十三話 初めての城下町 ~上~
久しぶりの更新です。
やっとテストが終わりました!!
本当ならきちんとお知らせするべきだったのですが・・・
本当にスミマセンでした!
人の歩く音がする。
親子の他愛のない会話が聞こえる。
公園の噴水が水音を響かせている。
どこかの店の扉が開いた。
陽気な歌声が酒場から流れてくる。
ここはグランフィーナ王国の首都・フォルトス。城下街だ。
「ということで街に来ました」
「そうか」
私たちがいるのは城を出てしばらく下った所にある街への入り口、その手前。
そこには大きくて豪奢な漆黒の門と、かなり端っこの方に隠れるように小さな門があった。
私たち、というのは私と魔王・クロアのことだ。
なぜ二人してこんなところにいるのかというと、それは学園絡みの話になる。
学園に行くにしても、試験は問題無いとして色々と必要な物が出てくる。
筆記用具は勿論、制服以外の服も必需品だし女の子なら細々したものまで必要だ。
別に上記の品物は城で上等な物を仕入れる事など容易いのだが、試しにと出された物が趣味に合わなかった。
誰がサーモンピンクのヒラヒラでフリフリしたワンピースなんか着るか。
かといってフォンの提示したドレスは大人らしすぎて見てるこっちが恥ずかしい。
ミリアスのは論外。というか意外だった。
妖艶な宰相が差し出してきたのは・・・エプロンだった。
至って普通の、何の変哲も無い真っ白なエプロン。
学園は寮生活で、食事は食堂で摂るらしい。
一応部屋にはキッチンが備え付けられているらしいので、使わない事はない。
そんな家庭的な思考を持っていたらしいミリアスに礼を言って受け取るが、次の一言で凍りついた。
「それ、裸の上に着用してね♪」
とんでもない爆弾が投下されました。
国の知能たる宰相にあるまじき発言に賛同できるはずもなく速攻で拒否する。
どんな羞恥プレイですか。
どうやら城内にまともな思考の持ち主はいないらしい・・・
そう悲観していた私だが、とある人物を思い出した瞬間にその考えを否定した。
居るではないか、この城にもまともな思考の持ち主が!
そうして何故か言い争いをしている女性陣を放置して、私はその人物の元まで行った。
重厚な樫の扉の執務室で、私の変わりに政務をこなしてくれているそのヒト、クロアは入ってきた私を見るなり掛けてあった外套を手にしてこういった。
「街に行こうか」
と。
その時の事を振り返っての“ということで”発言だった。
「事情は察している。どうせ服のことで揉めたのだろう」
「はい・・・本当に助かりました」
あのまま部屋にいたら、きっと私は再起不能になっていただろう。
そう思うと・・・体が震えてくる。
ぶんぶんと頭を振ってそんな考えを打ち消す。
今は常識人のクロアがいるのだ、そんな事になる心配は一切ない。
「とりあえず、この目立つ髪をどうにかしないといけませんね」
そういって私は自身の髪を一つまみ掴んだ。
すでに国中に私の事は伝わっている。
という事は諸外国にもその情報は伝わっているという事だ。
早速私を亡き者にしようと帝国が動いていないとも限らない。
故に私は身内とも呼べる国民の前でも私事の場合、変装をしなければならない。
・・・それに国の頂点がこんなに簡単に城下をふらつくのも問題だろうし。
その考えに、クロアは一瞬難しい顔をしたが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻ると一つ頷く。
「そうだな、俺も城下では変装している。といっても髪と服を変えるだけだが」
パチンとクロアの指が鳴る。
瞬きの間にクロアは弱い光に包まれ、そしてそれが失せた時にはすでにその容姿は変わっていた。
濡羽色の髪は瞳よりも濃いスミレ色、その長身を包んでいた上質な漆黒の服は質素な、しかし悪くは無い布地の黒衣に変わっていた。
一見すれば、街でも比較的裕福な家の出だと思われはしても魔王だとは気付かないだろう。
しかしそれでも滲み出る王者の風格はなかなか消せるものではないらしく、そんな所が少し可愛く思えた。
「わぁ、凄いですね!」
「お前もするといい。特定の属性を意識して固定しろ」
「解りました」
何にしようか、とりあえずクロアと居ても怪しまれないように・・・兄妹設定で行こうか。
集中して紫色の属性、雷を前面に持ってくる。
そこに固定するように幻想書架で想像・設定し、眼を開ける。
そうして髪をつまんで見ると、クロアと全く同じ濃度の紫髪に変化していた。
ちなみに服は城に居るときから質素なものを心がけていたので、そのまま街に繰り出す事が出来る。
クロアとは真逆の真っ白のワンピースだ。
「出来た!出来ましたよクロアさん!クロアさんとお揃いです!」
純粋に出来た事への喜びを笑顔として表へ出す。
その眼もいつの間にか綺麗なスミレに染まっている。
自分で言うのも何だが、こういう所が幼く見えるのだろうか?
そんな様子にクロアは眼を細めるとその大きな手を伸ばして私の手を掴んだ。
「迷子にならないように。欲しいものがあれば言え、好きなものを買ってやる」
ゆっくりと私の歩幅に合わせて歩き出す。
そんな細かい気遣いに、私はこっそりと笑みをこぼした。
そして冒頭に戻る訳だが。
「ふわぁ・・・」
番兵のおじいさんに挨拶をして、意気揚々と街に入ってすぐに私は立ち止まった。
街には溢れかえるヒトヒトヒト、ヒトの波。
活気が溢れ、街そのものが輝いて見えるほど、住人たちは活気付いていた。
「凄い・・・」
ヒトの波に圧倒され、眼を輝かせていると、クロアの手に込められた力がさらに強くなった。
迷子になると思っているのだろう。
「まずは服を買いに行く。小間物はそれからだ」
「はい!」
「はぐれるなよ」
念を押すように呟かれる一言にくすりと笑う。
「手、絶対に離しませんから、大丈夫です」
「そうか・・・そうだな。俺も、絶対に離さない」
傍から見たら仲の良い兄妹に見える二人は人ごみの中に混じっていく。
すると案の定と言うべきか、其処此処でクロアに向けられているであろう言葉を耳にした。
「ねぇ、あのヒト・・・」「かっこいい・・・」「あと二十歳若ければ!」
花屋の店先、喫茶店の中、井戸端会議の輪の中からと、様々な女性がクロアに思慕の眼差しを向けていた。
この調子なわけだから、隣で手を繋ぐ私も当然視界に入るわけでして。
思慕から一転、どんな罵詈雑言が聞けるかと少しだけ構える。
「何あのちっこいの!可愛いんだけど!」「兄妹・・・いける、いけるわ」「おもちかえ(自重)」
・・・あれ?予想外な上に寒気がするよ?
なんだか命の危機すら感じる。
強烈な視線が全身に突き刺さる。
なんだかもうこれは人に穴を開けられるレベルの視線だ。
流石は魔族、その瞳すら凶器に変わるんだね。魔眼がありますか、すみません。
現実逃避をしていると、急に立ち止まったクロアの背中にぶつかった。
「~~~~っ!」
何でか舌噛んだ!しかも先端の方!
余りの痛さに思わずうめき声が口の端からこぼれる。
悶絶する私に向かってさらに視線が集まるが、そんな事など眼中に無い。
あるのは真っ白になった視界だけだ!
「大丈夫か?」
あくまで冷静なクロアにコクコクと頷く。
明らかに大丈夫ではないのだが、こんな下らない事態を起こした私が悪い。
「・・・少し診せてみろ」
振り返ってしゃがんでくるクロアに慌てて首を振る。
「大丈夫!大丈夫でしゅから!」
噛んだせいで言葉がおかしい。そんな様子に呆れたようにため息を吐かれる。
「診せろ・・・ほら」
口元に伸びてきた手に、慌てて口を開く。
赤い舌先に少しだけ血が滲んでいた。
「怪我してるぞ」
「大丈夫ですって、すぐに治りますから」
そう、本当にこの程度の傷なら速攻で治る。
ただ、痛覚はしばらく残るから派手に痛がっているだけで、血も拭ってしまえばそこに傷なんて跡形も無くなっているだろう。
どうにか痛みをやり過ごして笑いかけるが、何か言いた気な眼をしていたがあえてスルーした。
何故ぶつかったかと言うと、どうやら目的地に着いたらしかった。
「ここでいいか?」
目の前のその店はどこか高級感漂う服飾店だった。
・・・入り辛いと思うのは元・一般市民だったせいなのか。
「はい、でも、良いんですか?高そうですよ?」
「お前は俺の職業を忘れたのか?」
「いえ・・・愚問でしたね」
忘れていた訳ではないけれど、やはり人のお金で買い物するのは気が引ける。
そんな心理などどうでも良いと言うかのように、クロアはさっさと店内に入っていく。
そこまで行くともう止められない。
ほんの少し強引な手際に、クロアの意外な一面を見た気がした。
********************
「こんなに買っていただいて・・・すみません」
昼下がりの公園に子供たちの笑い声が響く。
私たちは広い芝生のあるそこのベンチに座って休憩している。
私の膝の上には小さな紙袋が1つと、手にサンドイッチを1つ持っている。
クロアは大きな紙袋を3つを隣において私を眺めていた。
正直、じっと見られていると非常に食べづらいのだが、クロアが何を言っても聞き入れてくれないのでもう諦めるように心がけるしかない。
「気にするな。あいつらに任せていたら碌なことにならない・・・もっと買っても良かったのだが」
「そんな!そこまでして頂く訳には・・・」
首をブンブンと振る。
長い髪が顔にあたって地味に痛い。
「・・・解って、いないのか」
「はい?」
「いや、何でもない」
「?」
解らない。
何が言いたかったのかさっぱりだ。
解っていないらしいが解らない。
・・・気にしないでおこう。
だって本当に解らないし☆
・・・馬鹿がうつったか?
「ぅう・・・解りました、気にしません!」
笑顔で宣言してみるが、クロアの表情が少し曇ってしまった。
「いや・・・まぁ・・・いいか」
珍しく煮え切らない返事に首を傾げるが、そこはそれ、持ち前の鈍感でスルーする。
「さて、服も買いましたし戻りましょうか」
サンドイッチをすべて咀嚼し飲み込む。
幸いな事に私好みの服は簡単に見つかった。
おかげで予定よりも大分早くに買い物を終える事ができた。
だから城に戻ろうかと腰を浮かした私の手を、何故かクロアが引きとめるように掴んだ。
「クロア?」
「少し、俺の用事に付き合って欲しい」
「クロアの用事って?」
「・・・お前が居なければ意味の無い用事だ」
「???」
妙にぼかした答えに疑問符が浮かぶ。
「そこまで煩わせる事ではない。行くぞ」
「え?ちょっ!」
半ば強引に引きずられ公園を出る。
あの落ち着いたイメージのクロアが、こんな強行突破な行動を取るとは思わなかったので反応が遅くなる。
結果、私は成す術も無くクロアに連れられ、再び人ごみの中へと消えた。
作「ここに来るのも久しぶりだな・・・」
神「待ちくたびれたよ、このクズ」
作「も、申し訳ない・・・」
神「まぁ駄目作者の事だから?どうせそのテストもさぞ楽しいことになるんだろう しね。いやはや結果が待ち遠しいね」
作「えっと、あの~もしかしなくても、怒ってらっしゃいます?」
神「当たり前だろうが!何で澪歌の手ぇ握っちゃってるの?ねぇ何で?」
作「えっと、成り行きといいますか・・・」
神「駄目だよわたしが認めてないのになに触ってるんだよ澪歌はわたしが認めた奴 にしか渡さないていうか渡せない無理無理認めてないからあいつ無理」
作「え?そこ?」
神「あの野郎次なんかしたら原子レベルで分解して宇宙の塵の仲間にしてやる!」
作「歪んでる!神の愛情が歪み過ぎてる!」
神「ふふふ、ふふふふふふふふふふ」
作「怖っ!神怖っ!!」
神「あぁ、次回がどうなるのか楽しみだ・・・という事で、皆さんまた次回★」
作「星が黒くなってるぞ!?」
神「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」