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星の屑から  作者: えすてい
第二章 秘密の魔法学院
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最終節 バックコーラス

 

 スピーカーから発した耳障りなノイズが響く。

 断続的に鳴った雑音の波が引くと、しばらく無音になった。

 窓から聞こえる猛吹雪の音が際立つ。風が部屋の中に入らんと窓を強く叩いた。

 机に置いた手のひらは、持って余した暇を貪欲に消費する。人差し指で机を叩いて単調なリズムをとっていた。

 定刻までもうすぐだ。

 待ちきれない報告と、不思議な周波で鳴る機械音に心を弾ませる。

 少しすると、スピーカーから再びノイズが走った。

 今度は雑音に混ざって誰かの息遣いが聞こえる。

 机を叩く指を止めて、耳を傾けた。

 激しい雨のような音の隙間に、人の気配を感じられた。

 待ちに待った言葉を聞くために神経を研ぎ澄ます。

 ノイズと共に聞こえてきた声はこう告げた。

「計画……り…ヤミレスを抜けた………次は……お前……番だ……」

 間を空けた直後に吹雪が止んだ。

 一瞬の静寂の後にスピーカーから声が発せられる。

「魔王様よ……」

 気が付くと通信は途切れてしまい、雑音は消え失せた。

 部屋の中に再び吹雪の叫びが反響する。吹き付ける風の勢いに窓は音を鳴らす。仄暗い室内に備えられた灯りは、隙間風に身を揺らした。

 蝋が底を尽き、最後の火が消える。

 灯りのなくなった空間は、重たい闇が支配していた。

 先ほどまでそこにいた人物の姿はどこにもない。

 わずかな温もりだけ残された部屋の中には、冷たい機械と机だけがその場に鎮座していた。


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Xにて投稿のお知らせ。 きままに日常も呟きます。 https://x.com/Estee66gg?t=z3pR6ScsKD42a--7FXgJUA&s=09
― 新着の感想 ―
 ここまで読んで思ったことは、自分より圧倒的に情報描写が上手くて作品内の空気感がこちらまで伝わってきて表現方法が達者だなと思いました。  続きも読んできます。
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