閃光を放ち、次いでオーロラのように七色の光であたりを優しく包んだ。
かと思えば今度は黒のカーテンが光を端から侵食し、音も無く瞬きの間に光を飲み込み水晶の中へと戻っていった。
水晶は何食わぬ顔で先ほどのままの透明度を保って浮いていた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・姫」
「なに?」
「貴女一体何者なんじゃ?」
「それは私が聞きたいよ」
まさかの黒と白に私も若干驚いていた。
色の三原色で黒、光の三原色で白ってできるかな、とは思っていたけれど、まさか実現するなんて。
流石は世界樹の加護といったところか。
「まぁ、属性がたくさんあっても魔力が少なかったらただの器用貧乏だけどな!」
しーん、とした空気を打破する為にロイド《にぃに》がわざと大きな声で、さりげなく無意識に私を馬鹿にした。
・・・いいけどさ、それでも少しは気にするんだ。
なにせ結果が丸解りなのだから。
透明な水晶と入れ替わりに薄氷の水晶が渡される。
「こっちは魔力を測るんだ。水晶に触れて、魔力の流れを水晶に送るんだが、出来るか?」
にぃにが心配そうに聞いてくるが無問題だ。
触れる前に、一応魔力の流れを掴んでおく。
下手すると神力まで出てきそうだ。
今は静謐な湖を思わせる静かな流れから手の平を通して水晶へと流し込む。
はじめは少しずつゆっくりと流していたのだが、以外にまだ入るので一気に流してみた。
澪歌は気付いていないのだが、最初に流した時点で上位色である銀を、しかし徐々に量を増したことで銀から金へ、そして最上色であるプラチナまで上り詰めていた。
そんな状態でさらに魔力を流したらどうなるか。
「えい」
ザザザザザザザザザザサササササササササササササーーーーーーーーーーーーーー・・・・
正解は、崩れ去る。
余りにも膨大な量の魔力に耐え切れずに、粉々に砕けた破片までも驚異的な速度で破壊・粉砕され、最後は風に吹かれるままにどこかへと消えてしまった。
「・・・」
「・・・器用貧乏ではないみたい」
「あぁ・・・そうみたいだな」
他になんて言えばいいか解らなかった。
まさか砂塵になるとは思わなかった。
後悔も反省もしている。ごめん。
「じゃあ次いこうか」
自分から橙の水晶に近寄って触ってみる。幸い、触っただけでは発動しないタイプのようだ。
ほっと安心したのもつかの間、橙の水晶は薄氷の水晶と同じ道を辿った。
「・・・もう何も言うまいよ」
「さいで」
重苦しい沈黙はしばらく続いた。
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「測定は終わったけれど、今日はもう何もないの?」
めでたく規格外の称号をもらって、今は休息のために庭を散策して回っている。
同行者はシエラとフォン姉の二人だけ。
他の方たちは仕事だといって戻ってしまった。
時はすでに夕暮れ時、もう少ししたら晩餐だとお呼びが掛かるだろう。
それまでの短い時間、三人はただ庭を眺めるだけに留まり、一言二言言葉をかわすだけだ。
シエラとフォンには見慣れた光景だが、澪歌にとっては眼にするもの、耳にするもの全てが真新しく映るのだ。
茜に染まる若葉の緑をそっとなでる。
「いいね、こういうの」
「そうですね」
「うん・・・気持ちいい」
大きく息を吸い込めば草花の青い香りが胸をみたす。
「初めてだよ、こんなに清々しい気分を味わったのは」
周りに眼を向ける余裕も、自分を分析する余裕もあった。
だけどこうして“外”に意識を向けたのは始めてかもしれない。
そう小さくこぼした声は風に拾われて空を上る。
誰かに必ず届くわけではない、届かなくても構わない、そんな言の葉。
どこか達観したように語る、規格外の少女に、風は優しくとなりを駆けた。
作「いきなり砂塵か、とんでもないな」
神「まぁわたしの加護だし、何より澪歌だし?」
作「覇王としては最高の力だろうな」
神「城の水もあってるみたいだし☆」
作「これから先はシリアス突入か?」
神「もうしばらくはぬるま湯につかっててもいいんじゃない?」
作「あとからがキツいだろうが」
神「まだ来たばかりなんだから、焦る必要は無いと思うよ☆」
作「ん・・・それもそうか」
神「それに物語は本人次第だからね」
作「じゃあしばらくは様子見だな・・・それでは皆様」
神「また次回!!!」