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実力テスト:魔法 前半

 さて、お昼休憩も終わって次は魔法のテスト。このテストでは、まず魔力の測定をする。その後に各属性の一番基本的な攻撃魔法を使って、威力や持続時間を測る。その次は各属性の一番基本的な防御魔法、その次に付与魔法。最後に再生魔法の試験だ。

 測る属性の順番は火→水→金→土→風→氷→雷だそうだ。なんで水と氷分けたんだろう。氷入れるくらいだったら星とか入れたらいいのに。


 試験会場に向かう道すがらぶつぶつ文句を言っていたが、会場である訓練所に着いた途端に文句が消えた。というより、衝撃でふっとんだ。

 なんせ、試験監督枠でいたのが半分近く顔見知り。魔法協会の面々だ。五位(フュンフ)のオゥ、八位(アハト)のスキッツ、そしてヌル。

 試験監督八人に対してなんでこんなにいるわけ?革命者(ことちゃん)か?それとも私?ていうかスキッツ連れてくるんだったらプリシラもセットで来て欲しかったなぁ。なんで全員男なの。


 はあ、とため息を吐いても仕方がない。取り敢えず、午前と同じように並んどくか。

 ノロノロと移動していると、ヌルと目が合った。少し目を細めただけだったが、明らかに楽しんでいる事が伝わってくる。こいつ、人を驚かせて悦に浸りやがって。

 文句を言ってやろうと思ったけど、他の生徒とか教職員の目があるしな、と我慢する他なかった。見てろよ、次の定例会議でゴリゴリに詰めてやっからな。


「皆さん、お静かに!これより、国立魔法協会の方々にこれからの試験のご説明をして頂きます!心して聞くように!」


 説明っていっても、そんな話すことなくない?どうせそれぞれの場所で詳しい説明とかあるんでしょ。あんまり聞かなくてもいいかも。……でも、話聞いてないとすぐオゥにバレるんだよね。やっぱり、ちゃんと聞いとこっと。


「これより、試験の概要の説明を始める」


 まず最初に話し出したのはヌル。魔法協会の方々にって先生は言ってたし、きっと持ち回りで説明するんだろう。


「一番最初は魔力の量、質の測定を行う。先に量、後に質だ。この辺りは、試験というよりただの検査だ。結果が良くなくても気にする事はない」


 うんうん、そうだよね。魔力量を増やす方法も、魔力の質を高める方法も存在している。それも安全で効果てきめんのやつ。今の子は学校でこんなことが学べて良いね。ほんの一部だけだとしても。


「その次は、攻撃魔法の試験だ。七つの属性の基本的な攻撃魔法を的に放つ。使う魔法は、試験をする時になったら説明しよう」


 あら、本番まで何やるかわかんない訳ね。月夜ちゃんに聞いとけば良かったな。何やるか知りたい。ことちゃんが習ってる奴だと良いけど。

 多分、ここに来る人はある程度学んではいる人なんだろうから、基本は出来ていると思われているんだろう。なんせ入学試験でも魔法の試験はあったからね。


「そして、その次には防御魔法の試験を行う。これも攻撃魔法の試験と同じく、使う魔法は開始直前に指定する」


 今度はオゥが話し出した。防御って基本的なのは少ないし、かなり範囲が絞られる。あんまり防御魔法って使わないから、上手くできるか心配だなぁ。


「それが終われば次は付与魔法だ。こちらが魔法を付与するものは指定する。それに何かしらの魔法式付与が出来れば合格だ」


 付与魔法はそんなに指定がないみたい。助かった、普段魔法とか普段使わないから、一個でも成功させられればOKなのありがたい。


「最後に、再生魔法の試験を行います。この試験では、こちらで用意してある物体に再生魔法を掛ける事が出来れば合格となります」


 最後はスキッツ。再生させることが目的なんじゃなくて、あくまでも再生魔法の魔法式を付与することが目的なんだ。


「ねぇ、リアさん。再生魔法ってどんなものなの?」


 後ろに並ぶことちゃんから質問が。これはちょっと簡潔に説明するのは難しいぞ、と思っていたら、思わぬところから答えが来た。


「いい疑問ですね、そこのお嬢さん!手短に説明しますと、再生魔法とは究極の複製魔法です。元の物体の完全体のコピーを不完全な物から取り出し、それを重ね合わせることで不完全の穴を埋め、完全な状態に持っていくことが再生魔法と言う訳です。ご理解頂けましたか?」


 ニコニコと饒舌に話し出したスキッツに、ことちゃんは若干引き気味で頷いていた。しょうがない。あれでも今回はマシな方なんだ、あいつは。普段はもっとアレな言動が目立つ奴だから。許してやって、ほんとに。


「あの人耳良すぎじゃない……?」


 後ろからポソッと独り言が聞こえた。うん、わかるよ。私でも引くもん、あの地獄耳。流石スキッツ、流石夢に夢見る機械人形(オートマタ)。でも、説明に言葉を探す手間が省けて良かった。


「えー、では続きを。残念ながら、二つ以上の試験で不合格となってしまった方。その方には、補修を行って貰います」


 あー、ことちゃん大丈夫かなぁ。正直、付与魔法と再生魔法が危うい気がする。お城の方で何やってるか知らないから推測だけど。それとも、革命者パワーで何とかなっちゃう系かもしれない。そっちはそっちでありがたい。

 初めて魔法使った時、魔力を掴むのも早かった。コントロール出来なかったとはいえ、すぐにイメージを具現化して魔法に落とし込めた。ことちゃん、結構才能あると思う。革命者がみんなこうなのかは知らないから、断定できないけど。


「補修の内容としては……あぁ、言ってはいけませんでした。皆さん、それぞれ練習時間を設けますから、補修を受けずに済むように頑張って下さいね」


 最後まで胡散臭い笑みを浮かべたまま、スキッツは話を終えた。うーん、誰がどこに着くか分かんないから、ちょっと不安だな。


「リア、移動だぞ」

「はーい」


 エデルに促されて最初の試験へ進む。試験とはいうものの、魔力無しでもなければ不合格は無いからそこだけは安心出来るポイント。けど、私の魔力に魔力測定器が耐えられるかな?


「リア、あれ」


 コソッと小声で声を掛けてきたエデルが指差す方向を見れば、魔力測定器があった。最新型のやつ。(みこと)が開発に携わったとか言ってたな。その時に、「リアの魔力でも測れるよ!」とか自信満々に言ってたっけ。なら大丈夫か。


「ここは番号順で行きますが、その後は各自好きな所へ行って下さい」


 お、やっぱり番号順。だったら、私の番が来る頃には殆どの人が通過しているはず。ちょっと認識阻害とかかけてもバレないかな?……生徒にバレなくても教師にバレるか。せめて事情を知ってる協会員であってくれ。


 その願いが通じたのか、試験監督として入ったのがオゥだった。やったー、ラッキー。オゥに目配せをして、何とか私の意思を汲み取って貰おう。拝むポーズもついでにやっておく。伝わったみたいで、こっそりと親指を立ててくれた。よし。

 後でなんか要求されそうで怖いけど、甘んじて受け入れようじゃないの。


「それでは、試験を開始する」


 そのヌルの言葉と共に、実力テストは開始された。

 正直、自分の番が来るまでドキドキして他人のを見る余裕なんてなかった。うわー、壊しちゃったらどうしよう。命を疑ってる訳じゃないけど、私も私で本当に洒落にならない量の魔力あるから。


「次!」


 オゥの声にはっと我に返ると、もう私の番だった。え、早すぎない?それだけ緊張してたってこと?私が?うわー、我ながらキャラじゃねー。


 魔力量の計測の仕方は単純だ。計測器に触れる。ただそれだけ。さっさと終わらせちゃおうと思って計測器に触ろうとしたが、止められた。


()()、外せるか?」


 どうやら、着けていた指輪が引っ掛かったらしい。うーん、まあ、指輪なしでもここはいけるか。短時間で済むだろうしね。

 両手で計五個つけている指輪を全て外し、ついでにネックレスと太ももにつけていた飾りも、耳飾りも全て外した。

 オゥの視線が「それ普段から全部着けてるのか」と言わんばかりだったが無視。なにもない時こそつけてないといけないっての。


 これで全部外した。安心して測れる。計測器に触れると、ついている水晶の色がだんだん変わっていった。

 無色透明だったのが青、緑、黄色、橙、赤、白、そして紫に。紫から動かなくなったから、私の魔力量は紫レベル(一番上)ってことだ。

 へーすごい、ほんとに耐えたー、なんて思いながら計測器を見ていたけど、ふとオゥを見てみたらなんかすごい顔してた。なんだ、別に想定内だろう。


「どうしたの?」

「……いいか、リア。次の質を測る試験では、絶対に自動濾過はするな」

「えー、ちょっと難しくない?あれ無意識だから」

「意識して止めろ、以上だ」


 そんな無茶な。いくら私が天才だからって、無意識の制御なんて自信ないよ。オゥはこういうの得意だろうけどさ。

 まぁ、頑張るけどさ。次の人は私を知らない人だろうから。下手に大騒ぎさせるわけにもいかない。


 次の試験も似たようなもの。観察器に魔力を入れて、それから属性を分離して魔力の本質を見る。魔力の『質』は、純度が高いか低いかだけじゃない。その魔力の性質、本質を見極めることこそ、このような試験を行う理由だろう。


「リアさん、後ろつまってるよ。大丈夫?わたしが先に行った方がいい?」

「……ことちゃん。ことちゃんは、魔力の質ってなんのことか分かる?」

「え、魔力の質?なんか、高いといいやつでしょ?」

「おっけー、後でまた教えてあげるね」


 うん、なんか満足。さて、頑張って質落としますか。


「魔力量測定が終わった方は、こちらへどうぞー」


 今度は、魔力を注ぐ必要がある。ほんのちょーっとだけ魔力を注ぎ込んで、結果を待つ。これも最新型のやつだった。命のやつ。こりゃ結構制度高いぞ。

 あ、そういえば魔力の質落とすの忘れてた。まあいいか、先生に口止めしとこ。いや、別に質くらい、ねぇ。魔力量紫よりかは質紫の方がいたりするし。


「終わりました。結果は紙で出てきますので、そこのを取っていって下さい」


 指された場所から紙を一枚取る。結果は、魔力の質は紫、性質は白。良かった、きちんと結果が出てる。

 結果の紙を見てほっとしていると、肩をポンと叩かれた。


「どうだった」

「ん」


 オゥに見せると、今回は予想していたのか特に反応はなかった。


「やっぱりお前、なんか特殊な性質持ってそうなのに白なんだな」

「そりゃそうだ。じゃなきゃ魔力の譲渡なんて出来ない」


 白の魔力は、魔力を持つ人の中で一番多い性質だ。特に何にも特徴がなく、どんな魔法にも対応可能。だけど、あんまり飛び抜けたところまでいけないのが白。

 他の色は青が水、緑が風、黄色が金、橙が土、赤が火、紫が雷。それぞれに特化している。


「てかなに、もうD組全員終わったの?」

「終わったからここにいるんだろ」

「おしゃべりしに来た訳じゃないでしょ」

「それはそうだ。試験終わった後時間あるか?」

「あるけど、なに」

「なら、あの月童と革命者と王子様引っ張ってこい。場所はこっちで指定する」


 なんだなんだ、ちょっと不穏な空気になってきた。オゥから直々に呼び出されるのちょっと怖いんですけど。

 別に断る理由もないから頷くと、「さっさと次の試験に行け」と押された。酷い。ことちゃんも次のところ進んでるし、私もいかなきゃなんないか。


 じゃーね、と手を振ってオゥと別れる。次は攻撃魔法の試験だ。なんか、ほとんど基本の魔法なんて使うことないから逆に新鮮かも。


 ちょっとワクワクしながら列に並ぶ。待機中に、外した魔道具類を全部つけていく。これが大変だから外したくなかったのに。


 結構あっという間に私の番が回ってきた。担当の教員から説明がある。

 火で使うのは『ファイア』、水は『ウォーター』、金は『メタル』、土は『アース』、風は『ウィンド』、氷は『アイス』、雷は『サンダー』系列の魔法だって。攻撃も防御も付与も。ある程度自由にはさせてくれるんだ。


 えー、なんにしよう。結構幅あるんだよね。式が組み込まれてるっていう解釈でいいならほとんど使えるし。これ単体のみが使われてる式だったら結構幅が狭まる。多分後者。前者だったら先生が大変そう。


「それと、試験の最初には使う魔法を言うように」


 あら、どうしよう。魔法の名前なんてあんまり知らないんだけど。どんどん名前が変わってくから、覚えるの諦めちゃったんだよね。えー、適当に言って誤魔化せるかな?


 まあいいや、どうせ後の方だろうし。前の人たちのを参考にしよう。

 的として用意されているのは、ウサギのぬいぐるみ?のようなもの。今回は特別に用意したものを使うとかなんとか言っていたから、ただのぬいぐるみじゃないことは明白だ。


「あんなかわいいぬいぐるみに魔法を当てるの?」


 ことちゃんの声が聞こえた。私が最後かと思ってたら後ろにことちゃんいたんだ。大丈夫だよ、と言おうとしたら、私の前に並んでいた子が振り返って口を開いた。


「おい、そこの奴ら、さっきからうるさいぞ!静かに待っていることすら出来ないのか?」


 お前のがうるさいよ、と思ったが言わないでおいた。その子は猫っぽい耳と尻尾の獣人の男の子だった。きちんと手入れされていて、きれいにつやつやふわふわで撫でたくなる。


「わっ、ごめんなさい!」

「急になに、失礼なんだけど。てか、誰?」


 ことちゃんはすぐに謝っていたけど、私は謝る気になれないから突っかかっておいた。急にキレてきて、なんなのこいつ。


「俺はF組の六番、空継晴渡。お前らはどうせ平民なんだろ?」


 うーん、春とこの人ってことしかわからん。


「そっか」


 まあ、名前がわかったから良しとしよう。なんの魔法にしようかな。他の魔法は正直問題ないんだけど、火の魔法だけは苦手なんだよね。普段は火の上位魔法、炎魔法でなんとかしてるからばれてはないと思うんだけど。

 あんまり小さな火を扱うのは苦手。なんで水とか風は出来るのに火だけ出来ないんだろう?不思議だ。


「おい、聞いているのか!?」


 さっきの猫ちゃん君が怒鳴ってきた。やっぱり、うるさいのはそっちだ。私は言われた通り静かにしてるだけなのに、なんで怒鳴ってくるんだろう。


「ねえ、うるさい」

「お前が人を無視するからだろうが!……よっぽど、魔法の腕に自信があるようだな」

「え?うん」


 そりゃあるよ。だって私、魔法協会の一位(アインス)だもん。協会の二番手だよ。魔法がとっても上手で、知識もなきゃこの位には就けない。ほとんど名前だけみたいなもんだけどね。


「なら、勝負だ!」


 猫ちゃん君は、私にピッと指を突きつけて言った。ことちゃんを振り返ると、少し苛立った表情をしていた。あれ、ことちゃん怒ってる?


「いいよ、やってやろうじゃない!リアさん、頑張ろうね!」


 えー、私やるなんて言ってないんだけど。ここでこんなこと言ったら変に捻れそうだし止めとくか。しょうがない、こんなガキの鼻っ柱へし折るのは趣味じゃないんだけどな。

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