第7話 転校生
「おはよー、広瀬くん」
「迅くん、おはよう」
それからしばらくして、麻実さんと多奈川さんが学校でオレに朝の挨拶をした。
「おいーっす、おはよー」
「聞いた? 今日は中等部に転校生来るらしいよ」
「へぇ、珍しい時期に来る人もいるんだな」
「いやいや、それをキミが言うか」
「オレは、ほら、2学期入ったその日やし」
もう2学期に入ってちょっと時間が経って秋も深まってきたところだ。麻実さんと多奈川さんが、『もう、広瀬くん、関西弁使ってる』という感じに見ていた。無言で3人で並んで階段を登っていると、『あっ、こら、そっちは高校生の階だぞ』と理事長の声がした。それと同時に、
「迅先輩!!」
「久賀!?」
オレを見つけて久賀がタックルしてくる勢いで駆け寄ってきた。
「どうして宝賀に……?」
「もうわかってるくせに」
「迅くん?」
「広瀬くん?」
事情の説明を求める的な感じで2人とも目線を送ってるが、事情を知りたいのはこちらも同様である。
――どうして東京にいるはずの久賀が大阪の宝賀に……?
「いろいろあって大阪に引っ越してきました!!」
「いろいろ……?」
多奈川さんが不審がる声を出した。そこに理事長が追いついた。
「あーいや、久賀さん、速いよ、陸上部にでも入ればいいのに」
「迅先輩、陸上部でしたっけ?」
「ん? オレは帰宅部だけど。あっ、理事長、お久しぶりです」
『あぁ、キミは……』と理事長もあいさつをした。
「どうして理事長が久賀と校内にいるんですか?」
「まぁ、転校希望の子がいて、今日この時間に案内できる先生が私だけで……」
結果として、久賀は大阪にどうやってかわからないが両親とともに引っ越してきて、宝賀学校 中等部に転校してきた。
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