神と相対する方法
「月夜ちゃ~~~ん!疲れたぁ!」
寮の部屋に帰ってくるなり、私は月夜ちゃんに抱きついた。すぐに剥がされてしまったけど、気にしない。一瞬でも人の体温に触れられれば良いのだ。
現在の時刻は二十一時。授業が終わったのは十五時くらいだからかなり時間が空いている。
今まで何をしていたのかと言うと、エデルと一緒に事情を知っている理事長と協会の位持ちを集めて会議をしていた。
主にことちゃんのことについて話していたけど、少し月夜ちゃんのことも話した。星神程ではないけど、月神の加護がある子もなかなか珍しいからね。
―――――――――――――――――――――――
「さて、ここに集まって貰った訳だけど」
授業が終わるなり理事長室に駆け込んで協会員の招集をかけ、皆が集まったところで話を始める。
正直、こんなことをするよりも真っ先にことちゃんの検査を色々としたいところではあるけれど。肝心のことちゃんがさっさと帰ってしまったからしょうがない。
ことちゃんもお勉強頑張ってるもんね。すごい。見習いたいとは思わないけど、良いことだとは思う。無理はしないで欲しいけど。
「実はね、革命者の話。私が実際に確かめてはないからあれなんだけど」
そう前置きをしてルカから聞いた話をそのまま話すと、反応は様々だった。
まあ革命者だし、みたいな反応をする人、頭を抱えて天を仰ぐ人、未だ謎が多い星神の存在に目を輝かせる人……。
とにかくみんな、何かしらの関心は持っているようで安心。ここで興味無いとか言われたら泣いちゃう。
「……つまり、革命者という存在はこれまでも星の神の加護を得ていたことを我々が見つけられなかった、ということか?」
顎に指を当てて考え込むような仕草をしながら、ヌルが言った。
「そう。しかも、技術の発展に伴って見えるようになった訳じゃない。これは月神からの情報。我々にはまだ確かめる術があるのかどうかすら分からない」
「そもそも星神の加護なんて、どうやって観測するんだい?今の技術では不可能に近いだろう」
「そうそれ!その事を話したかったの!」
スキッツが良い質問をしてくれた。ちょうど皆で話し合いたいことだったんだ。スムーズに繋げられて助かるー。
机の上に手をバンと叩くように乗せて、その勢いのまま立ち上がる。あんまり大声を張り上げるのも良くないと思って、声は押さえ目に。
「その方法を皆で考えたいなーって。一人で考えててもしょうがないし」
ルカから衝撃の事実を聞かされたあとに、星神との繋がりを見ようとした。けれど、今までの技術じゃ無理だった。
星神は特別で、まずは神秘のヴェールを剥がさなくては存在の証明さえ出来なかった。
今でも、敬遠な信者はその神秘を剥がそうとしているだろう。
まあ、それはどうでも良くて。他の神々とは方法が違うとはいえ、相対する方法は必ずあるはず。
今の一番の課題は、星の神の神秘を剥がさずに観測できるかどうかだ。
「教会ならそういうの詳しそうだけど」
「いや、教会はダメ。使えない」
エデルに言葉選びを何とかしろと言われたが、この手の話題では教会はほんっとに使えない。
まず、融通が効かない。神秘を剥がさないようにって言ってるのに、構わず剥ぎ取りにかかるから。
あとは、教会を使うよりも実際の神を味方につけた方が早いし。
「それで、私が今考えてるのは……」
とまあ、こんな調子でブレストとかしてたら時間がすっかり遅くなっちゃった訳だ。良い感じのアイディアは一杯出てきたから不満はないけど。
「疲れてる割には、随分楽しそうだったけど」
「え、分かる?」
そんなに私今わかりやすいかなぁ。ちょっとショック。ポーカーフェイスには自信があったんだけど。
出たアイディアを片っ端から試してくのも大変だから、現実味があるのだけをピックアップしていく。
これは費用が嵩むから駄目、こっちのは技術的に時間がかかるから無理……。結構絞れたな。
そのままの勢いで具体的な計画を練っていると、月夜ちゃんに「もう寝るからライト消して」と言われてしまった。
さすがに睡眠の邪魔をする事は本意では無いため、大人しくライトを消す。そもそも私は暗いところでも昼間と変わらないくらい見えるから、ライトつける必要無かったや。
――――――――――――――――――――――
「出来たー!!」
星の神の加護を確認するための準備が整ったのは、あれから二日後。授業中もずっと考え続けて、徹夜で作業した甲斐があった。
エデルに『完成したよー』とメッセージを送って、一度月夜ちゃんに使ってもいいか尋ねる。
不思議そうな顔をしながらも了承してくれた月夜ちゃんを椅子に座らせ、一本の紐を渡す。
「何これ?」
「後で分かるよ」
魔法薬も準備して、媒介となる羊皮紙も、それに魔力を通すためのインクとペンも用意した。
まずは、魔力を用意しなきゃ。
「ちょっ、リア!何やってるの!?」
ペンで掌を刺して血を出していく。一応毒性は抜いてあるから、そんなに心配しなくても大丈夫なんだけど。
血の着いたままのペン先をインクに浸して、羊皮紙に魔法陣を描いていく。その上から血を垂らし、インクが乾いたところで羊皮紙をくるくると丸め、魔法薬につけた。
「よし、月夜ちゃん、これ飲んで」
「え、えぇ……」
なんかすごいドン引きされている気がする。一応、感染症とかの心配は無いよと伝えたが、それでも月夜ちゃんが魔法薬に手を伸ばすことはなかった。
うーん、どうしよう。月夜ちゃんが飲んでくれないと、実験が……。
「えー……っと、月夜ちゃん。これの解説するね。まず、この羊皮紙に描いたのは人ならざるものの痕跡をはっきりさせる魔法陣。インクに血を混ぜたりしたのは、この魔法の発動に滅茶苦茶な量の魔力を使うから。魔法薬に浸けたのは、その効果を魔法薬に移して、尚且つ殺菌の為。お願い、飲んで欲しいの。身近にこんなこと頼めるの君しか居ないんだよぉ」
「殺菌って。それ、安全なの?」
「もちろん!人体に害は無いよ!」
必死に説明をして半泣きで頼み込めば、何とか月夜ちゃんは魔法薬を飲んでくれた。
そして、その効果はすぐにはっきりと現れる。月夜ちゃんに持ってもらった紐から、紫色の光が伸びて月夜ちゃんの体に巻きついた。
よし、成功!現れたのはその一本だけだった。
ほんのりと月の力も感じられるし、やっぱり月夜ちゃんに絡んでいるのはルカの痕跡だ。
……あいつ、月夜ちゃんには自分以外のやつは近づけさせないって感じだな。執着心の強いヤツめ。




