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5.極彩鳥を狩ってみよう


そして、私たちの新婚生活(期間限定)が始まった。

お母さんに泊まる許可と励ましと応援をもらい、荷物をまとめてリロイの家に行くと、リロイ達はもう出かけていておばさんが暖かく迎えてくれた。

お義母さんって呼んでいいですか?

オッケー?やった!

空き部屋はヘルバンが泊まってるから、私はお義母さんと一緒でいいか聞かれたけど、もちろんです。

むしろ、お義母さんこそ覚悟はいい?リロイのお話いっぱい聞いちゃうよ。

やったー!楽しみ!


その日は荷物を片付けて簡単な狩りをしてきた。

狩りの成果はお母さんの分を渡して、後はリロイのお義母さんに渡す。自分の食い扶持ぐらい渡さなきゃハンターじゃないからね。

それからお義母さんと料理をして、帰ってきたリロイを「おかえり」と出迎える。

新婚夫婦っぽくない?いや、新婚夫婦でしょ。

ちょっと旦那様が素っ気ないけど、私が幸せだから良し!

その後は至福の連続。

ラッキースケベは無かったけど、湯上がりのほかほかつるつるのリロイが見れた。濡れた髪の毛やばい。色っぽい。好き。

髪の毛を拭いてあげたり、明日の予定を聞いたり、寝る前に「おやすみ」まで言ってもらえた。

マジで新婚夫婦。

これで、寝室も一緒だったらなぁ。

なんて本音が溢れたら「ダメだからなっ」と即座に否定された。

ちょっと悲しい。



そうして、リロイの家に住んで三日目。

今日はピナとレイガとナタクの四人で極彩鳥を狩る予定。

この鳥、雄は色鮮やかな羽を持ち、角度で色が変わる長い尾羽を持つ不思議な鳥。これで小さければペットとして需要もあるんだろうが、生憎と体長が二メートル近くある。しかも飛ぶ。

ちなみに雌は一メートルぐらいで緑や茶色の保護色をしているが、こちらも美しい羽を持っている。

高値でも売れるけど、この辺じゃ花嫁衣装に使うんだよね。

そう、今回のハントはピナの花嫁衣装の材料採取なの。結婚するんだってさ、ピナとレイガ。


ふーんだ、いいもん。私だってリロイと新婚生活(期間限定)してるんだから。

心は新妻だよ。早く肩書きもそうなりたい。

いつでも結婚できるように準備だけでもしておこうと思って、狩りの手伝いをしてるのよ。ピナが優先だけど、私も欲しい。

まぁ正直、今回は鳥だし、レイガやナタクは要らないんだけどね。荷物持ちはいるでしょ?

ナタクは弓が上手いからいいけど、レイガは力押しだから、下手したら羽を使い物にならなくしそうなんだもん。注意しておかなきゃ。



一番楽なのは巣を見つけて、落ちた羽を集める事なんだけど、落ちてるやつって大抵汚れてたり折れてたりするから余り使えない。

狩るのが手っ取り早いんだけど、飛んでるところを弓で撃ち落とすか巣を襲撃するかの二択かな。

どちらにせよ、見つけるのが先なんだけどね。

木に登って周囲を見回す。羽が落ちてたから、この辺りが縄張りなんだろうけど、影も形も見えない。


「見当たらないね」


木から下りて告げる。

落ちていた羽も古かったので、場所を移動する事にした。


「ありがと」


移動中にピナがいきなりお礼を言うので首を傾げる。まだ何も狩ってないよ?


「まさか、ユーリーが手伝ってくれるなんて思わなかった」

「なんでよ?」

「だって、酷い態度とってたでしょ。嫌われてると思ったから」

「別に。好きでも嫌いでもないよ。私も羽が欲しかったから、ちょうど良かったのよ」

「え!?リロイと結婚するの!?」

「はあ!?」


ちょっ、いきなりなんて事言うのよ。

そんな嬉しい事。

実際、新婚生活(期間限定)してるけど。もう気分は新妻だけども。まだお嫁さんじゃないのよ。

リロイの為に花嫁衣装を着たいので、準備だけでもしておくの。

料理もかりも下準備って大事でしょ。


「その予定だから、準備だけしておくの」

「ユーリーって変わってるよね。リロイって、尾白鹿にぶつかるだけで死にそうじゃない?」

「そんな事ないわよ。……たぶん」


尾白鹿は小型の角が短い鹿で、上手くやれば成人前の女でも狩れる。

でも、リロイだと死ぬ事はなくても無傷ではいかないかも。小型の瓜坊に突進されて転がされてた過去もあるから、なんとも言えない。


「まぁ、あの体格じゃ力仕事は無理でしょ。昔は男女とか言われてたけど、成長してもあの体型じゃない?私達にさえ負けるわよ」


否定はできない。

多分、私の方が強いと思うんだよね。力では。

でも、力が全てではないじゃない?頭のいい人ってカッコいいと思うんだけど、うちの村じゃ理解できないだろうなぁ。


「リロイはあのままで十分素敵だからいいの」


ピナは理解できないとばかりに首をすくめる。

その首、絞めてやろうか。

あの魅力が分からないなんて可哀想に。


「まぁ、お互いが好きあってるならいいんじゃない?軟弱でも、もしかしたらアッチは上手いかもしれないし」


そういうの関係なく、リロイがいいんです。

ピナなりの応援に笑って応えたが、小さな疑問が残った。


そう言えば、私、リロイに「好き」って言われたことない。


あれ。これ、やばくない?

私、嫌われてない…よね。嫌われてはないと思うけど、好かれてる?それって、友情?愛情?


「いたぞ」


一気に怖い考えに落ちそうになった私の耳にナタクの緊迫した声が聞こえた。

彼が指し示す先に、雄の極彩鳥が小動物を捕食していた。鳥のくせに肉食とかエグいなぁ。

小声で動きを確認する。

ピナとナタクが弓を放ったら、レイガが足を狙い、私は首を狙う。

合図と共に放たれた矢は一本は胴体に刺さり、もう一本は外れた。すかさずレイガが大剣を横に薙ぎ、私が飛び上がって片手剣を振り下ろした。

重力を借りた一撃で首を切断する。ほぼ同時にレイガが足を切り落としていた。根本の太い部分を二本まとめて切るなんて、本当に筋肉マッチョなんだから。


「やった。頭の冠ゲット♪」


金粉が付いた頭部の冠は、大人の雄しか無いし、縄張り争いで損傷する事が多いから結構レアなんだよね。

落ちた頭から冠部分を根本から切り取り、近付いてきたピナに差し出す。


「ほら。自分で持ちなよ」

「いいの?ユーリーもいるんでしょ」

「その時はまた狩るわよ。せっかくなんだから使いなさいよ」


なんて言ったって、私は一足先に新婚生活満喫してるからね。慌てないもん。

それに、今年はもう間に合わないし。


「ありがとう」


差し出した冠をおすおずと受け取ると、ピナはなんだかちょっと可愛く見えた。

ちょっとだけね。

その後、イチャつくレイガとピナに多少イラッとしながら解体を済ませて、私は極彩鳥の羽と肉を手に入れた。


お読みくださりありがとうございます。


次話は本日18時です。

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