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どうしてこうなった

「だっ、誰か!助けてくださいぃぃぃ!!」

「リア、これ、どうすれば良い!?」


 私は、確かにひとりで依頼を片付けようと朝早くから()()()()寮を出た筈だ。それなのに、今この場にはなぜかいる筈の無い顔がそろっている。何でだ。結構王都から離れてるぞ。どうやって来た。エデルか。


 川の中で蛇が跳ねる。その拍子に、軽く水面から露出した鱗がキラリと太陽の光を反射した。大人しければ、すごく綺麗なんだけど、生憎こいつは凶暴だ。すごく。そんなのが複数。何でだ。依頼には出現は一匹だって書いてあったぞ。まあ、時間が経って増えたのかも。面倒くさい。


 そして、いるわけの無い面々……ことちゃんと月夜ちゃんとエデルはと言えば。

 ことちゃんは陸に打ち上がってビチビチ跳ねる水蛇に怯えて逃げ惑っている。

 月夜ちゃんは意外と肝が座っていて、水中の水蛇に槍を突き刺して私の指示を仰いでいる。

 エデルは、特にノータッチ。多分、女の子達を送り届けただけなんだろう。ならさっさと帰れよ、なんて思うけど。


 そして、私はというと取り敢えず川の水を冷やしにかかっている。こいつら変温動物だし、冷やせば動きも鈍るはず。あと、水蛇の分泌する粘液を固まらせるのにも役立つからね。


「月夜ちゃん、その水蛇引き揚げられる?なるべく早く、無理なら言って」

「……やってみる」


 水が凍る前に、水蛇が月夜ちゃんに集まってくる前に、槍が刺さって血を流している奴を陸に上げないと。

 ぐいぐいと引っ張っているけど、重いのかなかなか揚がって来ない。自分だけの力で引き揚げるのを諦めたのか、途中から強化魔法を使っていた。槍が杖代わりになっているのかな。


「っ、はあ、いけた!」

「よし、じゃ、離れててね」


 月夜ちゃんが十分な距離を取ったのを確認してから、水蛇の頭を思いっきり踏みつけて潰した。ビチビチと暴れているが、そのうち大人しくなるだろう。

 ついた血とか肉とかはちょっと舐めてみたが、あんまり美味しいもんじゃなかった。月夜ちゃんは引いてた。そりゃそうだ。


 もう一匹、打ち揚がってる奴は凍らせて処理した。流石にことちゃんが近くにいるからね、あの方法は粘液飛び散りまくるから駄目だ。


「あっ、ありがとう、リアさん」

「どーいたしまして。んで、何で着いてきたの」

「えっ!?いや、その……」


 モゴモゴと口ごもることちゃん。何だ、言いにくいのかな。別にどんな理由でも良いんだけど。特に怒る気無いし。


「まあいいや、まずはこいつら一掃してからにしよう」


 十分に川の水が冷えたことを確認し、一気に流し込む魔力の量を上げる。そのまま、針のように凍らせた。ついでに電気も流しておく。こうしておけば、一応安心だろう。


「別に魔力の量増やすこと無かったんじゃないか?」

「わかってないなぁ、こうやって刺しても血が出てこないようにしたんだよ」


 息絶えた水蛇を回収しつつ、凍った川の水蛇の死骸に触れていない部分を幾つか折取った。これを解析すれば毒が溶けているかも分かるし、それによって対処も変わる。

 取り敢えず氷は解析装置にぶちこんで、水蛇は全てマジックバックに突っ込んだ。ちなみに、ここには岩蜥蜴が大量に入っている。昨日の成果だ。


 別の依頼もあるからここに居座っている訳にもいかず、歩きながら話を聞くことにした。


「それで?考える時間あげたでしょ。どうして着いてきたの?」


 誰が言い出したのか分からないから、何となくことちゃんに尋ねる。


「えっ、えっと、言い出したのはわたしじゃなくて……」

「というか、誰が言い出したとか無い。きょう、リアが出ていったあとに……」


 月夜ちゃんの話では、私が出ていったあとにエデルとことちゃんが523号室を訪ねて来たらしい。なんの用事だったのかといえば、ルームメイトへの挨拶と部屋の確認だそうだ。何故。

 そして、ことちゃんが私はどこにいるのかと聞いて、それで月夜ちゃんが私はここにいるはずだと言ったら、じゃあ会いに行こう、という話になったらしい。


「いろいろツッコミたいところはあるけどさ。何で月夜ちゃんは私の現在地を知ってたわけ」

「昨日、机に依頼書広げてたでしょ。それ見た」


 まじか。確かに、この水蛇討伐の依頼、一番上に置いてたかも。よく見てるな、なんて感心したのもほんの一瞬。

 そこまで見てるんだったら、この依頼が危険だってわかってるはず。それなのに、何で来たの?

 それを聞くと、月夜ちゃんは首をかしげて


「そんなに危険なの?」


 なんて言っていた。危ないです。少なくとも、一般人には。取り敢えず、あんまり魔獣の類いを舐めてかかっちゃ駄目だよということは伝えておいた。戻ったら危険な魔物リストでも作って渡してやろうかな。


「今は、どこに向かってるんだ?」


 空気を切り替えるようにエデルが言った。他のふたりも気になっていたのか、大人しく話を聞くモードになった。


「今から行くのはあそこの山。そこででかい蜘蛛が暴れてるから倒してこいだって」


 これも数ヶ月前に出された依頼だから、ちょっと心配になってくる。虫系の生命力凄いからなぁ、大繁殖なんてしてたら嫌なんだけど。

 しかも、特徴がでかい、しか無いから種類の判別がつかない。一応、遠くから見たところどこか一部が異常な変化をしてる、なんてことは無さそうだから魔法系では無いと思う。

 せめて色くらい書いてくれれば良かったのに。


「ねえ、ふたりとも虫って」


 平気?と聞く前に女子ふたりの反応で何となく察しがついた。さっきから顔がひきつっていることちゃんは、少なくとも蜘蛛は苦手なんだろう。それに比べて、月夜ちゃんは平気そう。

 ちなみにエデルは虫全般平気で、私は虫全般苦手だ。魔物なら平気なんだけど。


 「い、今から山登りするの?」

 「嫌なら帰れば。私、ひとりでやるつもりでここに来てるの。イレギュラーはお前ら」


 そういったら、ことちゃんはぐっと押し黙ってしまった。ちょっと強めに言ったけど、事実だし。

 それに、今のところ私は置いてく気満々だ。あんまりいられても正直邪魔だし。協調性が無いとはよく言われるけど、プライベートくらい好きにさせて。

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