十二話 書庫、それは癒し。
遅くなってしまって申し訳ありません!
事前に連絡をしなかった私のミスです!
本当にすみませんでした!
青い空には雲一つ無く、柔らかく吹く風が涼しい今日この頃。
今日は暇を持て余したので城の書庫にやってきていた。
部屋でシエラから書庫の話を聞いて、朝食後すぐに飛んできてしまった。
比喩ではなく、本当に飛んでしまったのだ。
夢中になっていて気付かなかったが、確かに地面から足が浮いていたのだ。
羽根を望めば出てきてしまいそうだ。
そんなビックリ体験をした私はというと、本の山に囲まれて読書中。
「ここっていろんな本があるんだね、より取り見取りだよ」
とは最初に飛び込んで来た時に、近くにいた若い文官に呟いた言葉だ。
その文官はというと、私の髪を見た瞬間にもの凄い勢いで頭を下げていた。
自分より上の者だから、という至極当然の礼儀なのだが、澪歌はそれを良しとしなかった。
「ここは知識を得る場所だよ?学ぶ意志に上下関係なんて論外なの。だから頭をあげて?」
本当は至福とも言える時間を過ごせる書庫《聖地》を、堅苦しい空気で満たしたくなかったから言った事なのだが、言われた当人である文官は何故か感激し、率先して澪歌の補助にまわった。
後に彼が仲間に語った言によると、
「新しい覇王様は学ぶ者に理解が深く、彼の方もまた書に理解を示される素晴らしいお方だ」
だそうだ。
だがそんな風に言われても、本来ならするべきでない私の補助をしてくれる彼に申し訳なくて、高いところの本は飛べば取れるし、重い本も身体強化で持ち運べると伝えた。
だが彼はそれならば、と何処からか座り心地のいいソファと机を私専用だと言って日当たりのいい窓際に設置してくれた。
おかげでゆっくり自分の時間に浸れる事ができ、ここは天国か!などと考えてしまったのは内緒だ。
学園に行ったら、ここと空間を繋げようと思う。
出した本を一通り読み終えた私は、本から眼を離して小さく息をつく。
「・・・幸せだなぁ」
そう言ってパタン、と閉じた本の表紙には『薬草大全~グランフィーナ編~』と書かれている。
その隣の無造作に積まれた本には『帝国の人間主義思想』や『国家の成立』といった堅苦しい物から、『獣人の教え 喰える物と喰えない物』や『俺達の生き様~恐怖!人間川~』といった訳の解らないものに、それこそ乳幼児に読み聞かせるような簡単な絵本や夢物語まで幅広いジャンルの本が揃っていた。
「なかなか面白い本があって良かった・・・この生き様シリーズは最高だね」
生き様シリーズと呼ばれるこの本は、魔族の青年と獣人の少女が世界を旅する物語だ。
最初の方からいきなり弾けたこの作品はグランフィーナ王国国民の愛読書とも言うべき代物だ。
「もう何がいいってこの主人公の純愛とストーリーの奇抜さ、脇役さえ愛おしく思えるよ」
「ですよね、さらにその人間川は生き様シリーズで一番の人気を誇っているのですよ」
相槌を打つように答えたのは先程の若い文官だ。
彼とは机を挟んで向かい合うように座っている。
この配置は私たっての希望で、これからこの聖地を共にする仲間と友好的な関係を築く為の措置だ。
「そうなんだ」
「そうなんです」
他愛のない会話は、疲れた時に心地いいものとなるらしい。
「そういえば、フミは学校に行った事ある?」
ふと思い出したのだが、文官になれるのは学校で高い評価を得た者がなれるのだと聞いたことがある。
「学園になら。そうでした、貴女は学園に通うそうですね」
「そうなの。世界中からいろんな人が集まるからって理由で、中立国の首都付近の学園に行くんだ」
「もしかしてそこはオルランジェ中立学園都市ですか?」
「そうだけど、もしかして先輩?」
そう言って上目遣いで見上げた彼、フミは何故か一瞬言葉に詰まったあと顔を赤くした。
動悸が・・・とか呟いてるあたり何かの持病だろうか?
「フミ、大丈夫?」
心配になって伏せられた顔を覗きこみ、その頬に手を添える。
「熱い・・・熱あるみたいだよ?」
「・・・だっ大丈夫です!問題ありません!」
焦ったように飛びのき離れるも、フミは高く積み上げられた本の山に激突した。
「っぐ!?」
「あ」
後頭部を強打したらしい。
悶絶し、転げまわるフミに容赦なく本が降り注いだ。
辺りに轟音と埃が撒き散らされ、私の気管に入り、咳をさせる。
もうもうと立ち込めていたものが晴れた頃になって、ようやく眼をひらく。
そこには案の定フミの姿はなく、代わりに瓦解した本が山を作っていた。
恐らく、いや確実にフミは本の下。
周りを見渡しても、私以外誰も居ない。
誰かを呼んでもいいのだが、どうにもそれまでフミが生きていられるか解らない。
と、いうことで。
「フミを発掘するついでに片付けよう」
まず手始めに本全体に検索をかけ、フミの位置と状況を把握する。
気絶してはいるが息はあるようだ。
次にフミへの最短ルートを割り出して、障害物と化した本をどかしていく。
後から整理するのも手間なので、手にした本は安全地帯にジャンルごとに分けて置く。
こうすれば片付けの時も大分楽になるだろう。
身体能力を活かしたら、ものの数分でフミの右腕が見つかった。
「封印されし右腕・・・」
それから掘り進めていくと、右足、胴、左腕、頭、最後に左足・・・つまり全身を見つける事に成功した。
「これで封印されしエクゾd(自重)だ」
満足げに呟かれた声を拾う者がいないのをつまらなく思いつつ、頭や身体に異常はないかを調べる。
「頭は・・・コブができてるけど他は異常なしっと」
そうと決まれば、後は起きるのを待つばかり。
フミを浮かせてソファに運び、私は片付けにとりかかった。
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「ん・・・ここは?」
時はすでに夕暮れ時。
眼を覚ましたフミは何故か書庫のソファではなく、王城内の医務室のベッドの上にいた。
「あっ眼を覚ましたみたい。気分はどうですか?」
高い声と共にあけられた仕切りのカーテン。
その向こうには、白緑の髪をツインテールにした可愛らしい女性、確か新しい覇王様付きの侍女となったシエラという女性だ。
そんなヒトが、どうしてここに?
きっとその考えは顔に出ていたのだろう。シエラは口元に淡い微笑をのせていた。
「レイk・・・覇王様から貴方の様子を見てきて欲しい、と頼まれたんですよ」
「覇王様が?」
「ええ、あの後覇王様は魔王様達にお呼ばれになられたのでお帰りになられました。しかし怪我人を放って置くわけにもいかず、ここにお運びになられて」
「運んだって、覇王様が!?」
そんな事をしてもらったと聞かされ、フミの顔はトマトのように真っ赤に染まっていた。
自分より小さな少女、しかも国の頂点に運ばれたという事に対する羞恥に死にたくなる。
そんな彼を見かねてか、シエラは手に持っていた手紙を渡す。
「覇王様からの伝言です、なんでも書庫管理官である貴方にお詫びだそうです」
「お詫び?」
「本当なら覇王様直々にお伝えしたかったそうなのですが、出発までに連日予定が入れられまして」
それではお大事に。
そう言ってシエラは医務室から消えた。
ただ一人残されたフミはしばらく呆然としていたが、手元に残った手紙を見下ろした。
二つ折りにされたそれは、不思議な甘い香りがしたが不快ではなく、覇王を彷彿とさせる香りだった。
丁寧に広げると、そこには少し幼い小さな文字が綺麗に並んでいた。
それに眼を通して、フミは苦笑する。
「流石は覇王様。なかなか面白い事をなさる」
その手紙には、こう綴られていた。
『 今日はありがとう、楽しかったよ。
居心地がよかったから、向こうと繋がるように細工をしたの。
しばらくは来れないけど、その内絶対顔をだすよ。
それじゃあまたね、フミ。
追伸
他のヒトには内緒だから!
覇王・レイカより 』
幼さの滲む内緒の約束に、フミは妹を見守る兄のような気分になった。
だが。
「・・・空間魔法はそう簡単にはできないはずなんだが?」
その疑問に答えられる者はいなかった。
作「あああああああ遅れたぁぁぁぁぁ!!」
神「何やってるんだか、この塵芥野郎☆」
作「くっ、否定できない!!」
神「それに後半の地の文は誰目線なワケ?そこも含めて説明してもらうよ☆」
作「はい・・・まずは遅れた理由から。テスト勉強してました」
神「勉強するんだ。以外」
作「するさ、怖いもん落ちるの」
神「で、次は?」
作「地の文ですが、あれは作者目線です。これからも入れていくつもり」
神「なんで?」
作「作者の力量不足のための緊急措置」
神「・・・手抜きか」
作「違う!表現を変えただけで私は常に全力で――――」
神「全力で?」
作「駄文作ってます」
神「・・・」
作「・・・」
神「・・・後悔は?」
作「してます」
神「反省は?」
作「もっとしてます」
神「ならいう事はないか?」
作「あります。読者の皆様、本当にすみませんでした!」
神「そして読んでくれてありがとう☆それではまた次回~☆」