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眠れぬ夜の過ごし方

 よし、実験も成功したことだし次はことちゃんだ。上手いこと捕まると良いんだけどなぁ。

 星の神ってわかってないことが多すぎるんだよ。エデルに聞いても分かんないって言うし、カザドラに聞いても首を横に振られるだけだったし。


「ことちゃんは……っと」


 流石に遅い時間だったから、その日に行くのは諦めた。というより、月夜ちゃんに止められた。


「どこに住んでるのかは知らないけど、こんな夜遅くに押し掛けちゃ迷惑でしょ」

「……あー」


 言われるまで完全にそのことが頭から抜けていたから、正直助かった。

 というか、月夜ちゃんはことちゃんの住んでる場所知らないのか。わんちゃんエデルのこともどういう人か知らなかったり?……無いか。あいつ曲がりなりにも王子様だもんな。


「それじゃ、もう寝よっか。あんまり負担のかからない方法でやったけど、ある程度は疲れる筈だから」

「わかった。リアもちゃんと寝るよね?」


 月夜ちゃんに言われて、ちょっとドキッとする。正直、寝るつもりなんて全くなかった。今からヌルに通信掛けてはしゃぐ気満々だったし。

 けど、まあ明日でもいっか。個人的には、協力者への成功報告は早い方が良いと思ってるんだけどね。


「うん、寝るよ」

「なら良いけど。じゃ、お休み」


 私が考え込んでいる間も待っててくれるなんて、やっぱり月夜ちゃんはいい子だなぁ。

 月夜ちゃんに寝るって言っちゃったし、私も寝ないと。そう思ってベッドに潜り込んだは良いものの。肝心の眠気が全くやって来ない。


 やっぱり面白い実験が成功した後って、余韻が残って眠れない。ベッドの中でさっきのメモを取ったり、さらに良くするためのアイデアを書き込んだりしていても、さらに目が冴えてくるだけだった。悲しい。

 普段からエデルとかに寝ろ寝ろ言われてるけどさ、私だって好きで寝てない訳じゃ無いし。

 ちょっとだけイライラしながらメモを枕の下に入れて目を閉じる。それでも、全然眠くならない。もうしょうがないや、起きてよう。こういう時は寝ようとすると逆に寝れなくなるから。


 忍び足で部屋を抜け出し、蝋燭の灯りだけに照らされる廊下を静かに歩いていく。まさかセンサーなんて無いよな、とちょっとだけドキドキしながら目的地へ足を進めた。

 流石に遅い時間だったから誰かとすれ違うことはなく、無事に廊下端まで辿り着いた。


 廊下の突き当りには大きな窓があって、ここから中庭の様子が一望できる。しかし、私はその景色を見に来た訳じゃない。

 体を透明化して、窓を通り抜ける。別にわざわざここでやる必要はないけど、体を屈めたり捻ったりせずに通り抜けられるから楽なんだよね。

 私の部屋は六階だから、当然窓を通り抜けたあとは下に落ちていく。このくらいどうってことはない。


 地面にしっかりと足から着地し、中庭を散策する。相変わらず凄い場所だ。季節なんて関係ないかのように花々は咲き誇っているし、それにしては雑草は一本も見当たらない。丁寧に石畳で舗装された小道には、等間隔で袋花のような形のランプが置いてあって、暗くても安心だ。


「中庭って感じじゃ無いよねぇ、ここ。うちの別荘もこんな感じだったような」


 貴族の別荘と似た中庭って凄いぞ。どんだけ金かけてるんだろう。しかも水路まで魔法で整備してあるし。絶対一人の魔法使いだけで管理できないだろうな。


 そんな事を考えながら曲がりくねった小道を歩いていくと、噴水が中央に据えられた広場に出た。三方向を建物に囲まれている場所。

 私は南の白竜寮方向からぐるっと回って歩いてきた筈だから、西の方にあるのが白竜寮のはず。そしてその向かいにあるのが青竜寮、私の正面にあるのが緑竜寮。きっと。

 少し歩き疲れたから、噴水の縁に腰掛ける。ぼうっと空を見上げると、月が綺麗に輝いていた。

 さっきの月夜ちゃんでやった実験、成功して良かったな。そういえば、加護を与えた側は観測されたのを把握しているんだろうか。


 ……せっかく実験から思考が逸れてたのに、また戻って来ちゃった。寝たいときにこうだと困っちゃうな。

 こういうときは、ちょっと激しめの運動で体を疲れさせよう。明日も授業だから、あんまり明日に影響が出そうなものはやらないけど。

 そこまでへとへとにならなくて、しんどくないやつ。疲れさせるとは言っても、ここから部屋まで戻らないといけないんだから、セーブしないと。

 ……よし、決めた。うちの領地に昔から伝わる舞をやろう。そろそろ練習しなくちゃいけない頃だったし、丁度いいや。


 背筋を伸ばして、地面をしっかり足の裏で掴む。腕を伸ばして、掌を目の高さまで持ってくる。顔の前で重ね合わせた掌から何匹かの光の蝶を生み出した。

 それが舞の始まり。ひらひらと飛び回る蝶を追いかけるようにゆっくりと体を動かしていく。本当は扇や鈴なんかがあると良いんだけど、今は持っていない。だから指先までぴんと伸ばして動かすことを意識した。

 ふわりふわりと優雅さ重視の始まりが、終われば次は大分動きが早くなってくる。そこまでやるつもりは無いから、ゆっくりと腕を降ろした。蝶はまだ泳暗い夜空を泳いでいる。自分で出しておいてなんだけど、すごく綺麗だからずっと見ていたかった。


 途中で蝶の色を変えたり、数を増やしたり、はたまた水で魚を作って一緒に泳がせたり。この夜の中庭には、おおよそ現世とは思えないような幻想的な光景が広がっていた事だろう。これを私以外の人が見れないのが残念だった。

 暫くそうして遊んでいたけど、そろそろ戻らなきゃ。少しは気分も落ち着いて、今ならいい夢が見られそうな気がする。


 本当は正面玄関から入って部屋まで戻るのが一番何だろうけど、階段を登りたくないからそのまま直で部屋に戻ることにした。

 風で私の体を宙に浮かせる。そのまま六階あたりまで上ったけど、私の部屋がどこらへんなのか全く分からない。

 寮の建物の周りをぐるぐる動きながら、せめて廊下へ降り立てるように窓を探した。私が出てきたところの窓だと最高。


 上から中庭の位置を確かめて、出てきたところを探していく。……てか、ここ本当に白竜寮だよね?ちょっと不安になってきた。

 一度正面玄関に降り立って、扉の横に飾ってある大きな旗を確認する。うん、しっかり白竜寮だ。


 もうここに降りちゃったし、ここから行こう。鍵が掛かってても関係ない、透明化(インビジブル)の前では無力なのだ。

 でもやっぱり階段を使いたくないのには変わらないから、体を浮かばせながら六階まで上がっていった。


 523号室まで戻ってくると、ようやくここで透明化を解く。そっとドアノブを捻って小さな隙間をつくると、そこに静かに体を滑り込ませる。

 外に出たからできるだけ静かに着替えて、ベッドに入る。脱いだ服は明日洗えば良いだろう。

 さっきまで全く眠気が無かったのが嘘みたいに眠たい。

 瞼が勝手に落ちていくのに逆らわず、そのまま眠りについた。

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