ブタに真珠
今日は彼と付き合って5年の記念日なのに、特に変わったところはない
いつものラフな服装にサンダル。
それだけならいいけど、手ぶらで待ち合わせに現れた。
記念日という日にしてくるような格好ではない。
もっと相応しい格好があったはず。
食事に誘ってくれただけで嬉しく思わなくてはいけない。
私なんか、パールのネックレスに赤いワンピースで、気合い入りすぎてる。
私も付き合っている間に10キロ太って、昔とはだいぶ変わった。
でも、彼の方が酷い。
扱いも、服装も、言葉遣いもかなり雑になった。
彼の導きに付いていくと、和食レストランに着いた。
そのレストランは、高級そのものだった。
二人で豚カツを食べて、二人の記念日を祝った。
食べ進めていくと、豚の中から何かが出現した。
「これ、何?」
「真珠の指輪」
「えっ、どういうこと?」
「婚約指輪代わり」
「結婚しようってこと?」
「そういうこと」
私の瞳から、真珠のようなものが流れ落ちた。