十七話 お披露目。
やっと、やっとここに来る事が出来ました!!
ようやく一山越えました…
でもこれからは訂正ノートに体育祭、その上その一週間後か一月後かは忘れましたが文化祭があります。
団旗描くの面倒だな……正直部活の作品だけで手一杯なのに更に仕事を追加してこようとするクラスの方々……
皆私をいじめて楽しいか!とか聴きたくなります。
それでは、少し短いかもしれませんが、十七話です。
どうぞ!
何か大切な事があると解っている朝は、少しだけ胸が落ち着かなくなる気がする。
髪は撥ねてないかとか、スカートがよれていないかとか、糸くずがついていないかとか、とにかく日常では簡単にしか確認しない事が無性に気になる。
ここでもうお気付きの人が居るかもしれないが……
もそもそとベッドを這い出して、そのままテラスへと続く大きな窓を押し開く。
開け放たれた窓から吹く風がサラサラと私の髪を撫でる。
雲一つ無い青空には雀に似た鳥が彼方を目指して飛んでいった。
あぁ、今日は絶好の……試験日和だ。
********************
所変わって、今私は召喚された大広間…につながる扉の前に来ている。
というか、私以外にも魔王議会議員に城の重鎮達は勿論、何故か全く関係なさそうな、大人と子供の中間のような雰囲気の大所帯までもが大広間に勢ぞろいしていた。
因みに大広間とは謁見の間とは違い、もっと大勢の人数を収容できるホールの事だ。
そして魔王議会議員というのは、魔王の名を冠する者、つまりクロア・キリ・ロイド・アレクセイの事であり、この国の政治の中心とも言うべき議会を運営している者たちの事。
ザワザワと人が集まった時特有の騒がしさが、扉一枚を隔てた向こう側から聞こえてくる。
「緊張なさっておいでですか?」
小さな覗き窓から盗み見た光景に眼を奪われていると、隣に控えていたシエラがクスクスと笑みをこぼした。
「うん…だって知らないヒトがいっぱい居るんだよ?どうして?」
常日頃からこれくらいの背格好のヒトが出入りをしているのなら、暇さえあれば城内を歩き回っていた私が気付かないはずがない。
半泣きになりながら出て行くのを躊躇い、その人混みから眼を逸らして高い位置にいるクロア達を見る。
やっぱり知ってるヒトが居るって安心するな~。
そこ、現実逃避って言うな。
「彼らはレイカ様と同じで、本日の試験を受けに行かれる者たちです」
…………はい?
「あの、シエラさん?もしかしなくても…私は向こう側で何かしないといけないのかな?」
「はい、レイカ様には彼らの前、そしてバルコニーでちょっとした演説と自己紹介としていただきます」
恐る恐ると、しかし確信すら持って問いかけると、シエラは今日一番の笑顔で言い切りやがりました。
あぁ、だからこんな服着せられてるんだね。納得した。
今、私の身を包んでいるのは漆黒のマーメイドドレスで、ちょっとしたアクセントに深い蒼の花が髪に一輪添えられていた。
朝起きて窓を開けて、それからいきなり興奮した様子で入ってきたシエラがあーでもないこーでもないと悩んだ末のチョイスだ。
様々なドレスを着せられ脱がされ、最終的には髪と瞳を引き立たせる為にシンプルだが貧相ではない仕上がりになった。
もの凄い手際の良さで目を白黒させている内に終わったのが幸いと言うべきか。
いい仕事をしたとでも言いた気なシエラの可愛い顔が、今は無性に腹立たしい。
私は人混みが嫌いで、何より人前に立つのが嫌いだというのに!
「無理!私人前になんて立てないよ!というか今初めて聞いたよそんな事!」
「言ってませんものこんな事」
くっ、この侍女は本当にいい性格してるな!
「これは試験に臨む皆さんの士気を高め、尚且つ放っておいたら友達を作らなさそうなレイカ様の為に企画されたものです。それにいきなり向こうで覇王様が試験に臨むとなって、混乱しない眷属がいないわけがありません」
いやきっと居るって。何事にも動じない岩のようなヒトが居るはずだって。
「それに皆さん、『新しい覇王様の初お披露目』の栄誉を賜ると喜んでいるのですよ?自国の民を喜ばせるのが王の務め。どうかここはグッと耐えて!」
いやだから顔がばれて困るのは私達だって。人間に狙われたらどうするの?
というか耐えてと言ってる時点でアウトだよね?
シエラ絶対解ってるよね、人前に立つ事の煩わしさを理解して言ってるよね。
「それにこんなに素敵な覇王様を全世界に自慢したいじゃないですか。その魅力に惹かれない輩がいるでしょうか、いやいない!」
まさかの反語をありがとう。そして何て事を言うんだこのヒトは。
そうこうしてる間に扉の向こう側から聞こえる声がいつの間にか消えていた。
「おや、向こうの準備が整ったようですね」
「ねぇソレなんて死刑宣告?」
「レイカ様、私はいつでも貴女の味方ですから」
「それは失敗した時のフォローの前フリかな?」
「それでは逝ってらっしゃいませ」
「字が違…『覇王様、御入場』…チッ」
思わず舌打ちしてしまった私にシエラは上機嫌さを隠そうともしない。
このままシエラと舌戦を繰り返して逃れたかったが、名前を呼ばれてしまっては諦めるしかない。
逃げ出そうと模索する思考を振り払い、深呼吸する。
気を引き締めた私の意志を萎ませないためか、その瞬間に目の前の扉がゆっくりと開かれた。
「行ってらっしゃいませ」
静かに頭を垂れたシエラにひっそりと笑みを返し、私は扉の奥へと足を踏み出した。
side out
??? side
「覇王様、御入場」
眼下にひしめくように集まった僕らを見下ろし、ラーゼン公はそう宣言なさった。
今日は待ちに待った試験の日、これから望む未来へ羽ばたけるか、そうでないかの分かれ道の日だ。
そんな中で、僕らは又とない幸運の女神…覇王様のご登場を今か今かと待っていた。
すでに国中に覇王様召喚のお触れと共に大まかな容姿の説明があったのだが、それがかえって国民の興味をひいたのは当然だと思う。
『虹色の髪と瞳、華奢な身体に麗しい顔。端的に表すなら、まさに女神』
ここ何日か、子供から老人までもが口を開けばそう言って謁見できるその日を待ち侘びていた。
実はこのお披露目の後、国民達はバルコニーに出てくる予定の覇王様を見る事となる。
遠方の村や町には映像が送り届けられるという素晴らしいサービス付きだ。
今日は受験だけでなく、全魔王国国民が覇王様のお姿を拝見できる特別な日だった。
その特等席…ではないが、かなり近くで拝見できるのが僕らというわけだ。
と、ここまでの台詞には一秒も掛かっていない。
僕ほどの根暗になるとこんな事は朝飯前さ!
……言ってて空しくなってきた。
まぁそんな僕の事はさておき、ついに覇王様のご入場だ。
僕は目深に被ったフードをほんの少しだけ上げて白の大扉を見上げる。
ラーゼン公の宣言から少しして、その扉は開かれた。
世界の起こりが彫られた国家遺産である白の扉『神創記』、その奥の闇から静かに現れた少女に、場の空気が一気に張り詰める。
白の中から生まれた黒。
漆黒のマーメイドドレスは身体の曲線を強調しながらも決して淫靡ではなく、楚々としていて。
歩くたびにサラサラと揺れる虹の髪は、添えられた青の花と相まって幻想的な光を放ち。
そして奇跡のような面で煌めく瞳もまた虹色。
黒の枠に嵌められた少女は、それこそ侵しがたい神聖さでもってして周囲を威圧した。
僕らの目が釘付けになる。
その一挙一投足を追ってしまう。
僕の聴力でもその足音は拾えない。
ただそのピンク色の唇からこぼれる静かな息遣いにだけ耳を傾けていた。
僕の耳は様々な音を拾う。
眠っている時でさえ、この耳は音を拾い続け、夢に写す。
夢でさえ現実のように重く圧し掛かる事に疲れ、気付けば僕はヒトとの関わりを希薄にしていた。
これ以上音など要らない。
そう思い、ヒトから遠ざかり…そして僕は一人になった。
それでも音が消えるかどうかと言えば、否だった。
この音は一生僕に付き纏って、消える事は無いと思っていたのに……
今、この耳は少女の呼吸だけを拾っている。
これを奇跡と言わずして何とする?
これを救いと言わずして何と呼ぶ?
この短時間に味わった衝撃に身を震わせながら、僕の耳は、いつの間にか迫り出した壇上に立っていた少女の声を待ち侘びていた。
そして、その小さな唇が開かれ…
「おはようございます皆さん、私の名前は澪歌・天宮。これから宜しくお願いしますね?」
鈴のような声で、そんな事を言いましたとさ。
……落ち着け僕、落ち着くんだ。
覇王様ともあろう方が、まさかの敬語、まさかの挨拶…いや好感は持てるけどね。
最後の疑問系も…うん、可愛いし…
ああでも異世界から召喚されたからそういうのを良く理解していないだけかも知れない。
きっとそうだよ!うん!
「そして、最初に言っておきますが、私は国家間又は余程大切な国事行為でない限りはこの態度を崩しません」
ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
良いの?それで良いの!?魔王国家それで良いの!?
いや確かに国の威信は守れるさ!他国家に対してもソレじゃないだけマシだけど!
一般市民と覇王って立ち位置にどれ程の差があると思ってらっしゃるんでしょうか?
幾らアットホームな国家でもそれはちょっとどうなんだろう?
「皆さんご存知だとは思いますが、今日は私も試験に臨みます。言わば私達は同志でありライバル…なので、私は今この時から皆さんと同じスタートラインに立っている事になります。差はありません」
言い切ったよこの方は。
「こう言ってはアレですが…私が受かったら、皆さんと共に学ぶ事になります。学校を共にしない方も、学んでいるという観点において、私と同列にあります。なので皆さん、何も知らない私に力を貸して下さい。この世界で、私に意味を見出してくれるのは、皆さんの他に有りません」
表情だけ見れば自然体。
でも、よく聞いていればその声が少しだけ震えているのが解る。
その心音が、爆走しているのが解る。
「綺麗なモノも、そうでないモノも、全てを知った時に、私は本当の意味で覇王になれる気がするのです。だから、皆さん、これから宜しくお願いします!」
覇王様が頭を下げる。
一瞬、大広間がシン…と静まり、そして一気に沸いた。
口々に覇王様を讃える言葉を叫んでいる。
そして僕は…ただ、安心した。
……あぁ、そうか…そういう事か。
この方は、ヒトと関わるのが怖いのか…そう、安心した。
超越した美しさを持つこの方にも、こんなに自然な感情があることに安心した。
僕の顔には、微笑が浮かんでいる事だろう。
一体何時振りだったか、固まったと思っていた顔の筋肉は意外とスムーズに動いてくれた。
そして、壇上に立つ少女は僕を見て、意外そうに目を丸くした。
…僕を、見て?
だが直ぐにその目を自然な様子で逸らすと、僕に微笑をもたらした少女は思いがけない喝采にうろたえた様に、そして少し困ったように微笑んだ。
ズキューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
……なに?この胸の動悸は。
この方は天然なのか?さっきまでの神聖さから一転、そのナチュラルテイストな微笑みは衝撃のギャップなんですが。
その不可思議な擬音が聞こえたのか、恐る恐る魔王様たちを振り返る覇王様。
またか…みたいな目を向けられて更にうろたえてる。
なにあれかわいい。
まるで小動物のような動きに保護欲を掻き立てられる。
そして最後に一言。
「えっと…と、とりあえず、外での自己紹介が終わったら、すぐに各試験会場への転移を行いたいと思います、それでは失礼します!」
ぺこりと勢い良く頭を下げて、心持早足で魔王様達の所へ向かい、その影に隠れるようにしてバルコニーへと出て行ってしまった。
やはりと言うべきか、外でも同じように歓声が沸きあがる。
僕は耳を澄ませて、彼女の声に集中する。
すると不思議な事に、僕の耳は彼女の声以外の音を拾えなくなる。
聴いていて心地いい、不思議な声音。
まるで子守唄のように僕に安心をもたらす。
幸運にも、僕と彼女の志望校は同じ場所。
ならこれからも会う機会があるかもしれない。
そう思うと、口元の笑みが更に深くなるのを自覚する。
僕の乏しい語彙ではこれが精一杯だけど、綺麗で不思議で、そして特別な女の子。
それが新しい覇王様だった。
神「おつかれ~そしてお久しぶりだね☆」
作「ホント、長く留守にしてしまったようで」
神「ちょうど一月だっけ?にしても今回は頑張りはしたみたいだね」
作「言い方に突っ掛かりがあるけどまぁ良いや」
神「今回は澪歌のお披露目か~で、この小僧は誰?」
作「言わずと知れた新キャラですが?」
神「根暗を側に置こうとするなよな★」
作「根暗差別だ私に謝れ。明るいのは外面オンリーと言われた私に謝れ」
神「どうでもいい。にしても今回も澪歌かわいいなぁ」
作「天然最強説は本当だったな…むぅ、寝不足だ」
神「だね☆じゃあ少しは労わってやるよ残念 English、早く寝ろ」
作「微塵も労わってねぇよ真っ黒星神」
神「それでは皆様」
作「また次回~」