修学旅行1 柚葉と始まり
―思えばこの時があったから今があるんだなって思うよ。
当時は色々嫌だって思ったけどさ。
でも、良かったって今だから言えるな……
修学旅行。
五~六人の男女で班をつくれって言われてうちは誰に声をかけるか悩んだ。
いつものゲーム仲間とはちょっと喧嘩してたからよく一緒にいる藍と珊瑚を誘った。うちが好きだなって思ってる神井が野川を連れて一緒のグループになろうって言ってきたから即OK出しちまった。藍も珊瑚も良いって言ったし、神井と一緒なのは嬉しかった。
「ねえ楠さんはどこか行きたい所あるの?」
「私…旅行ってほとんどしたことないから、あんまりわからなくて」
「そーなの!?って、俺もなんだけど!」
早速神井が珊瑚に話しかける。コイツうちと喋ってるときは最近目も合わせないくせに、珊瑚にはデレデレしやがって。
「うちはこのレインボーアイスパンケーキ食べに行きたい!!」
「ふーん、いいじゃん」
「すごいね、こんなのがあるんだ」
負けじと下調べしたガイドブックの写真をばっと見せる。テレビで見てたスイーツが食べに行けるなら楽しみだ。野川が同意して珊瑚も気にかけた。
「楠さんが行きたいなら入れよう!スケジュールここ優先で!」
「うちが言ったんだけど!?」
「柚葉ちゃんが行きたいんだもん、入れてあげたいな」
すかさずフォローをいれる珊瑚に柚葉は嬉しそうに頷いた。
「羽賀さんはどっかないの?」
「え……っと……。」
「藍はそういうのないんじゃない?」
「………。」
野川に話しかけられて藍は言葉を詰まらせてしまった。藍のことだから何も考えてないか、珊瑚みたいになにも分からないんだろうなと思い柚葉は気を利かせたつもりでそう話を流そうとする。
「藍ちゃんも何かあったら希望出してね」
「うん……」
「楠さん優しい~~~!超天使だわぁ~~」
「ふふ、神井くん大げさなんだから」
な~~~~にが、天使だ。
何が大げさだ。
柚葉がムスッとしていると、野川がスマホで自分の行きたい場所の希望をだした。神井も王道な場所を抑えつつルートを考えながら珊瑚に答えを委ねつつ聞いていく。珊瑚はどれも良いと思うよと同意ばかりだった。
結局話し合いしたその日はレインボーアイスパンケーキとランドタワー、表通りを練り歩いて買い物、学校側から絶対に入れるように言われている寺をめぐる話で終わった。
この修学旅行で、神井と一緒にいて珊瑚よりうちの方が相性良いし可愛いって惚れさせてやる…!
そう、柚葉はこっそり心に決めたのだった。