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岩場にて

寮を出て、そのまま王都の冒険者ギルドの方へ向かう。そういえば、ことちゃんの冒険者登録忘れてたな。まあ、いいか。いつまで、なんて指定無かったし。また今度で。


重い木製のドアを開けて、中に入る。相変わらず人が多くて、ガヤガヤしていて、ちょっと臭い。しょうがないけど、せめてもう少し清潔にしてほしい。

冒険者達はみんなカウンターや掲示板の方にいて、近づきにくい。けど、どちらかに行かなくては依頼を受けることができない。覚悟を決めて冒険者達のなかに飛び込んだ。


「おねーさん!なんか依頼下さい!」

「いらっしゃい。どんな依頼がいいの?薬草採取とか?」


う、絶対見た目でなめられてる。一応ギルドカードをカウンターにおいたが、受付のお姉さんが見てくれたかは謎だ。


「何か討伐系の依頼見せて」

「あら、討伐?なら、これとか……」


それで差し出されたのは簡単な、難易度の低いものだった。ちっちゃい岩蜥蜴とかそういうの。


「もっと強いのがいい。そういうのは初心者さんに譲るよ」

「お嬢ちゃん、変にプライド持ってないで妥協しといた方がいいわよ?……まあ、一応持ってくるけど」


一度奥に引っ込んでいったお姉さんは、次に戻って来たとき大量の依頼書の束を持っていた。

どんとカウンターに置かれたそれは、どうやら高難易度の依頼のようだ。どうやら、あまり受ける人がいなくてたまっていたらしい。

この依頼出した人、大丈夫かなぁ。それだけ強い魔物がいて、自分たちだけじゃ対応できないからギルドに依頼出してるんでしょ?


一枚一枚見ていって、取り敢えず古い依頼から受けた。特に期限は無いけれど、今日明日明後日頑張れば行けると思った物だけを選んで、お姉さんに渡した。


「……本当に出来るの?違約金、支払える?」


訝しげに依頼書を受け取ったお姉さんは、なぜか私が失敗する前提で話している。しかも、戦う前に諦める前提。ちょっとイライラするな、こういう人。嫌いなタイプだ。お姉さんが処理をしたのを確認して、依頼書を受け取り、さっさと出ていく。

次あの人いたら絶対そのカウンター行かない。そう決めて、一番古い依頼を見た。


依頼内容は、成体の岩蜥蜴の皮の採取。なるべく綺麗な状態で、とのことだ。

小さい岩蜥蜴はまだ皮が柔らかくて、皮の需要も高いから初心者にはうってつけの依頼だが、成長してしまうとその名の通り岩のように硬くなってしまう。

しかも岩蜥蜴は急激な変化に弱く、魔法で無理やり倒そうとすれば皮がボロボロになってしまう。そうなると当然価値は下がる。

今回の依頼も綺麗な状態で、なんて書いてあるから大変過ぎて受ける人がいなかったんだと思う。


こいつらが生息しているのはここからほど近い岩場。王都からは少し離れるが、今からなら、常人でも日が沈むまでに行って帰って来れる距離だ。


冒険者ギルドは王都の外れにあって、すぐに王都外に出ることが出来る。大きな黒い鉄門を通って、整備された道を通る。ここら辺はまだ人が多いから、あんまり速く走っちゃうと目立つ。注目されるのはあんまり得意じゃないから、早く行きたいのをぐっとこらえて歩いた。


だんだん人が少なくなってきたタイミングを見計らって、岩場までダッシュ。成人男性か普通に歩いて一時間程度の距離の岩場は、結構全力で走ったお陰で五分程度でついた。


さて、ここからは岩蜥蜴を探さないといけない。性質だけじゃなくて、見た目も岩によく似ているから、見分けが面倒。身の危険を感じなきゃなかなか動かないし。サーチで見つけようとしても魔力が当たっちゃうし、討伐より探す方が個人的には大変。


こういう時に私がよく使うのが、自分の目に魔法をかけて温度を判別できるようにする事。流石に岩蜥蜴にも体温があるから、そこで普通の岩との見分けが出来る。まあ、別に全部の岩壊していってもいいけど。


「おっ」


早速見つけた。どうやらうつ伏せで眠っているようだ。起こさないようにそーっと、その巨体で視界がいっぱいになる距離まで近づいた。

成体の体長はだいたい十メートルほど。この個体もそのくらいだ。

大きめの剣を作り出して、岩蜥蜴に突き立てる。そのまま上に飛び乗って、剣をスライドさせる。


『グギャアアアアァァ!!』


どんなに鈍感な岩蜥蜴でも起きたみたいで、立ち上がり、傷みからか叫び声をあげている。うるさいけど、もう少ししたら静かになると思って我慢。叫び声と同時に暴れだしたが、どんどん刃が深く刺さっていくだけだ。


振り落とされないように力を込めて、頭まで両断する。しかし、いくらなんでも刃は貫通しておらず、もう一度刃を突き立てた。


生命力がすさまじく、まだ悲鳴をあげて暴れ続けている。今回は頭だけでいいや、と頭を集中的に斬りつけた。そのうち、叫び声が聞こえなくなる。急に声も、暴れるのも止まったせいで少しバランスを崩してしまった。


「あっ、やば」


このままだと剣折れる!慌てて剣から手を離し、どんどん地面に近づく体を風を使って持ち直し、倒れてくる巨体から剣を回収。ドオンと大きな音を立てて倒れ混む岩蜥蜴から皮を引き剥がそうと、露出した肉の部分から刃を差し込みかけたところで。


「……あー……」


近くから複数の岩音が聞こえる。どうやら、さっきの衝撃で同じように眠っていた岩蜥蜴が目を覚ましたらしい。近づいてきている。


このままだと他にここ来る人が危ないかなぁ。


「しょうがない、これも何かの縁だと思おう」


剣を引き抜いて、地面を蹴る。揺れる眼前には、沢山の()がひしめいていた。

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