(イベントネタ)メリークリスマス!
タイトル通りクリスマスにかこつけて書いた短編です。本編ぶった切って変な時間軸で話が進むので本編読みたいよってな方は飛ばしてください。
12月25日、クリスマス。本来は異世界の聖者の誕生を祝う祭典だったらしいけど、ここでは過去の革命者が伝えたただの祭りに過ぎない。
取り敢えず、いまは王都にいるから実家にいた頃みたいなパーティーは出来ないだろう。どうしよっかな~?
「天……は、多分仕事だよねぇ。平日だし」
それに、イベント事の時期はすごく忙しくなるって聞いた。年明けも近いし、多分あそこはクリスマスだなんだとかやってる余裕無い。
……夜にケーキ持って押し掛けよう。休憩も大事だし。あとなんかプレゼント。あいつが喜びそうな物ってなんだ?
うーん、何をするにしても準備しないと。クリスマスって一週間後だ。間に合うかな?
学校が冬季休暇に入るのは22日からだから、そこからはじめてちゃ余裕は無い。今からどんなものを用意するか決めないと。
「ねぇ、リア。リアってクリスマスに何か予定ある?」
「えー、今のところは無いけど。あ、でも夜はちょっと」
部屋であれこれ考えていると、帰ってきた月夜ちゃんにそう尋ねられた。
天のところに押し掛けるのも決定事項ではないから、なんだか曖昧な返事になってしまった。
ごめんよ、まだ予定は未定なんだ。急に仕事ぶちこまれる可能性すらあるし。一応終わらせておくけど。
「そっか。じゃあさ、24日にクリスマスパーティーしない?」
「24日?25日じゃなくて?」
「うん。ことりが言ってたんだけど、24日はクリスマスイブって言って、寧ろそっちの方がメインだったりするんだって」
へぇ、知らなかったな。月夜ちゃんの話によると、クリスマスの朝に子供の枕元にはプレゼントが置いてあるから、前日に用意しておかないといけないらしい。
そっかぁ、じゃあ私も前日に乗り込むか?流石に藍染家に忍び込むのは無理ゲー過ぎるから、本人に渡さないといけなさそうだし。次の日の朝に開けてってお願いしたらいいかな。
「じゃ、参加させてもらおうかな。いろいろ用意しておくね。他に誰か参加するの?」
まさか月夜ちゃんとことちゃんだけって事はあるまい。どうせエデルとかも参加するんだろう。あとはきっと晴渡くんとか誘うのかな。
「うーん、今取り敢えずリアだけ誘ってるから、他はまだかな」
「じゃあさ、エデルとか誘っとくよ。あ、でもことちゃんが行ってるかな」
「そこはね」
エデルはことちゃんの方で誘ってそう。晴渡くんは?聞いてみたら、誘っても良いんじゃないとの返答が。よし、明日誘ってみよう。予定無いといいけど。
「よし!月夜ちゃん、明日暇だったら買い物付き合って!」
「え?まぁ、いいけど」
やった、これで少しは準備進むかも。みんなの欲しいものなんて分からないから、月夜ちゃんの分だけでも本人の欲しいものを聞ける。
楽しみだなー、なんて考えていたら明日提出の課題を忘れるところだった。危ない、危ない。あんまりイベント事に浮かれてちゃ駄目だね。まずは学業優先しないと。……明日の朝やれば間に合うかな?
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しっかり夜にやりました。結構な量あったから、やっといて良かったかも。
なんとか課題を提出し、授業はずっと上の空。なんてったって、放課後は月夜ちゃんとお買い物するんだもんね。
「リア、お待たせ」
「月夜ちゃん!うぅん、全然待って無いよ~」
なんと、月夜ちゃんがうちのクラスまで来てくれた。私の方から迎えに行くつもりだったけど、来てくれてありがたい。
一度着替えるか悩んだけど、めんどくさくてそのまま行くことにした。時間も無いし、わざわざ着替えなくても大丈夫だよね。
「リア、何買うの?」
「うーん、取り敢えずお菓子の材料?」
ほんとはみんなのプレゼントも買いたいけど、最悪それは私の手持ちのものでなんとかなったりするかも。
「……リアって、お菓子作れるの?」
なんだか不安そうに見つめてくる月夜ちゃん。私、そんなに信用されてないかな。
確かに、この間魔法なしで料理してたらめっちゃ指切ったけど。材料も全然均一に切れなくて火の通りがちょっと悲惨なことになったけど。魔法使えば大丈夫だもん。
まず粉屋で小麦粉と砂糖を購入。ヤバイ粉ごっこしてたら月夜ちゃんに呆れられた。ごめんね。
次は果物屋。ドライフルーツとイチゴとオレンジ、あとレモンを幾つか買った。
ここ、いっつも新鮮なものが置いてあって好きなんだよね。全部美味しいし。いつもお世話になっている。
最後に、製菓材料店で飾り用にアラザンやら着色料やらチョコスプレーやらを買う。
月夜ちゃんに「何でフルーツ以外ここで全部揃うのに他のところで買ったの?」なんて言われたけど、正直他のところで買った方が安いんだよ。餅は餅屋って言うし。
ここまで買ったけど、まだ何を作るか決めていない。まあ、クッキーくらいは作れるだろう。
「よーしオッケー!月夜ちゃんは何か買いたいものある?」
「……じゃあ……」
月夜ちゃんと共に向かったのは小さな雑貨屋さん。最近の月夜ちゃんのお気に入りの店なんだって。
小さいながらも品揃えが良くて、基本何でも揃うらしい。便利な店だなぁ。内装もおしゃれだし、月夜ちゃんこういうところセンスあるよね。
月夜ちゃんが何か探しているから、私は私でなんかプレゼントによさそうなものが無いか探すことに。
うーん、何が良いんだろう。月夜ちゃんには、月モチーフの小物とか良いかもなぁ。ことちゃんは鳥モチーフにして、そこでちょっとお揃い、的な。そこまでいったら私も蝶モチーフで揃えたいな。
エデルはどうしよう?あいつ、基本何でも手に入るからなぁ。あいつの持って無さそうなものとか、ちょっと想像できない。……星でキーホルダーでも作ろうかな。それか、最近手に入った品質の良い宝石でなんか作ってもらうとか?まあ良いや、一旦保留で。
晴渡くんは……ヤバイ、一番わかんない。こっちに魔石を幾つか加工したものをあげようかな。
そしたら、全員にお菓子と一緒になんか渡せる。金はマジでいくらでもあるから、ちょっとくらいは減っても大丈夫。
さて、さあ本命の天へのプレゼントだけど。あいつもあいつで何でも持ってそうなんだよなぁ。下手に形に残るものあげても、てな感じだし。
じゃあ消耗品か?ペンとインクのセットでもあげようかな。良いペンって使ってると全然疲れないし、仕事の効率上がりそう。……でもそういうのちゃんとしてそうだからな。
うーん、そこはちょっと考えないとな。
「リアはまだ買い物してく?」
「……うーん、どうしよっかな。月夜ちゃんはもう終わったの?」
うん、と頷く月夜ちゃん。買い物終わっちゃった人をこれ以上連れ回すのもいかがなものかと思うし、ここで解散することにした。
月夜ちゃんは気にしないよって言ってくれたけど、私が申し訳無さすぎて断った。結局、月夜ちゃんの欲しいものは聞くのを忘れていたけど、まあいっか。用意したものが気に入らなかったら捨ててくれればいい。
思い付いたものを用意するために、プリシラのところへ向かった。あの子、結構いいところに店構えてるんだよね。仕立て屋さん。貴族からの注文も入るし、今忙しいかな?
「こんにちはー、プリシラいる?」
店に入って奥へ呼び掛けると、店員さんがプリシラを呼んできてくれた。忙しそうなのに、ありがたい。
「どうしたのよ、リア。また何か服作らせてくれるの?」
「今回はちょっとちがくて。あのね、ポーチみたいなのを幾つか作れないかな?」
「ポーチ?まあ、できるけれど。何でまたうちに」
取り敢えず奥に入って、と言われたのでプリシラに着いて店の奥へ。従業員の作業スペースになっているそこは、みんな忙しそうに布を裁ったり縫ったりしていた。
「それで、リアの欲しいポーチってどんなものなの?」
「ちょっと待ってね」
メモ帳にガリガリとデザインを描いて渡す。だいぶ適当になっちゃったけど、プリシラなら意図を汲み取ってくれるはず。
「うん、これをもとにして作ればいいのね?このくらいだったら一日でいけるわよ」
「え、マジ?」
「ええ。それに、もういい加減お貴族様の衣装を作るのも疲れてきたところなの。いい息抜きだわ」
すごい。プロってやっぱりすごいんだなぁ。尊敬する。お金は完成したときに言い値で払うと伝えて、プリシラの店を出た。
そして、その足で文房具をいっぱい売っているところへ向かう。別に専門店っていうわけじゃ無いけど、店主の趣味なのか、兎に角ずらっとペンやらインクやらが店頭に並んでいる。……どっちかっていうと、ここってアクセのお店だったような。
店を一週してみたが、あんまりよさそうなものはなかった。よし、やっぱり天へのプレゼントも自分で作ろう。魔石も星の欠片もいっぱいある。昔、星の加工は教えてもらったから出来るはず。
次は何のお菓子を作るか考えないといけない。クッキーは作るとして、ケーキ……はいけるかな。生クリームはあったはずだし。何であるんだろう。あとはまあ、作りたくなったものを作れば良いや。シェアしやすいやつで。
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12月24日、クリスマスパーティー当日。しっかりエデルも晴渡くんも誘って参加確認をし、プレゼントとお菓子の用意もバッチリ。
白竜寮の談話室を貸し切って、パーティーの準備をする。うまく会場押さえられて良かった。休暇中に実家に帰る人も多いから、意外と簡単に申請通ったよ。
寮に住んでる私と月夜ちゃん、晴渡くんで部屋を飾り付ける。なんか晴渡くんがいろいろ持ってきてくれたお陰で、だいぶクリスマスっぽくなったんじゃないかな。
もみの木は用意出来なかったから、魔法でそれっぽいのをつくっておいた。赤や黄色のオーナメントをつけて、銀色のベルも吊り下げて、てっぺんに星をのせたら完成。
始まる前に用意していたお菓子を並べる。結局、がっつり作ってしまった。アイシングクッキーやクリスマスケーキ、ジンジャーブレッド。
ちょっと色が地味だったからドーナツとか作ってカラフルにしておいた。魔法で保存性も高めてあるし、結構いい感じなのでは?
料理の方はエデルが用意してくれるっぽいし、あとはふたりが来るのを待つだけだ。
プレゼントも間に合った。プリシラがスッゴい私の想像通りのものを作り上げてくれたお陰で、私は大変満足しています。
「やっほー、メリークリスマス!」
「メリークリスマス、三人とも」
エデルとことちゃんが合流した。これで、ようやくパーティーが始められる。
ことちゃんは会場を見回して、目をキラキラさせている。嬉しそうで何よりだ。
「どう?結構きれいに飾れたと思うんだけど」
「凄い!わたし、こんな素敵なクリスマス初めてだよ!」
良かった。喜んでくれたなら張り切って準備した甲斐があったってものだ。
月夜ちゃんもことちゃんが喜んでくれて嬉しそうだし、晴渡くんも満足そうに尻尾を揺らしている。
「どーよ、エデル」
「よくここまで飾り付けたな。三人でやったんだろ?大変だったんじゃないか?」
「みんなで楽しむためだからね。片付けは手伝ってよ」
エデルの持ってきた料理もテーブルに並べて、私はみんなに飲み物を配る。
ほんとはシャンパンとかワインとかにしたかったけど、ほとんど皆未成年だからね。それっぽい炭酸とキラキラ入りのジュースを注いだ。
「それじゃ、この楽しい時間にカンパーイ!」
ことちゃんの音頭にあわせてグラスを軽くぶつける。皆思い思いに料理やお菓子を食べながら話している。
今年の思いでとか、これまでのクリスマスのこととか。
「わたし、向こうにいた頃はチキンとケーキが食べられるイベントって感じだったなぁ。もう中学生になったらプレゼント貰えなくなっちゃったし」
「え、そうなの?良い子じゃ無くなっちゃった?」
「いやいや、そういうんじゃ無いと思う。うちの親、『サンタさんがプレゼントを持ってきてくれるのは小学生までだよ』って言ってたし」
サンタさんって誰だ。向こうのクリスマスとこっちのクリスマスでは、やっぱり色々と違うところがあって面白いな。
皆とワイワイやるのって意外と楽しい。こんな時間がずっと続いたら楽しいだろうなぁ。こういうイベント事は、終わりを想像していつも寂しくなる。
「ねぇ、そろそろプレゼント交換会しようよ」
月夜ちゃんの言葉で、皆で小さなテーブルに集まってプレゼントを取り出す。
皆、意外と準備してるんだね。綺麗にラッピングされたプレゼントで、テーブルがいっぱいになってしまう。そりゃあ五人がそれぞれ四人分のプレゼントを用意しているわけだから、すぐいっぱいになっちゃうよね。
「じゃあ、皆動いてプレゼント渡そっか」
それぞれの座っている場所に目印を置いて、その目印を頼りに各人へ渡すプレゼントを置いていく。
私が用意したプレゼントは、ことちゃんには小鳥のヘアピン。目に茶色の宝石を埋め込んであるのがポイント。月夜ちゃんには月と星モチーフのブローチ。こちらは、星の部分は本物の星の欠片にしてある。エデルには星の欠片を加工したキーホルダー。一等綺麗に銀色に輝いているものを選んだ。晴渡くんには魔石を埋め込んだブレスレット。埋め込んだ魔石の効果は魔法のアシスト系だから、持ってても邪魔にはならないはず。杖と似たような効果のあるブレスレットになった。
それらをそれぞれプリシラに作ってもらったポーチに手紙と共に入れ、緩衝材代わりにお菓子を詰めた。その上からさらにラッピングをして、それぞれの席に置いていく。喜んでくれると良いなぁ。
「開けるのは明日の朝にしよう!それまでお楽しみ、だね!」
皆頷いて、もらったプレゼントを大事にしまった。楽しみだな。
あとはのんびり楽しんで、夕方ごろになってお昼から続いたパーティーはお開きとなった。
皆で談話室を片付ける。クリスマスツリーはそのまま明日まで置かせて貰うことになっているから、それ以外を片付けた。
「……ちょっと寂しいね」
「終わりがあるって結構残念かも」
女子は女子で、男子は男子でおしゃべりしながら、談話室を元通りにした。余ったお菓子は皆に配る。天の分はきちんと別でとってあるから、遠慮無く受け取って貰った。
城へ帰るエデルとことちゃん、別の寮に戻る晴渡くんと手を振って別れ、私と月夜ちゃんも部屋に引き上げていった。
「……楽しかったね」
「そうだね。誘ってくれてありがとう」
「……うん」
どこか寂しそうな月夜ちゃん。まあ、楽しいことのあとは寂しいよね。どうにかして元気づけたいけど、どうしたら良いのやら。まあ、明日になったら元気になるかな?
「よし、それじゃあ私は少し用事を片付けてくる」
「え、今から?明日でよくない?」
「いやー、ちょっとね。友達に会ってくるんだ」
会えるかどうかはわからない。けど、せめてプレゼントくらいは渡したい。
門限までには帰ってきてねと念を押され、私は天のところへ向かった。しっかりケーキとプレゼントは持っている。
警備をすり抜け、天の仕事部屋の窓を叩く。気付くかな。気付いて欲しいなぁ。じっと見つめていると、不意に天が窓の方を向く。おっ、気付いた。嬉しい。
ガラリと窓を開けてくれたので、軽く手を振って挨拶をした。
「こんばんは、天。メリークリスマス」
「こんばんは。普通に来てくださいよ、リアさん」
ごめんねぇ、と謝りつつも開いた窓から部屋に入る。外とあまり気温が変わらなかった。
「もう少し部屋暖かくしなよ。風邪引いちゃう」
「寒かったですか?」
「私は平気だけど、風邪引くって言ってんの」
窓を閉め、ろくに使われていなさそうな暖炉に火を灯す。これで、少しくらいはましになるだろう。
「まだ仕事中?」
「この時期は忙しいので。売り上げも上々ですよ」
「それは良かった。あとどのくらいで終わりそう?待ってるから、なるべく早くしてね」
本当はこのまま休ませたかったが、こいつは仕事の残った状態で休むなんてことはしない。頑固なんだから。
あと少しで終わりますよなんて言っていたが、正直あまり信用していない。
文机に向かって仕事を再開した天の邪魔をしないように、休憩の準備をする。持ってきたケーキを切り分けて、お茶を淹れて、プレゼントも用意して。
次に天が机から顔を上げたころには、すっかり準備は整っていた。何せ結局二時間くらいかかっていたからね。
「お疲れ様。ちょっとしたクリスマスパーティーだよ」
「おや、ありがとうございます。待たせてしまってすみません」
「良いんだよ。ほら、乾杯」
天には紅茶を淹れたけど、私はしっかりシャンパンだ。飲みたい気分だったから。
「別に、私もお酒で良かったんですけどね」
なんて言う天だったが、さすがに喉を潤すのに酒は不味いだろ。それに、疲れてるときに飲むもんじゃ無いし。
「後でね」
特に会話もなく時間だけが過ぎていく(途中、ケーキを食べたり他のお菓子を一緒につまんだりしたからそこで話しはしたけど)。
穏やかで、ゆったりとした時間。とても居心地が良くて、静かだけど楽しかった。
そろそろ門限も近付いてきたから、帰ることにする。帰り際に、プレゼントを渡した。
「明日の朝に開けるんだよ。それじゃ、良い子の天はそろそろ寝るように」
じゃあね、と手を振って別れる直前に天に手を握られた。冷えていて、あんな中で仕事してたからだと文句を言いたくなる。
「ありがとうございます、リアさん。……それでは、メリークリスマス」
それだけ言って、手は離された。上着のポケットの中に、丁寧に赤い包装紙で包まれて金色のリボンを掛けられた小さな箱を見つけたのは、帰ってからのことだった。




