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 それから物語の序盤は割とスムーズに進んだ。今の所出会った攻略対象は三人。他に隠しキャラクターがいるかもしれないが、なんの知識もないつづらに知るすべはない。


 ゲーム内五日目の夜。自室。


「これで約一時間かぁ。えっと今の所……セシルと個別イベントっぽいのが三回と顕景あきかげの方は二回……たぶん正解行動はとっていると……思う」


 ウィンドウを出す。

 

『各人の好感度等のメーター及びイベントCGは二周目以降に閲覧開放となります』


「これだもんなぁ……とりあえずサクサクっと一周目クリアしなきゃだね。割とハマってきたし!未だにゲームの全容が見えないのが心配だけど……」


 ふと、維玖桜いくさを思い出した。


「先生とはあんまり友好的ではないんだよねぇ……何か苦手……まっ、このままイベント避けてたらルートから外れるだけだよね!よしっ寝よう!」


 ベットに横になる。一日の終わりだ。いつもならこのまま暗転するはずなのだが……。


『志摩延 維玖桜 のヤミメーターがMAXです。ビーストが発生します。明日はHIDE AND SEEKモードに移行します』


(えっ!?何それ!)


 そして世界は暗転した。


 翌日。いつも通りに三人で登校する。三人でわちゃわちゃ会話をしながら歩くのは楽しい。楽しいのだが……。


(HIDE AND SEEKモードってなんぞや?訳すとかくれんぼってことだよね?……あぁ……美少女達とエチチチかくれんぼしたかったなぁ)


 そうこうしているうちに気がつけば教室だ。


「おはよー」

 

 維玖桜が気だるげに教室入ってきた。


(あれ?目のハイライトが戻っている!どういうこと?)


 いつもなら未練ありげにこちらを見てくる視線もなく、目があった瞬間に驚くほど爽やかに微笑まれた。


(逆にっ怖い!)


 すると……。

 教室の照明がいきなり落ちた。というかゲーム内の明るさのすべてが落ちた感じだ。ふと周りを見れば、教室内にいた生徒が消えており、今教室に居るのは葛と維玖桜のみ。


『HIDE AND SEEKの始まりです。今回の鬼は志摩延 維玖桜ビースト。制限時間は五分。今から一分以内に学校内の何処かへ隠れてください。反撃はできません。見つかれば「君を殺して僕も死ぬ」が発動し、命を落とします』


「は?」


『それでは頑張って隠れてください。よーいSTART!』


「ちょっ……え?かくれるの?」

「いーち。にーい。さーん……」


 声のした方を見れば、俯いた維玖桜が重い声で数を数えている。当たり前だが一分は六十秒。


「ははっ……これは……ヤバい……殺されちゃうのかな……」


 恐怖にかられながらも葛は教室を飛び出した。予想はしていたが学校内には誰もいない。


(予備知識の無いまま興味本位ではじめちゃったけど、これ……乙女ゲー厶じゃなくて、ホラーじゃん!)


「さんじゅーに。さんじゅーさん……」


 何処にいても数を数える声が聞こえる。


「早く……早く隠れなきゃ……えっと……」


 正解がわからないが、制限時間は五分というから五分間隠れきれればいいのだろう……たぶん。


「よんじゅーご。よんじゅーろく……」


 時間が迫り、焦った葛は近くにあった理科実験室に飛び込んだ。内側から鍵をかけ、周りを見渡す。ここといって良い隠れ場所は見つからないが、とりあえず棚の下の空洞に身を隠し、目の前に机や椅子を置きカモフラージュした。


「ごしゅーく。……ろくじゅー。イクヨ……ツヅラちゃん」


 ドクン……ドクン。心臓が早鐘をつく。


(かくれんぼってもっと楽しいものだと思う……ヒィィィ……怖いよう)


 コツコツコツ。足音が聞こえる。

 ウィンドウを見れ時間がカウントされていく。三分二十秒……三分二十一秒……。


 カラカラ……バンッ……バンッ……。別の教室を探している音が響き渡る。

 コツコツコツ……。コツコツコツ。少しずつこちらに足音が近づいてくる。


(あっ……今たぶんこの教室の前だ。早く……早く……時間が経って……)


 ガチャガチャ……カチリ……カラッ。かけていた鍵は呆気なく開けられてしまった。

 コツコツコツ……コツコツコツ。バンッ。コツコツコツ。ギギーッバンッ。コツコツコツ……。

 ロッカーや机の下などを確認しているのだろう。恐怖で体が固まる。足音が……息づかいが近い……。


「はぁっ……ツヅラちゃん……ツヅラちゃん……どうして逃げるのかな?隠れないで……ほら、怖くないよ。ツヅラチャンツヅラチャンツヅラ……ツヅラツヅラツヅラツヅラツヅラツヅラツヅラツヅラツヅラツヅラツヅラ」


(イヤァァァァ!!怖いよぉ!ナニコレなんなの?!乙女ゲー厶じゃなかったの?!怖いよぉ)


「チッ……」


(舌打ち?!)


 コツコツコツ。コツコツコツ。少しずつ音が遠ざかっていく。どうやら隠れきったようだ。残り時間はあと六十秒ほどだ。ふぅっと息を吐き出す。


(大丈夫かな?)


 近くから足音は聞こえない。別の階に行ったのかもしれない。残り時間は三十秒を切った。周囲はシンと静まりかえっている。とりあえずもう安全だろう。そう思ってほんの少しだけ、外を覗こうと身を動かした。


『「動いちゃダメっ!!」』


(えっ)


 カタン……。身を動かしたと同時に、ほんの少し音が鳴ってしまった。瞬間。


 バッ!!ガタン!ガシャン!!


 目の前を覆っていた椅子や机が一気に取り払われる。

 恐怖で動けない葛の目に入ったのは、靴下を履いた状態の足。


(あぁ……だから足音がしなかったんだね……)


 諦めてほんの少し視線を上げれば、目のハイライトが完全に消え、歪んだ笑顔を浮かべる維玖桜。


「ミーツケタ。ツヅラ……キミが俺を受け入れないなら……君を殺して……俺も死ぬ」


 維玖桜の手が葛の首にかかる。ほんのり手の冷たさが伝わる。ボキっと嫌な音がした。ゲームだから痛みを感じないのが幸いだ……。

 そこまで考えた瞬間に世界は暗転した。


『BADEND』


『一周目の世界を終えました。自動的に二周目に入ります』


 暗転した世界でウィンドウが開く。どうやらまた初めからのようだ。


『「……気づくのが遅くなってごめんなさい。あなたを助けてあげる」』


 すると頭の中に声が響いた。先程「動いちゃダメ」と聞こえた声と同じだ。


『「一日目の夜。オートセーブが終わったあとベットに入る前、ウィンドウからクローゼットを開いてみて、そしたら中に棺というアイテムがあると思うとの……それを使ってみて……」』


「誰?」


『「それはまたあとで、ゲームが始まるわ……」』


「えっ……」


 気がつけば、スタート地点の自分の部屋に居た。


 トントントン。


「姉さん……入ってもいい?」


 セシルの声が聞こえた。新しいゲームが始まったようだ。

拙い文章を読んで頂きまして、ありがとうございました。

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