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十八話  一瞬の執着。


長らくお待たせしました。


ですがその割には短い上にタイトルには少ししか触れません。


すみません!!




「それでは転移を始める。各々の行く場所の陣まで移動しろ」


未だ熱気冷めやらぬ大広間にクロアの冷たい声が響く。


その後ろの方で既にぐったりとしていた私も指示に従い転移陣まで移動しようとして、止まる。


「えぇと…頑張るね」


階段に差し掛かりかけた足を止め、今まで黙って見送ろうとしていた魔王達を振り返る。


中には無表情のヒト…クロアとかが居たけど、基本皆が笑顔でコクリと頷いてくれた。


一応公の場ではあるので、あまり馴れ馴れしく出来ないのが歯がゆい。


でも、帰ってくれば何時も通りの反応を返してくれるだろうと信じて、私もこれ以上は口にせずにそっと笑うだけに留める。


試験に受かれば、長期の休みか、それこそ国の大事くらいにしか帰っては来れなくなる。


いっそ空間魔法で常に行き来出来るように繋いでしまおうかとも思ったが、それでは意味がない気がした。


一応キリが付いてくるという事になっているが、それでも余り頼らないようにしようと心がけている。


書庫に繋がる門だって、一週間に一度、書庫のみに滞在という制限まで付けたのだ。


甘えてばかりで国の頂点が務まるワケが無い。


だから自分が何処まで出来るのかを把握したいという事もあり、城とは繋げない事にした。


踵を返し、心持早足で一際小さな陣に近づく。


こう言っては何だが、中立国家・レグナード共和国のオルランジェ中立学園都市は最上位の学校だ。


何か一つに突出してるのなら勿論、私みたいにオールラウンドなタイプまで、とにかく才覚のあるものにのみ、その門を潜る事が許される。


だから希望者が多くとも、この陣にたどり着く前に教師らが身の丈に合った学校を薦めるので、毎年のようにここの陣は最少数精鋭らしい。


私が長い階段を降りて陣に近づいていくと、サッと私の歩く道が開けられた。


「あ、わざわざありがとうございます」


まるでモーゼのようだと思いながら人垣を両脇に作りつつ歩く。


ただ私の身長が小さいので、親切な彼らをまるで壁のように感じてしまうのだが。


身長に比例して小さい歩幅でようやく目指していた陣に辿り着く頃には、もう既に全員が各々の陣に収まっていた。


「あ~…遅れてしまってすみません」


申し訳なく思って呟くと、やはりと言うべきか、陣にいた殆どのヒトが目を丸くしていた。


そんなに覇王が謝るのが珍しいのか?


……うん、珍しいな。


敬語で謝るなんて、一国の王なら差し迫った状況じゃないとまずやらないだろうな。


そして殆どと言ったが、私を含めてたった四人しかいない陣の中で、ただ1人ローブを目深に被った青年だけが楽しそうにしていた。


その青年は魔族の中でも特に身長が高いほうなのに、猫背気味なので他のヒトたちより少し大きいくらいにしか見えない。


しかも全身をすっぽりと覆うように濃紺のローブを着ているので、上手く表情が伺えない。


まぁ、私は背が低いから下のアングルから微妙に表情が変化したのを確認できたのだが…かなり無表情に近いな、ちょっとクロアに似てる。


私が着いたのを確認してから、壇上でクロア達魔王議会議員とじぃじ達重鎮が何かしらを呟くのが聞こえた。


ただとても早口だった上に、何人もの多重詠唱で、特にそちらを気にしていなかったから詠唱された言葉が何なのかよく聞き取れなかった。


むぅ、残念だ。


だがそれはどうやら転移陣の発動呪文だったらしく、足元の陣がもの凄い光を放ったかと思うと、私達の身体は光の奔流の中に飲み込まれていた。


驚く暇も、考える間も無く飲まれ、どこか曖昧な空間を通ったかと思えば、いつぞやの穴と似たような光が足元で口を開けて待っていた。


…これはもしかしなくても落ちるパターンか?


しかもよくよく見てみると、既に誰かが到着しているらしく、そのヒトの位置は丁度私が落下する地点と同じ場所だ。


……ヤバイっぽいなコレ。


それに気付いた瞬間、私は外に放りだされた。


注意する間も在ってこそ、私はそのままそのヒト…先ほどのローブの青年の腕の中にすっぽりと収まっていた。


「ぅわっととと……って…覇王…様?」


途中で気付いてくれた青年のおかげで彼の頭を踏みつけずに済んだが、彼は案外強い力で私の身体を受け止めてくれた。


「っは~吃驚した~…あ、助けてくれてありがとうございます。おかげで踏まずに済みました」


「踏むって……とりあえず……二人とも無事で良かった…です」


「っそれ以前にあなた、早く覇王様を降ろしなさい!!」


どこか間違ったと思っていたら、そうか、私まだこのヒトの腕の中だった。


先ほど一緒にいた四人の内の一人である少女の叫び声に、青年が焦ったように私を地面に降ろしてくれる。


しかし焦ってたにしては丁寧な扱いにちょっと感心した。


白い靴の先が地面に着くと、確かな足場の存在に安心する。


今更だが、私の服装はバルコニーでのお披露目の後、直ぐに着替えた。

入学試験の時にまでドレスアップする必要性が感じられなかったからだ。


それに一般の生徒と同じ立場と宣言したのだから、まずは形から入ってみた。


先ほどの黒とは対照的に、動くたびに裾がフンワリと広がる白のワンピースの上に、薄氷色の薄手の羽衣を羽織っている。


羽衣といっても、本物を着るわけにはいかないので、羽衣を模した物を羽織っていると言った方が正しいか。


それでも結構いい生地を使っているのは、シエラがこれだけは絶対にと譲らなかったからだ。


だけど…これもこれで場違いじゃないかな?


思っても口にしないのが大人のルールらしい。


よし、大人の階段(笑)を一段登ったぞ。不本意だけど。


ざっと周囲を見回すと、そこには先ほどのメンバーと、白地に金糸の刺繍がされたローブを着込んだ壮年の男性がいた。


その刺繍が事前に見せてもらった学園都市の校章と一致した事から、そのヒトが学園関係者だと解る。


「さてと…どうやらまた私が最後だったみたいですね、すみません」


「い、いいえ、気にしてませんし…遅刻はしていませんから大丈夫ですわ」


お嬢様口調でそう戸惑ったように言うのは、私を降ろしてくれるように叫んだ子だった。


ゆるく波打つ赤の髪に、同色の瞳を持った炎のような、それでいてどこか幼い感じがする子だ。


「それで…その、覇王様?敬語は…ちょっと不味いと思うのですが…一応他国ですし…」


「あぁ…それもそうですね。皆さんは、私が敬語ではなくとも不快ではありませんか?」


「めめめめめッ滅相もございません!むしろ助かります!」


そこまで言わなくても…と思うのだが、私以外の全員が、あの学園関係者でさえ頷いているのを見てしまっては変えないわけにはいかないか。


だが、私だけというのも釈然としない。


「解りまし…解った、解ったから皆も敬語は無しで行こうか」


という事で皆にも強制させてもらう事にしました★


「……はい?」


「敬語禁止で」


「いえ、それは…その、ねぇ?」


「まぁ、それは…なぁ?」


安心したのも束の間、思わぬ反撃に戸惑ったようにどうしたら良いのかを模索する彼らに、私はただ微笑を浮かべて待っていた。


「あの、覇王s「澪歌」…覇お「澪歌」……h「澪歌だって言ってるよね?」ハイ!レイカ様!」


言っても聞かない子には『デビルスマイル』をかましますから。


お陰様で皆の顔が引き攣ってます。


「様はいらないんだけど…まぁ此処から慣れれば良いか。で、何かな?」


「敬語禁止って…本当にいいんですか?不敬罪になったりとかは…」


……ここにも一応不敬罪ってあったんだ。

城の皆がフレンドリーだったから無いものだと思ってた。


「それは絶対に無いね。何せ私が言った事だもの、それで不敬罪だなんだと騒ぐような馬鹿になった覚えはこれっぽっちも無いし……それに、友達とは仲良くしたいしさ」


言って、ハッとした。


友達なんて…何年ぶりに口にしただろうか。


今まで『家族』に執着してきた私が、『友達』を…『他人』を求めた、だって?


自分の思考に疑問が浮かび、浮かんだ疑問が思考を乱す。


クロア達は、どちらかと言えば『家族』に分類される。


彼らにしても、仕えるべき君主としては勿論だが、接し方は妹か娘のそれだ。


向こうの世界で家族を失くし、こちらの世界で希望を見た。


だが、向こうの世界で、私が友達と呼んでいた者がいただろうか?


答えは、否。


ならばどうして、求めもしなかった『友達』を得ようとしたのだろう。


擬似的とはいえ『家族』が出来て……欲を持ったか?


「…とりあえず、話は合格してからになりそうだね。無駄に長引かせてごめん…会場は何処?」


埒の明かない考察を一旦放棄し、目先の事に集中する事にした。


しかし自分でも無理があると思った話題の変え方に、皆が首を捻る。


しかしそうでもしないと、このまま戻れない所まで行きそうだったのだ。


現実逃避と、この言葉も飽きる程自分に言い聞かせてきたが……逃げても、現実は変わらない。


そうだと知って逃げてるから、余計に逃げたくなる。


私の呼びかけに反応した職員が先導するように明るい廊下を進んでいく。


どうやら学園内に魔方陣があったらしく、私達はそのまま外へ向かうように先導された。


見える景色はずっと壁・床・背中のいずれかしかないが、そんなこと言っても仕方ない。


どれほど歩いただろうか、ようやく職員の足が止まり、道の先に光が見えると、後ろからあからさまにホッとしたようなため息が聞こえた。


その気持ちは解る。


だって…ここの廊下、馬鹿みたいに長いんだ。


普段は風の魔法とかで速度を上げてるらしいけど、試験直前に無駄に魔力を消費させないように歩くそうだ。


だったら魔方陣を置けと言いたいが、土地によって置ける個数が違うのだそうだ。


帝国に四つ、共和国に六つ、学園都市内にはそのうちの三つがある。


都市の規模が大きいのもあるが、それでも一つの都市に三つの魔方陣というのは多いらしい。


ただ、こっちの王国が魔法に関しては規格外なだけだと言われた。


まぁ、流石に城内だけで三つ、国全体で見たら十一もの魔方陣が存在するというのは規格外と認めざるを得ないか。


しかしだ、いくら魔力を消費しないとはいえ、体力は確実に削られてるはずだ。

しかもこんな長い廊下だ。終わりが見えれば試験会場、一気に緊張して精神力も持っていかれるだろう。


まさか此処からすでにふるいに掛けていたりして……


…止めよう、怖くなってきた。


「此処をでれば、直ぐに試験会場です。各々の国家全体で試験を受ける事になります」


プレッシャーかけてきたよこのオッサン。


「国の威信の為にも、自分の為にも頑張って下さい」


ダメだこれ予感的中だ。

すでに篩にかけてたコイツ。


お陰で後ろから緊張してますな雰囲気が出てるよ。


「なお、帝国・共和国・王国の順番での試験です。皆さんは最後になりますが、受験生は全員、試験の間此処から出る事は出来ません」


さらに追い討ちを掛けてきました。

プロだコイツ。

きっと毎年のようにここで何人かを落としてきたんだろうな。


「それでも、よろしいですか?」


言外に自信のない奴は帰れと言ってるよね?


ん?喧嘩売ってるの?買うよ?


流石に皆が可愛そうになってきたので、私は職員に向かって作り物めいた笑みを浮かべた。


「良いに決まってる。王国の民はそこまで脆弱ではない…そう信じてるからね」


心配無用、それだけ伝わればいいと思った言葉が職員には以外だったらしく、その眼が期待するように歪められた。


「それでは、どうぞこちらへ…」


キィ…と小さな音を立てて開かれる扉の向こうに、私は振り返らずに出て行く。


振り返らずとも、皆は後ろにいると信じている。


だから、振り返らない。


そして、思う。


……今更だけど、皆の名前を聞きそびれた。


これも…合格するまで保留で、いい…よね?







ざわめきが支配する雑踏の中に、ただ一輪の虹の花が咲いた瞬間だった。



作「あ~もう!今回はたったこんだけだよ!どうしよう!」


神「勉強サボればいいじゃんか☆」


作「出来るか!」


神「勉強も大事だけどさ?こっちも大切にしなよね」


作「うん…解ってる」


神「次回はちゃんとするね?」


作「はい…約束します」


神「言質とったからね?」


作「イエスサー!」


神「はぁ…コイツ大丈夫かな?」


作「多分。キツイけど、やる」


神「それでは皆さん、言質とったから次回はマシになってるので」


作「次回もよろしくお願いします」


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