表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

面倒事の予感

カザドラから「帰っても良い」と言われたとたんにみんなが出入り口のほうへ向かい始める。




しかも、知り合いなんかはいちいち私のところまで来て「おっさきー!」なんて言っていっていったりして、正直うざい。エデルだけは気を使ってか残ってくれたけど、他の人みんな帰ったし。薄情者め。




「ねー、私達さー、何のために残されたのー?」


魔方陣の処理かと思って道具を出したら、陣には触らなくていいって言われてしまった。じゃあ、何だ?




カザドラが小さく咳払いをして、口を開いた。


「本題に入る前に、ひとつ。君たち魔法協会で位を持つものは、国学院で教育に携わる義務を持つだろう」


いきなりなんだ?教育の義務なんて……あ。


「そう、ですね。俺たち位持ちは、年に数回、誰かが特別講師として国学院に招かれます」


それがなにか、と言わんばかりのフィーア、ディノ。




……大体予想はついた。大方、革命者の教育係をうちらの中から選ぶのだろう。


「そうだ、リア。よく分かったな」


「心読むんじゃねえこの創造神(父)が!」


やだな、11分の1+息子の幼なじみバフかかってそう、私。いやいや、流石にそれだけじゃ決めないだろう。




「失礼ながら。リアは何と考えていたのですか?」


「ああ、すまない。君たちに伝えるのを忘れていた。革命者殿の教育係を誰かに頼もうと思っている」


「それなら、リアがいいと思います」


即答!?え、いや、少し悩むとかもなく?即答で私?


「確かに、リアは特別に免除されているのだから、このくらいはやってくれないと。わたくし達だって忙しいのよ」


う、何も言えない。




「でもしょうがないじゃん。私、仕事上顔出しちゃ駄目だもん」


「知ってるわ。だからこそ、よ。わたくし達も、わかっているからこそ普段は何も言わないんじゃない。けれどね、リア。革命者様の教育は表に出るのとは違うでしょう?それに、わたくし達の中で一番年上のリアは、教育係にぴったりだと思うわ」


「……」




確かにその通りだ。革命者の教育は、国学院での授業とは違って表に出るようなものじゃない。普段いろいろ迷惑かけてるし、私が引き受けるのが筋かも。


「リア、やってくれるか?」


「……わかったよ、やる。だけどさ、流石に私ひとりじゃないよね?私忙しいし、ずっと付きっきりではいられないよ」


とはいえ、めんどくさいのを他人に押し付けたいのはみんなそうだろう。私のこと正論で諭したエルフのプリシラだって、面倒そうなもの受けたくないって魂胆見え見えだった。だからせめて、ひとりふたり位は巻き込んでやる。




「なら、俺がリアと一緒にやるよ、教育係。それでいいか?」


あれ、協会メンバー巻きこもうと思ったらエデルが掛かった。まあいっか、ひとりじゃないだけまだましだ。


「分かった。では、革命者殿の教育係はエデルとリア。皆、異存はないな」


この場にいる皆が一斉に頷く。


あーあ、決まっちゃった。もうやるしかないな。こっそりため息をついたのは、きっとばれてないだろう。





「よし、これで解散?」


「ああ」


お、帰れるか?やった、そろそろ地上に出たいと思ってたんだ。地下は嫌いじゃないけど、王城の地下はそんなに過ごしやすい所じゃないし。早く外の空気吸ってリフレッシュしたい。




「……但し」


「?」


「リアとエデルだけは残ってくれ」


「えー」


まーた居残りかぁ。ようやく出れると思ったのに。





「カザドラの馬鹿。何で帰してくれないの?新手のいじめ?」


皆がさっさと帰っていったあと、ついつい愚痴をこぼしてしまった。


ま、ここにいるのはカザドラとエデルと私だけだからいいか。


「まあまあ、そう言わずに。すぐに終わるから」


さっきまでの威厳のある口調ではなく、いつもの優しい口調でなだめるカザドラ。あんまり嘘はつかないし、本当にすぐ終わるんだろう。




「革命者殿に活躍してもらうまで、おそらくまだ2、3年程は時間があるんだ。けれど、それまで何もしないというわけにもいかない」


「別に何もしない訳じゃないでしょ。うちらが頑張って教えるんだし」


突っかかると、苦笑と共に頭を撫でられた。


「いや、そう意味ではなくてね。まず、ふたりにやってもらいたい事があるんだ。聞いてくれるかい?」


何だ、やってもらいたい事って。これ以上何かあるのか。無理難題じゃなければ聞いてやろう。




エデルと目配せして頷くと、カザドラはすぐ話し始めた。


「まずは、革命者殿を冒険者登録する事」


確かに、冒険者登録はしていた方がいいかも知れない。何かあった時に、冒険者だと名乗れるから。基本的に、革命者がいるということは何か大事が起きるということで、変に混乱を招かないように伏せられるもの。代わりに名乗れるものはあった方がいい。




「二つ目に、トゥワイズ国学院の総合科に革命者殿を入学させること。まずはそれだけだ」


これもまあわかる。庶民から貴族、王族まで通う国学院に通うことになれば、いろんなツテやコネも手に入れられるし、知識もつく。いや、知識はうちらで頑張ればいいかもだけど。楽したい。




「え、でもさ。試験は?」


「問題ないよ。あと、国学院内でもサポートはして欲しいから、リアとエデルと……。あと、ジェイドも通ってもらおうかな」


うげ、ジェイドも来るのか。あいつ、苦手なんだよなー。第二王子だからって威張ってるし。


「父上、国学院には寮があるはずだけど、どうするんだ?」


そういやそうだったな。国学院は寮あるわ。革命者ちゃんは寮に入るのか、王城から通うのか、どっちなんだろう。


「基本はここから通ってもらうつもりだよ。リアはどうする?」


「私は寮、入ろっかな。家あるの、郊外だし」


「そうか。わかった、これで解散だ。帰ってもらって大丈夫だよ」




よし、やっと本当に帰れる!


「いこ、エデル」


ぐいぐいエデルの腕を引っ張って、半ば引きずる様に扉まで歩く。


「ちょ、リア!痛い、普通に痛い!」


「あらら」


ぱっと掴んでいた腕を離して、エデルと並んで扉の前に立った。


ゆっくり開こうとする扉のドアノブを掴んで、強制的に開かせる。遅い。


地上へ出る階段を上り終えて、ここで解散!




……しようと思ったら。


「リア様、お兄様、革命者様の所へ向かって下さい」




「……もういい加減……」




帰らせろーー!!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ