実力テスト:勝負
あれやこれやで勝負をすることになってしまった訳だけど。勝負するなら一緒の魔法にした方が良いだろうと思って、猫ちゃん君と一緒の魔法で試験に臨むことにした。悩む手間が省けてラッキー。
てか、やっぱあのぬいぐるみ見たことある。プリシラのじゃね?嘘でしょ、プリシラまで噛んでるの?この実力テスト。びっくりなんだけど。もしかしていつもこう?……いや、これに関しては今回が初だろう。さっき先生が言ってたし。
「おい、お前。ちゃんと見てろよ」
別に私が見てなくても、点数とかつけるのは先生なんだから。三本くらい杖が並べてあって、自分の杖がない人は好きなのを選べるみたい。使いやすいのあるかな?まあ、なかったらなかったで持つだけ持って魔力通さないけど。
「ファイアボール!」
火はファイアボール、と。火の玉を飛ばすだけの単純な魔法だ。これなら特に考えることは……あるか。単純だからこそ、ちょっと魔力を込め過ぎれば別の魔法に変わってしまう。そこまで繊細ではないけど、炎はいつも発動しにくくて魔力を込めすぎちゃうし。
猫ちゃん君は問題なく的に魔法を当てて、次の試験へ……行く前に、私のを見せないといけないのか。
とっととやっちゃおう、と指定された位置に立つ。
「君、杖はどうした?」
「杖……」
忘れてた。杖必須とか言われてなかったけど、普通の人なら杖って絶対使うんだよね。じゃないとあんなに杖並べとかない。杖じゃないにしろ、何らかの魔道具を使うのが一般的だし。選んで使うにしても、
「まさか杖を忘れたのか?」
「あー、うーん、どうしよ。あれ、使いずらそう」
「リアさん、わたしの貸そうか?」
「いや、いい」
ことちゃんが気を遣ってくれたけど、まあいいや。私の星精の杖を目立たないように変化させて使えばいっか。
左手を上着の中に突っ込んで、形を変えて短く、普通の棒みたいな杖にしてから取り出す。これなら、気付くのは位持ちくらいだろう。
「よし、あるな。なら、なんの魔法を使うのか申告してくれ」
「ファイアボール」
先生に向かって使う魔法を宣言して、的に向かって杖を振る。杖は形だけだから、杖に魔力は通さない。指輪からいつも放出している魔力を使って、火の玉を形作る。
ちょっと見た目もよくしちゃお。可愛く星の形にしてみた。ボールじゃ無くなったような気がするけど、まあ形なんて些細なものだよね。
もちろん上手く的にヒットし、魔力の調整が上手くいったのか的が壊れることもなし。良かった。これ以上下手に目立つと、大変なことになる。
「ファ、ファイアボール!」
ことちゃんも問題なく
次は水。猫ちゃん君はウォーターカッター使ってた。うんうん、これはちょっと難易度高めかも。もしかして水得意なのかな?私と一緒だ。
じゃあ、私もっと。水は精霊の力もあるし、抑えつつやらないとな。
「きゃあっ!?」
無事に私が的に魔法を当てた後、ことちゃんの悲鳴が聞こえた。どうしたのかと思って振り返ると、とんでもない大きさの水球がことちゃんの体を包んでいた。
えー、あれなに?魔法使うの慣れてないから、暴走しちゃったのかな?
「ねー、ちょっと……」
ツンツンと水球を指先でつついてみたが、全く破れる気配がない。
あれ、おかしいぞ。結構魔力が流れてるはずなのに、破れないなんて。どんな濃度してるんだ。
「ことちゃん、大丈夫?息出来る?」
「だっ、大丈夫、だけどっ!……どうすればっ、いいのぉ!?」
あら、結構パニクってる。落ち着いて貰わないと、対処のしようがなくなっちゃう。
「猫ちゃん君、この子宥めといて!」
「はあ!?ちょっ、お前どこ行くんだよ!」
「オゥんとこ!待ってて」
少し戻って、オゥのところに行く。
「オゥーーー!!!こっちきてー!」
「叫ぶなよ、リア。何かあったんだろ、あれリアかと思ったんだが」
「んな訳、ちゃんと判別してよ。ことちゃんが魔力暴走させちゃったみたいでさ、なんとかして欲しいんだけど」
呆れたような顔のオゥに自分でやれ、とか言われたけど、私がやると目立っちゃうじゃん。そう言ってなんとか説得して、一緒にことちゃんのところへ向かう。
「ふたりともー、無事?」
なんとかパニックからは抜けたみたいだけど、まだ依然として水球は浮かんでいる。猫ちゃん君が結構頑張ってくれたみたい。ありがたい。
「よーしオゥ、任せた!」
ぐっと親指を立てて応援すると、はぁとため息をついてはいたがやってくれた。
水球に躊躇いなく手を突っ込んで、ことちゃんに触れる。軽く身を引きかけたことちゃんを抑えて、しばらくすると水球が静かに消えた。
「おー、流石。ありがとう、オゥ。今度なんか奢るわ」
「んの前にお前は報告書」
「……はい」
エデルに押し付けよう。私は他にも仕事があるんだ。とは言ってもエデルがこれ見てたかなぁ。
「とりあえず、そこで休んでて」
ことちゃんに端の方に行ってもらって、ずっと見てるだけだった教師に「休ませるね」と言った。見てるなら分かるでしょ、とも言って、私もことちゃんについていった。
「あ、猫ちゃん君お疲れ。もうテスト戻っていいよ。このお礼は後できちんとするからね」
ヒラヒラと手を振って、ことちゃんの隣に座る。大変だったね、と頭を撫でれば、うんと泣きそうな声が返ってきた。魔力の暴走っていいことないしね。辛い思いさせちゃったかな。
後できちんと魔力の扱い方を教えて、こんなことが起こらないようにしないと。あ、そうだ。精霊診断もしようっと。月夜ちゃんも巻き込んで。
「……リアさん」
「んー?なに?」
「リアさんは、どうして魔法使うときに杖が無いの?なのになんで魔法が使えるの?」
顔を上げて、鼻を啜りながら聞いてくることちゃんにちょっとドキッとする。バレてら。いや、ことちゃんは素で魔法使ってるところ見てるのか。
うーん、どう説明すれば良いんだろう。私は天才だから~とか言ってもあれだしな。
「うーんとね、種族的に使える、かな。私人間じゃないから」
とりあえずそれで納得してもらうしか無い。いや、理由はその他の要因が強いんだけど。主に私が魔女であることとか。正直人外であることよりも魔女なことの方が騒ぎにはなるからしょうがない。
人外って言っても多岐に渡るから珍しいものでもない限りそんなに目立ちもしない。猫ちゃん君だって獣人だし。
「えっ、リアさんって人間じゃないの?」
「そうだよー。人間なんて、あんなことそうそう出来ることじゃ無いでしょー」
ね?と笑って見せる。知らなかった、と目をぱちくりさせることちゃんにもう一度微笑んで、立ち上がった。
「さて、ことちゃんは休んでてね。私はテストに行かなきゃ」
急に私まで飛ぶのも迷惑だろう。もうすっかり列もなくなってしまったし、早いとこ追い付かなきゃ。




