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 かくれんぼが始まった直後の校門前。つづらが隠れる為にプールにダッシュをしている時。


「久しぶり……相変わらずね」

「どこに行っていたの梨穂子りほこ姉さん……僕探したんだよ」

「嘘つきは嫌いよセシル。私が逃げたと思ってすぐに諦めたくせに」

「そんな事ない!!すごく会いたかった!」

「クスクス。葛より?」

「……比べれるわけないでしょそんなの。二人共僕の大事な姉さんだ!」

「梨穂子……相変わらずその裏切り者と一緒ですか……全く……早く目を覚まして下さい。貴方を本当に愛してあげれるのは私達なのですよ?」

「ははっ裏切り者だと?俺はお前たちの味方になったつもりは一度も無いけどな!」

 

 そう言って仙汰ぜんたは梨穂子の腰を抱き引き寄せた。三人の顔が険しくなる。


「貴様っ!梨穂子から手を離せ!」

「ふんっ負け犬め」


 一触即発の雰囲気だ。


「ねぇ……梨穂子ちゃん。君がツヅラちゃんに色々と教えたのかな?最近のツヅラちゃんは少し情緒不安定でね」

「あの子が情緒不安定なのは通常営業だから大丈夫」

「……君たち友達じゃないの?」

「えっ……友……達…………そっか……ふふっそっか……私達……ふふふっ」

「梨穂子ちゃん?」

「そうっ!私達は友達だよ……だから、二人でここを脱出するの」

「そんな事はさせないよ!」

「二度と逃さないからね梨穂子姉さん」

「……その前に仙汰……邪魔者のお前を排除してあげますよ!」


 顕景あきかげが小刀を取り出し仙汰に襲いかかる。一方仙汰もサバイバルナイフを取り出し臨戦態勢をとる。


「死ねっ仙汰ぁぁぁ!!」


 キィーンという金属音が響き渡る。


「そう簡単に殺られねぇよっ!!」


 ガッ!


「グッ……」


 仙汰に腹を蹴られを後ずさる顕景。蹴られた場所を押さえつつも膝をつかないのは流石である。


「ふぅっ……クソッ!もう、一分以上経ってしまってます……ここは私に任せて、二人はツヅラをっ」

「分かった……さっさと終わらせようね。待ってて梨穂子姉さん」

「任せたよ顕景くん。また後でね梨穂子ちゃん」


 セシルと維玖桜いくさがやっと葛を探しに走り出した。いつもなら一分しかない隠れる時間だが、今回は一分半稼ぐ事ができた。隠れ切るには十分だろう。


「ゼータ……やるよ……」

「任せろ」

「ふふっまたビーストを私から離すのでしょう?そう簡単にはやられませんから……それに、ビーストの私を倒したところでゲームは終わりませんよ?」

「知ってるよ……だから、あなた達を無力化する必要があるのよ」

「かくれんぼが終わればどうせ元通りになるのですよ?バカらしい!」


 顕景が仙汰から少し距離を取る、くるくると小刀を指先で回し、一つだけ溜息をついた。


「まぁ……いいです。どうせここから逃がす気なんてないんですから……なので……とりあえず、目障りなお前が死ね仙汰!」


 再び顕景が仙汰に襲いかかる。もちろん仙汰もそれを受ける。


 キィン!カキィン!


 顕景が縦横無尽に小刀を振り回し、仙汰がギリギリのところで交わす。首や目やこめかみ、人の急所を確実に狙ってくる辺りが恐ろしい。それを、すんでの所でかわす仙汰。


「相変わらずイヤらしい戦い方だな……このムッツリスケベめ」

「はぁっ?!誰がっ!そんな低俗な言葉を私に浴びせるとは……この無職!!」

「むしょっ!!」

「こっちはシステムにアクセス出来るのですよ。貴方が十九才旅人とかいう訳の分からない肩書なのも知ってるんですから!」

「……」


 そっと目をそらし黙る梨穂子は、もちろん知っていた。葛にはウィンドウを隠していたので、知らないのは彼女のみだ。


「全く……何故、梨穂子は貴方を選んだのか……」

「煩い黙れ!!肩書なんて物は合ってないようなもんだ!!俺たちは、愛しあっ」

「……隙きあり」


 ガッ!


「グハッ」

「ゼータ!!」

 

 仙汰の一瞬の隙きをついて、顕景が脇腹に蹴りを入れた。横に転がる仙汰。

 横たわる仙汰に近づき手元にあったサバイバルナイフを蹴り飛ばす顕景。


「先程のお返しです」

「……はっ……この野郎……」

「苦しめて殺してあげますよ……」


 顕景は小刀を仙汰の太ももの上に持って来た。それを……。


 ザクッ。ザクッ。


「ガッ……このっ……」

「両足がこれではもう動けませんね……ふふふっ」

「……ゼータァ」


 顕景が仙汰に馬乗りになり、小刀を構える。歪んだ笑顔で見下ろすその姿は完全に悪人だ。

 

「さぁ……梨穂子見ててください……私がこの甲斐性なしをぶち殺してあげますからね」

「やめて!!」

「……また、次のストーリーで会えますよ……たぶんね」


 小刀を振り下ろす。


「ゼータ!!」


 瞬間、ゼータが頭を起こし小刀を持つ手にぶつけた。吹き飛ぶ小刀。


「っ!このっ!さっさと殺されろぉ!!」


 怒りで顔を真っ赤にしながら顕景が叫ぶ。


「このぉぉぉぉ!!」

「っ?!梨穂っ…」


 ドンッ!


「うわぁ!!」


 武器を手放した事により梨穂子がタックルを仕掛けた。よろめいた顕景が梨穂子と共に倒れ込む。


「梨穂子っ!離してください!!あなたは後でお相手してあげますからっ!!」

「嫌よっ!!ゼータ!!」

「おぅ!」

 

 上手く動けない顕景の顔を満身創痍の仙汰が殴りつける。


「グフッ」

「俺が抑える!梨穂子っ、任せた!」


 梨穂子が頷き、クローゼットからアイテム『幸せの記憶〜顕景〜』を取り出す。


「梨穂子?まだ私からビーストは剥がしてませんよ?今それを使えば私は死ぬだけです!ここからはじき出されるだけですよ?!なんの意味がっ!」

「……知らなくていいよ……バイバイ……顕景」


 アイテムが光る。


「ぐっ……ガッ……りほっ梨穂子……ツ……ヅ……」


 顕景が苦しみだす。体の中のビーストと共に命が尽きそうになっているのだ。

 梨穂子は更にクローゼットから『棺』を取り出した。


「?!……何を……?」


 ギギーッ。梨穂子が棺を開く。そして、仙汰と力を合わせ顕景を抱え、中に押し込む。


「ぐっ……ハァ……梨穂子?これは……一体?」

「……人を……棺に押し込むなんて……ハァ……」

「……ハァ……ハァ……そうだな……気分の良いものではないな……」

「やめっ!やめろ!!梨穂子っ!梨穂……」


 パタン。

 何とも後味が悪い中……蓋を閉めた。


「ハァッ……ハァッ……あと……あと二人だね」

「あぁ……行くか……」

「ゼータ大丈夫?」


 仙汰の両足からは大量の血が流れている。


「最初からやられちまったな……」

「油断しすぎだよ……もう……先に保健室に行こうか……止血しなきゃ」

「だな……」


 仙汰に限り、一度だけ保健室の利用で怪我をある程度治すことができる。ただ保健室に入ると一分間ほど動けなくなってしまう。


「別行動にする?」

「いや……俺たちは一緒の方がいいだろう……お前が一人で居てもし捕まったら終わりだ」

「……そうだね……はぁ葛大丈夫かな」

「信じてやろう……」

「……友達だし……ふふっ」

「嬉しそうだな梨穂子」

「ん?……そう?ふふっ……さっもう少しだ!頑張ろう」


 仙汰が負傷しつつも、二人は顕景の封印に成功した。

 それを保健室に到着したあと、葛へのチャットで知らせた。開始からちょうど七分に届く頃であった。

拙い文章を読んで頂きまして、ありがとうございました。

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