#72 使命
ビリッ――青黒い電流。
放たれた紫色の破滅弾。その弾がロボットの背後に当たる――はずだった。
「――途中で……消え……た?」
あまりにも不可解なことが起き、アマランスは目を見開かずにはいられなかった。
アマランスが放った破滅弾は空中で突然消えたのだ。
まるでブラックホールに吸い込まれるかのように。初めての事例だった。
ロボットは素早く振り向き、機関銃をアマランスに向ける。
普段ではすぐさま反応できただろう。だが、破滅弾が虚空で消えたことにまだ状況の処理が追いついていなかった。
アマランスの体は柱から丸出し。恰好の的だった。
「アマ!」
シュリが思い切り、アマランスを柱に引き寄せる。
間一髪のところで銃弾の波から逃れた。助けなかったら今頃、蜂の巣になるところだった。
だが無傷というわけではなく……
「――ッ!」
アマランスの腹は赤く染まっていた。自身の血で。
訓練をしているアマランスでもこれはかなり効いたようだ。
とっさに打たれた箇所を手で抑える。出血を最小限にすること、とシュリに気づかせないようにするために。
もちろんシュリに気付かれた。
「大丈夫か⁉︎」
シュリは目を見開き、アマランスを柱に座らせる。
ゆっくりとアマランスが抑えている手を退けると三箇所に銃創があった。
またすぐに手を腹に持っていくと、苦笑まじりに答える。
「……こんなん……ハァ……ただの……かすり傷や」
反応と傷から見て明らかにかすり傷ではなかった。重傷者が繕う時のそれ。
――死ぬかもしれない。脳裏にその言葉がよぎった瞬間。
シュリはパニックに陥った。
「マ、マダ……ダイジョウブ! 早くなんとかすれば!」
視点が定まらない。
そっと右頬を包み込まれた。
アマランスは優しい目をしていた。
「そんなに焦らんくていい。今はソーアくんの合図だけに集中しい」
直感だがアマランスにはわかっていたのだ次の作戦があるということを。
「でも……でも……」
「うるさい!」怪我人とは思えない声で張り上げた。「ってリーラは言ったんじゃない?」
ハッとなった。あの時と同じだったと。
脳裏に鮮烈と映し出された。父が倒れていくあの光景を。
だが、今の自分は戦える。早くアマランスを病院に連れて行かなければならない。
大丈夫。そう言い聞かせ深呼吸をする。
だって『人を、家族を守る』ことが自らの使命なのだから。




