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⑩301号室

[入室00分]

カスタネットを隠れて練習したいと思って、この防音室に来たけれど、ここの防音室は、絶対に音が漏れてないだろうな、と思えるような、綺麗な作り方をしていて、感心した。


[入室10分]

カスタネット練習は、河原では恥ずかしさとかいろいろあって、できないし、家でも隣人の耳とかが気になったり、家の雰囲気と重なったときの空しさみたいなものが、ドッと滲んできたりして、駄目だから、ここがあってよかった。


[入室20分]

誰にも見られない場所では、ここがベストだと思っていて、カスタネットというのは、誰でも出来るとか、練習しなくてもいいでしょとか、思う人もいるくらいの、華やかさや派手さのない、メジャーな楽器だから、仕方がない。


[入室30分]

音が漏れず、恥ずかしくないということが、上達において、もっとも重要なことだと思うので、今、真剣に練習しているが、かなりいい感じに、すごく気分もよく、練習できていると、そう思っている。


[入室40分]

尿意を感じたのでトイレに行くと、防音に慣れた耳は、賑やかさを敏感に感じていて、数秒たてば、もう普通の耳に戻っていて、トイレと自分の防音室の間くらいで、なんかカスタネット片手の人を見かけて、ワッとなった。


[入室50分]

この世は狭いのかと感じたり、カスタネット演奏家がこの街に、ふたりもいるのだろうか、と不思議な気持ちになったりと、感情はやや忙しく感じるまでになっていて、いつもと違う感じで、なんか良かった。


[入室60分]

素人には出来ない、速すぎるカスタネット演奏や、独特で、世界に出来る人が一人しかいない、そんな技を成功させたりと、色々と収穫を得たとき、時間になり、カスタネットを隠さず、手にもって部屋を出た。

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