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駒井柚葉とマイペース

女子と遊ぶより男子と遊ぶ方がめんどくさくなくていい。裏でごちゃごちゃうるさいし暗い話もするしさ。けどあいつら頼りないしうちがしっかり引っ張ってやんないとなって思うし。裏表なんかない方が信頼されるって言うしハッキリした自分の性格結構好きだな。口に出した方が周りにも伝わるし言わないでいるよりずーっと良い。



「置いてくぞー!早くしろよなぁ!」

「柚葉ちゃん待ってぇ、まだ準備できてないの」

「ほんとトロイよなぁ~」

更衣室で制服を脱ぎ捨ててジャージと交換してすぐ着るくらいでどうしてこんなに時間がかかるのやら。ぼーっとしてる藍も、恥じらってもたもたしてる珊瑚ももっと早着替えすりゃいいのに。ただでさえ二クラス合同で着替えるには狭い更衣室に長居したくないというのに。

「おまたせ」

「ほら、藍も終わったぞー」

「も、もうちょっと…」

「先に出てるからなぁ」

そう言って更衣室を藍と出る。狭苦しい場所から解放されて一息ついて暇つぶしにストレッチをしておく。授業でもやるけどただ突っ立って待ってるよりは良い。

「おまたせ、遅くなってごめんね」

「おっそーい!三分も待ったんだからな」

「ごめんね…」

「ほらダッシュだダッシュ!」

そういって柚葉がグラウンドまで走ると藍と珊瑚もつられて走る。授業開始まで時間はあるけれど待たされた分を取り返すように勢いがいい。


授業が始まり準備運動を終えると先生がペアを作らせサッカーボールを持っていくよう指示をした。

「横とぶつからないよう距離を離してペア同士でパスをし合ってください」

二メートルくらい離れた位置から真っすぐパスをし合う。弱く蹴っても強く蹴っても相手に上手く届かず、意外と思った方にボールが飛んでいかないのが難しい。斜めに転がって隣のペアの妨害をしてしまったりもよくあることだった。

「えい!」

珊瑚が蹴ったヘナチョコボールがてんてんとバウンドしながら柚葉の方に向かう。

「いくぞー!そりゃあ!!」

強く蹴飛ばすと珊瑚の横を勢いよく転がりどんどん遠くへ行ってしまった。珊瑚が慌てて走って取りに行くのを見つめ遠くへ飛ばせたことに満足感を得る。相手が取れないボールを蹴れたのもちょっと誇らしい。まぁ珊瑚は運動神経良くないが。

「早く早く」

「…えい!」

ようやく戻ってきた珊瑚が蹴ったボールはやっぱりまだ届かない

「もっと強く蹴らないとこないじゃん」

「強くしたら曲がっちゃいそうで…」

「いーんだよそんなの!こうだよ!こう!」

ボールを迎えに行くよう助走をしまた強めに打つ。

「あうっ」

勢い余って珊瑚の肩までボールが上がってぶつけてしまった。

「高く飛んだわワリワリ」

コントロールするまで時間はちょっとかかりそうだけれど、威力が強いボールは本番で役にたつ。珊瑚のボールなんかじゃパスにならないのだからこんなもんでいいだろう。


次に一人ずつカラーコーンをぐねぐね曲がりながらドリブルをする練習になった。これがなかなか難しい。あっちへいったりこっちへいったり遠くに飛ぶほど戻ってくるのが面倒でイライラする。三列同時に始めたのに同じタイミングで始めた人より時間がかかったのは悔しい。珊瑚はゆっくり慎重に、時々変な方に飛ばしながらもたもたクリアした。藍もスピードはないけれどまあまあコントロールしてクリア。三人の中では柚葉がタイム的には良かっただろう。やや強引だったが。


白線を出ないようドリブルをしながらゴールにシュートをするのも楽しい。やっぱり球技は得点を入れる瞬間が一番燃える。達成感を得ながら列の後ろに並んでまたシュートをするを繰り返し授業が終わった。

「楽しかった~!」

「柚葉ちゃんは体育好きだね」

「教室でつまんねー話聞かされてるよりはいいよな」

更衣室へ戻りさっさと着替える。すがすがしい気持ちと裏腹にここはむわっと汗のにおいと色んな香りの制汗剤スプレーが混ざって長居したくない。相変わらずこっそり着替えようともたもたする珊瑚に呆れる。女しかいないんだから恥ずかしがってどーすんだか。ブラだってパンツだって見えてしまう時間なんてたかが知れてる。藍も気にしてはいるがそれより周りの邪魔になっていないかどうかの方が気にかかるようだ。そんな2人の細かい所は眼中にもなく柚葉はさっさと着替えろよと口をとがらせやっぱり先に出ていくのだった。

「……。」

教室に戻るだけなのに待ってるのも面倒で柚葉は少し待ったあとそのまま一人で教室へ戻ることにした。数分遅れて更衣室を出てきた二人もどこへ行ったんだろうと戸惑いながら教室へ戻ると自分の席でスマホげーをしてるのを見つけすれ違ったり置いて行ってしまっていないかったことにほっとしたが本人はなにも気にしていないようだった。


「お、駒井も爆神やってんだな」

男子もぞろぞろと教室に帰ってきて、柚葉の隣の席の神井くんが柚葉に話しかけた。

「神井もやってんの?」

「俺レベル32~」

「まじかよ!」

「駒井は?」

「はぁ!?……20だけど」

「結構いってんじゃん」

「ここのボス倒せなくて進めないんだけど」

「あ~ハイハイそこね。わかるわ。そこみんなつまずくんだよなー」


たまにしか話したことがなかったけれど神井もスマホゲーとかやる奴なんだなと知った。体育館とかグラウンドで数人の男子と遊んでるイメージが強くてゲームなんかしないと思っていたから少し意外だ。といっても爆神(爆裂☆新世界)は流行りのパズルRPGだから普段ゲームをそんなにしない人でもハマりやすいライトでやりこみ要素のあるものだけれど。

「こんなサブイベでストーリーを進めないと解放されないとか誰がわかんのこれ」

「そうなんだよ。課金ガチャの装備いるかなとか思うよなこれ」

「もう買っちゃったよ!なんで早く教えてくんないの」

「いやだって駒井がこれやってるなんて知らんし」

からかいながら笑う神井の無邪気さにちょっと可愛いなとか思う。悪くない…。そういやコイツよく見るとカッコいい方かも。


「ねえねえ、楠さんはこういうゲームやる?」

柚葉の前の席にいる珊瑚に神井は急に話しかける。呼ばれて驚いて振り返ってからちょっと困った顔をした。

「私…ゲームやらないから…」

「面白いよ、これ!通信対戦とか協力とかもできるしさ、一緒にやらない?」

「えっと…」

「珊瑚こういうのやらないんだよ」

「そうなの?じゃあさじゃあさ、これはどう?女子に人気なアプリゲーなんだけど。可愛いっしょ?どう?俺もやってんだけど」

「そんなん良いからフレコ教えろって」

「駒井は置いといて~」

「置くな!」

「ごめんなさい…、そういうの興味なくて。誘ってくれたのにごめんね」

申し訳なさそうに笑う珊瑚に柚葉はどうでもよさそうに神井の興味を自分に向けようとスマホを引っ張って操作した。

「どこだっけフレコ」

「あー、ここ」

思惑が上手くいかなかった神井くんがちょっとつまんなさそうにしているのもお構いなしにフレンド申請を自分に送り柚葉は少し満足そうによし、と言った。そのころにはもう珊瑚は自分のことをしていて完全に無関係になっていた。


チャイムが鳴ってさっとスマホをしまって先生が来て授業が始まる。珊瑚にとって隣のクラスメイトがちょっと気になるきっかけになる一日になったのであった。

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