三話 神の加護
最近は休みが多いので進むのが早いです!
(やったぁ!)
にしても神ゆるいなぁ・・・
「言い忘れてたけど、わたしはユグドラシルっていうんだ、よろしくね☆」
そう言って神、もといユグドラシルは楽しげに笑った。
ってユグドラシルって世界樹の名前ではなかったか?この神はどう見ても樹には見えない。
金髪碧眼なら天使とか太陽とかの立ち位置しか思いつかない。
・・・あ。
「どうしたの?」
私の名前は天宮、天宮澪歌。
名乗られたら名乗り返す。それが日本の美学。そして文化!
途端に神がずるっと漫画みたいにコケた。
地面も支えもないのに器用な神だ。尊敬はしない。
「・・・きみ、変わってるね」
そんなしみじみと言わないで欲しい。
「まぁいいけど。確かにわたしは正確に言えば神樹だよ☆この姿はわたしが顕現するためにそのへん飛んでた天使かっさらって一時的に身体を貸してもらってるんだ~」
おや?神にあるまじき犯罪の香りがした気がする。
「とりあえず話戻すけど、きみには異世界に召喚されて欲しいんだ」
召喚?私が?どうして?
「実は今、神界できみが居た世界の小説とかアニメとかが流行っててね~」
・・・はぁ?
「わたしもこっそりオーディンのコレクション拝借してみたらはまっちゃってさ~」
・・・。
「なんか触発されてなんかしてみたくなったんだよね☆」
なんだろう、嫌な予感が・・・。
「そしたら丁度トラックにはねられた、質も容姿も申し分ない至上の魂・・・きみを見つけたんだ☆」
はい予感的中!
ちょっと待て、聞きたい事はたくさんあるがとりあえずちょっと待て!
私はそんな下らない理由でここにいるのか?
そもそもオーディン貴様、主神のくせになに二次元愛してるんだよ。他人(他神?)の趣味にとやかくいうつもりは無いが、これでロリ系に走ってたら・・・うん、気持ち悪いな。
・・・ごめん、また話がそれた。
で?漫画に触発された神樹がしたくなった‘なんか’って何だ。
「え~とね、神界でそういうのが流行ってるのと同時に、異世界に人を飛ばして冒険するのを眺めて楽しむなんてこと・・・も・・・してますスミマセン怖いです!」
ほぅ、ということは私は貴様の暇つぶし、ということか。
「貴様って言わないで!妙に迫力あるから!・・・じゃなくて!!」
神が焦ったようにわめくのを冷ややかに見る。
「まぁそういう・・・暇つぶし?みたいな理由もあるのは否定できないけど、これは救済処置でもあるんだよ?」
救済処置?
「そう、例えば飢えて死んだ子供には次の転生で比較的生活水準の高いとこに生まれさせるとか、そういうの。でもそれから先は本人と周囲の環境次第だけどさ」
神は死後は優しいのか。で?なんで私は異世界なんだ?
「・・・実はきみの身体を修復するときに、きみの存在を消しちゃったんだ☆」
・・・それは転生するなら別にどうでもいいことでは?
ん?待てよ?・・・ってことはあの親子はどうなった!?轢かれたのか!?
「そのあたりは大丈夫だよ、あの二人は少し時間に干渉して無事にすんだよ☆あと、存在を消すっていうのは魂がその世界の管轄外になるっていうこと。つまりきみには最初から選択肢はなかったんだ」
くっ、これだから神って存在は!!!
神の理不尽に唇を噛む私に神は心配そうに首をかしげた。可愛ければいいって問題じゃあないぞ。
「未練でもあった?」
・・・いや、なにも無い。
「だからだよ、きみにしたのは」
神の顔から笑みが消えた。
回るのも止めて私と向かい合う。
その目はまっすぐ私を見ていた。
「きみは世界に未練が無い、どれほど転生しても、きみはこの世界を愛せない」
だからだよ、と神は呟いた。
その顔は悲しげに歪んで、その瞳は私の全てを映していた。
『貴女は優しいのね』
ここにきて初めて口を開いた。
その声は何故か生前よりクリアに聞こえた。
「まぁ、きみが気に入ったってのもあるけど」
照れたように神は笑ってくれた。
「きみが喚ばれる世界は、科学ではなく魔法が栄え、人や魔物、精霊なんかが生きているとこだよ☆」
あ、語尾の☆が戻ってきた。
『私、生き残れるかな』
「大丈夫、そのためにわたしがいるんだよ?他の神の加護なんて目じゃないくらいの加護をあげる☆」
そう言って神は手の平から握りこぶしほどの大きさの淡く輝く光球を五つほど創り出した。
『それは?』
「これが、わたしがあげられる限りの最高の加護だよ!」
『いいの?そんな凄いものを私なんかに・・・』
「いいのいいの、気にしないでよ☆」
そう言って神はその光球を・・・
「いっっっけぇぇぇ!!!」
全力で私の身体にブチ込んだ。
超・至近距離、時速140kmはあろうかという剛速球を受けて私の身体は吹っ飛びはしなかったものの、肉が潰れるような嫌な音がした。
『っは・・・!何を!!』
流石に慌てて当たったところを確認しても、怪我どころか一滴の血さえ流れていない。服もそのまま、穴も汚れも無かった。
「加護だよ、安心して。入れ方は痛そうだけどなんの問題もないから☆」
『入れられた側の精神に問題が発生するけど・・・』
あれはとても心臓に悪い・・・死んでるからいいか。
「軽く説明すると、一つ目は“不老不死”で二つ目が“記憶の保護・強化”、三つ目が“あらゆる力の肥大化”で四つ目が“神の武器庫の使用許可”で最後の五つ目が“望むもの”だね☆」
『・・・はい?』
一気にまくし立てられた中にとんでもないものがあった気がするのだが・・・
呆然とする私にはお構いなしに、神は思い出したようにもう1つ光球を創り出して、今度は投げずに直接打ち込んできた。
先ほどとは違うそれなりの質量のこもった衝撃に今度こそ身体が飛んだ。
そして何故か、いつの間にかぽっかりと開いていた横穴に吸い込まれるように落ちていく。
神はそんな私に今日見たなかで一番いい笑顔をむけていた。
「それはきみへの餞別だよ、面倒だから取り説とかきみの私物とか適当にいれといた☆」
『神っ、貴様ぁ!!』
よくも抜け抜けと!
横穴に落ちるなんて初めてだ!
憤慨しながら小さくなっていく神を睨む。
もう見えないくらいの距離なのにその声はしっかりと鼓膜を震わせた。
「今度の世界では、どうか幸せに・・・」
『っ!神!!』
届くかどうかわからない、でもその言葉に応えさせて。
『ありがとう・・・ありがとう!!ユグドラシル!!!』
この声が届いたかどうか解らない。
でも、またすぐに会いそうな気がしたから。
答えはその時に聞こうと思う。
次回ようやく異世界に入ります!
上手く書けるといいな・・・
誤字脱字があれば教えてください!
バツンっ(空間が斬られた音)
作「誰だ!」
神「わたしだよ☆」
作「・・・何故に?」
神「いやぁ、ある程度進んだところでわたしの出番がなくなるであろう事をみこし て・・・」
作「神、意外と策士だな・・・」
神「では次回から後書きは美少女神のわたしとダメ作者でお送りしま~す!!」
作「・・・よろしくお願いします」