五話 笑えない ……
リアルでもこっちでも笑えない状況に……
早めに進めたいのに……
誤字・脱字等がありましたら教えて下さい。
※修正
おじぃ→じぃじ
・・・→……
身長差も歩幅もものともしない速度で、なんとか手を引くスミレの眼の男の隣を歩く事が出来た。
為す術もなく連れられて、やっと解放されたのは大分歩いてからだ。
広間ほどの広さは無いが、それでも十分広い部屋だ。広間のように華美でなく、重厚で緻密な装飾が美しい。
澪歌は扉の閉まる音でようやく自分が放心していたと悟った。
「ここは……」
「ここは俺達専用の休憩室だ」
遠慮なく座れ、と肩を押されてストンとソファに落とされる。
ポフンと軽い音がしてその上質な黒くやわらかいソファは難なく澪歌の体躯を受け止めた。
それを確認してようやく皆が席に着きだす。
「……説明、してもらえますか?」
もうこの短時間に色々ありすぎて疲れてしまったせいで声を出すのも億劫だ。
「勿論、お前は何も知らないようだしな」
そう言って男は端から順に名前を呼んでいった。
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「えっと、じゃあ確認しますね?」
全員の紹介をされたのだが、間違えるとかなり失礼なので一人一人確認させてもらう事にした。
「では右端から……魔王のキリ・カナラギさん」
「あったり~!堅苦しいの嫌いだからキリって呼んでよ!」
茶髪の少年・キリが嬉しそうに碧の目を輝かせた。見た目を裏切らないやんちゃな性格らしく、先ほどから全く落ち着きが無い。
いい加減にしないとまた……
「ねぇ、今からボクと遊ばn「落ち着け!!」ふぐぉっ!!!?」
ごっ!と尋常ではない痛そうな鈍い音がキリのつむじに炸裂した。
あー。遅かったか。
実はこれ、この部屋に着いてから通算四回目だったりするからもう慣れた。
流石に最初は驚いたが……自業自得と思う事にした。
ごめんキリ。なんで謝ってるか解らないけどとにかくゴメン。
「それでキリ……に鉄拳制裁を下したのが魔王のロイド・レオノルドさん」
キリ、と呼んだ事に対してキラキラと目を輝かせているキリの髪を、ロイドと名乗った赤髪赤目の、まるで炎のような褐色の青年がぐりぐりとかき混ぜている。
「おうよお嬢、よろしくな!」
……兄貴って思った私は失礼なのだろうか。
あまり深く考えないようにして……次行ってみよーう。
はっ、柄じゃねぇwwwっていうのも柄じゃない。なんとなくだ。
「で、その隣のモノクルを着けていらっしゃるのが魔王のアレクセイ・コルキオネさん」
先ほどの赤い兄貴とは対照的に空色の目と髪をしたいかにもなインテリキャラのアレクセイが軽く会釈する。
翡翠の色をしたモノクルの奥の右目は左目よりも色が薄い。
視力と濃度は比例しているのだろうか。
そして耳が長いから……エルフか?
「そして、魔術師団長のシュトラテスさん」
「なに、そう堅苦しくならんでいい。名前も好きに呼ぶがよかろうに」
うん、好々爺だ。違う事なき好々爺。
白髪のせいでピンクになった赤髪と薄碧の目が妙に愛嬌があるのは何でだろう。
よし、このひとは今度からじぃじと呼ばせていただこう。
「隣の方が夜の騎士団、団長アレシアスさん」
「アレスでかまわんよ」
にこにこと笑いかけてくるのは熊のようなガタイのいいおっちゃんだ。
なにが嬉しいのかさっきからずっと笑ってる。
茶髪の角刈りとか懐かしい、体育教師の畑山を思い出す。
まぁ畑山は尊敬するに値しない教師だったから、連想してしまったアレスに申し訳ない。
「で、宰相のミリアスさん」
「よろしくお願いしますね?」
なんて言えば良いのだろうか、ええと、あれだ。俗に言うダイナマイト・バディのお姉さんが艶然としてそこにいた。
髪の色と同系色の水色に身を包んではいるものの、いかんせん本人が艶やかすぎて、色の持つ清純なイメージが余計に……その、際どい気がする。
不自然にならないように、そっと目を逸らし次の方へ強制移行。
あの身体は同性にも凶器だ。
「えと、隠密……のフォンさん」
「入用の時は、いつでも呼んでくれ」
はい来ました、クールビューティーな格好いいお姉さんタイプ。
夜陰に紛れやすそうなポニーテールの濃緑の髪が武士を思い起こさせる、ポジションは忍者なのに。
「貴女が侍女のシエラさんですよね」
名前を呼んだ途端にぴょこん、とその可愛らしい白緑のツインテールが跳ねた。
「さん付けだなんて恐れ多い!一生懸命仕えさせていただきます!」
「……」
「……あ、あの?」
「いえ、何でもありません……」
内心、そんな大層な人物ではないのだが。とか思ってるのだがあえて言うまい。
この手のひとは言ったら最後、説教されそうだ。
「最後になってしまいましたが……魔王の、クロア・ロウアラーゼンさん……」
スミレ色の冷たい目、濡羽色の艶やかな髪をしたそのひとは、私の隣で満足そうに一つ頷いた。
全員の名前を間違えずにいえた事に対して安堵の息をつく。
それにしても、私はこんなにも記憶力が良かっただろうか?
……あとで取り説読もう。
「ではこれで自己紹介は終わりというこt「まだだ」はい?」
クロアが言葉を遮る。
まだ何か残っていただろうか。
首を傾げる私にクロアは呆れたように息を吐く。
「お前がまだだろう」
「あ」
忘れてた。
「残ってるのはお前だけだ」
うわ、恥ずかしい!私一人でイタイじゃないか!
取り繕うように軽く咳払いしてみる。
……なんだろうか、その背伸びする子供を見るような目は。余計に恥ずかしい。
「えと、私は澪歌、天宮澪歌……です。異世界から来た学生です」
よろしくお願いします、と頭を下げた。が。
「……あれ?」
さらさらとこぼれてきた自身の髪をつまんで目の前に持ってくる。
さて、確認してみよう。
私は生まれも育ちも日本。つまり純粋な日本人。
当然髪も目も黒、生まれてこの方染めたことすらない。
だが今手にしているこれは一体どういうことだろうか。
目に飛び込んできた色は…………虹。
それ自体が発光しているかのように淡く輝く七色の毛先。
光の加減で色は常に変化している……
急に黙りこんだ私を不審に思ってか、皆がそろそろと近づいてくる。
だがそんな事を気にする余裕がある訳がなく……
「……がみ」
「え?」
「かがみ、鏡どこ!?」
ガタンッと勢い良く立ち上がり目を動かして鏡を探す。
「は、え?あっ、こ、こちらです!!」
状況が上手く飲み込めていないが、それでもシエラは主人の願いを叶えようと私の手をとって隣室へ駆け込む。
そこには大きな姿見があって、私とシエラの姿を一部の狂いも無く正確に映していた。
後から、なんだなんだと付いてきた野次馬?たちが映りこむ。
そこに居たのは、顔や体格だけ見れば以前と変わらない私。でも明らかに異質な部分があった。
もともと腰まであった髪は膝裏まで伸び、ただでさえ白かった肌はさらに白くなっていてまるで病人のよう。
そして何より髪だ、白地のさらさらの髪の、毛先数十cmだけが虹色に染まっているのだ。
いや、髪だけでなく瞳もだ。
生気の乏しい虹の目が呆然と私を凝視していた。
「え」
「え?」
「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?」
この日、魔王の耳を狂わさんばかりの悲鳴が城に響いたという。
作「やばいな~最近執筆するスピードが遅い」
神「それより澪歌どうしよう、楽しい事になってるよ☆」
作「絶賛キャラ崩壊中だな。地の文も崩れかけてきた」
神「……それも複線にする?」
作「それはこれからの澪歌次第」
神「わたしがあげた能力もまだおあずけかぁ」
作「まぁ頑張ってみるさ」
神「ところで宿題は」
作「…………」
神「…………」
作&神『ま、また次回~』