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星の屑から  作者: えすてい
第2章 秘密の魔法学院

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「秘密の魔法学院」

 

 歓声が湧き上がった。

 円形の建物の外枠には、埋め尽くすほどの観客がひしめき合う。大空が広く見渡せるこの建物の中心に、円を描いた平坦な地面が敷かれている。

 僕は固唾を呑み込んだ。

 中央で臨む二人の魔法使いを見つめる。

 一人は長い金髪を青いバレッタで留め、白いローブをはためかせている少女。頂上に輪を連ねた錫杖を構えて、毅然と立ち向かう姿はまるで絵画のようだ。

 もう一人は水色の髪で黒いマントを肩から羽織る。端正な顔立ちと、正面を見据えて堂々と立つ姿が凛々しい。手に持った杖は歪な形で、結晶からくり抜いたような質感だ。透明感のある杖は、光を反射し輝いて見える。

 輪を伴う錫杖に風の塊が集まると、空気を歪ませる。歪な杖の周りには、氷の粒が浮き上がり、輝きを強める。

 二人の少女は睨み合い、もう一度魔法を打ち出した。轟音が響き渡る。その激しい衝突に、歓声はさらに盛り上がった。

 覆うような魔法の軌跡が場内に漂う中、僕は見た。

 二人の青い瞳が、眩しく交差したのを。




 ■■◇■■




 ダルク歴275年

 魔王国ローザイとの停戦協定が結ばれ数年が経つ。

 各国は自国の傷を癒そうと必死だった。

 連合国に加盟した全ての国々は、数多くの自国民を徴兵していたためにその帰還に喜んだ。だが、大量の物資の投入や軍資金の支出で、必需品不足や経済的な困窮が相次いでいた。

 大戦によって得られたものは少ないばかりか、徴兵から帰ってくる兵士たちも無事ではなかった。

 加えて、各地の魔物の脅威は依然として増え続け、小さな村や国が大戦後にいくつも消え去った。次はいつ、自分の村や街が襲われるか分からない。そんな状態が続いていた。

 魔物や魔王に対する恐怖や抑圧から、土地や国民が疲れ果て、果ては暴徒と化してしまう事例も少なくなかった。

 ある時、そんな絶望的な状況下で、魔王討伐の御旗を掲げた戦士たちが現れ始めた。戦争で名を馳せた果敢な軍人や、世代を経た勇猛な若者が、北の大地に住まう魔王の討伐に身を乗り出したのだ。

 各国は疲弊した国民を鼓舞すべく、激励を送って彼らを見送り希望を託した。勇者と呼ばれた者たちの行動は新たな光となって、多くの伝説を残し人々の絶望を払った。

 だが、その務めを果たせた者は誰一人としていなかった。

 勇者たちの多くは、険しい北の大地へ渡るやいなや、消息を絶ち、彼らの武勇伝を聞くことはほとんどなくなった。

 中には生きて帰った者もいるが、彼らは口を揃えてこう言う。

『魔王に魅入られた者は決して戻ることはない。彼らは希望を失い、そして死を受けいれた』

 名乗りあげた者たちの非業な末路。人々が渇望した分だけ、しわ寄せのように絶望が返ってきた。

 連合国でさえ打ち払えなかった魔王国軍を、勇敢さだけの戦士たちに征伐することなどできはしないのだ。

 勇者たちの活躍は魔王の存在証明としてしか機能しなかった。世界は再び混沌に包まれる。魔物蔓延る悪夢の中に、人々は怯えた。

 しかし同時期に、ある異変が起こった。

 新たなる力の芽生え。それは、勇者たちの中にあった。

 歴史書に初出されたその力。

『衰退せる数多国々の中より、超常を遥かに上回る力を得し者打ち出づ。自然操り、人操り、生や死さえ己の業のごとく扱う彼らを、"神の御言の葉"と呼ぶ』

 各地に降り注いだ異能の持ち主たち。

 そしてそれは、大勇者伝説の始まりでもあった。


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