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夢市場

作者: 芒野 神無

無修正版になるので、非常に拙い作品になってしまいますが、読んでくれると幸いです。

夢の話をしよう。ある夢では幸せになり、ある夢では不幸になる。

そんな壮大と表現できる世界を作る想像力や些細なことまで詳細に覚える能力もまたこれも夢である。

自身の身の丈に合わぬ夢も時には叶えたいと思う人間の性、「嗚呼、神様お願いします」と短絡的に祈ってしまうか、はたまた艱難辛苦を乗り越え夢を叶えようとするかそれはまたその人の夢次第だろう。


これはそんな夢を選択する。ある人物の物語である。




死にたくてしかたなかった。最愛の人が事故で死んだ。

その事実一つが、私の脳を灰色に変色させてしまうほどに世界は暗くなったようだ。

引きこもっては酒浸り、飲んで、倒れるように寝てを繰り返す。

あの時の思い出が夢の如く湧き出てくる。この酔いしれた状態が現世と幻想を混濁してくれる、至高の時間とも言えるだろう。

そんな生活を数か月も続けてある時、ネットである情報を見つけた。

隣町の夜に開かれる「夢市場」。なんでも、それは自分の見た夢を取引できるという内容だ。それだけならただのオカルト話だと思いすぐに別のサイトを開こうとしたが、私の目はある一点に釘付けにされた。

「夢を失う代わりに過去を修正できる」と言う内容だ。にわかには信じがたい、信じがたいが信じたい。

もしも、私の夢を、記憶を失うことで彼女が蘇ってくれるならと、微かな希望を持って私は、隣町へ向かう準備をした。




隣町自体は何度も来たことある。裏路地にある怪しい露店が並んだ通りだ。

この通りは治安は然程悪いという情報はないが、強いて言うなら外国人によるぼったくりやひったくり程度のボヤ騒ぎはある表通りとは打って変わった場所ではあることは確かだ。

あのサイトの書いてある通りなら、もうすぐ夜で夢市場と言うものがこの辺りであるはずなのだが、やはりペテンだったのだろうか。焦燥に駆られながらも全てを失った私はこの情報に縋るしかなかったのだ。

その様な不安を覚え瞬きをすると、目の前の視界に異常が起こる。

まるでそれは酩酊状態にも近い、歪んだ視界が続く。頭がぽわぽわする、体の感覚が抜けていく。

そんな状態が暫く続いた後、私の視界は変わった。

そこは、まるで夢の様な非現実的な光景だった。

狭い裏路地は広い大通りとなっており、先ほどとは打って変わって伽藍とした道が絢爛豪華な装飾がされており煌めいている。そう。私は直感で確信した。

この世界こそが、私が望んだ夢市場なのだと。




「此処は何処だ?」とそんなありきたりな呟きをした私と相反するように、同時に本能が告げる。

此処が夢市場だと。

しかしこれが今だ非現実だと確定したとして、此処は本当に夢市場かと理性的な思考に戻ってしまうだろう。

取り敢えず審議を検証するために、混乱した思考の中、それを一旦忘れようと頑張って実地調査を行おう。

そう思い足を動かした。

観察して見た結果わかることがあった。

此処が確かに市場の様であり、大量の人間が居るということ。

そして売り手の人間は謎の白い半透明な塊の瓶詰を売っており、買い手は暫く話していると、「買った」との声が聞こえたしばらくした後に、その人物は数秒間放心状態となってしまい、その後普通に歩いて行った。

一体何が起こっているのか、私の知識では到底理解は出来ないが、何をしているのかは想像は付いた。

そう、誠に夢を売り買いしているのだと。

確信した。これで彼女を救う術が見つかったのだと歓喜した。

そう思い高ぶりを抑え、私はまずは近くの商人に声をかけるのであった。]


「夢を…売りに来た。代わりに買いたいものがある」

そう放った私に対し店主が振り向く。

「おぉ、お兄さん。もしかして売りたいってことは”そっち”の客だね?」

店主は背の高い容姿の整った男で、金の装飾を所々付けている商人だと言うのに、何処か高貴さを感じる人物だった

「あぁ。夢を失う代わりに、過去を変えられる。そう聞いた」

「なるほどね。だとしたら、お客さん。夢を失う覚悟は、本当にあるのかい?」

そこで私は少し黙ってから以下の言葉を発する。

「………あぁ。お願いだ。俺の幸せだった日々の夢を失う代わりに、大切な人を蘇らせてくれ」

店主は顎に手を乗せ思案すると、了承したと言わんばかりに頷く。

「じゃあその幸せな夢にさようなら」

そのセリフを聞いた直後、私の思考が、身体が、全てが数分間停止した。

…そして、此処へ何をしに来たのか、忘れてしまった。




その後、私は家に帰ることにした。

そうして、家には私の知らない女性が居た。彼女は「初めまして」と答え、私も反射的に同じように挨拶をする。

この状況に困惑はあったが、不思議と不快感はない。

何故だろう、どうしてこんなにも心地良いんだろう。そしてどうしてこんなに、悲しんだろうか。

思い出せないこととは時に幸せで、時には辛いことだと、私はその真理を初めて理解してしまったのだ。


さようなら、大切な人。そしてはじめましての君へ、これからもよろしく

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