#68 陽動
怒りにソーアは鼻息を荒くして男に近づいた。
男はソーアに気付くと顔を上げた。
容赦なくソーアは自分の拳銃を男の眉間に突きつける。
「ひぃぃ」
情けない声。
「お前を殺す前に聞きたいことがある。お前らの目的はなんだ?」
ゴミを見るような目で見据え、冷淡な声でソーアは訊く。
「目的? そんなことはしらねぇよ。だが、もしあんたらに捕らえられて目的を問われたらこう答えろとボスに伝えられている」
男は続ける。
「この地下世界の真理を見にいくと」
「地下世界の真理……」
「そうだ。それ以上のことは何もしらねぇ!」
必死になってソーアを見ている。嘘はついていない様子だ。
「ちなみにボスとやらはどんなやつだ?」
「それもしらねぇよ。携帯にメールが届いたんだよ」
これも嘘はついていないようだ。コイツらはもともと地上にいる人たちだからメールは当然知っている。
「わかった」
ソーアはきびすを返してシュリ達がいるところに歩みを進める。
地下世界の真理……か。
もしもすべて思うツボだとしたら……あっ!
ソーアの考えていたパズルのピースがすべてハマった。
殺すのは別に今じゃなくてもいい。
考えるよりも先に身体が動いた。
「みんなっ! 奴らの本当にしたいことがわかった!」
「「「「「えっ?」」」」」
「それって……」
シュリの歯切れが相当悪い。シエルの死が大きいからだろう。
だがソーアにもまだ心に傷は負っているが組織を潰すことがシエルへのはなむけなんだ。
こんなところで立ち止まっていられない。
「ライさん! どこにロボットの襲撃があったかわかりますか?」
「ちょっと待っててくれ」
そういうと少し遠くで作業していた別の騎士のところに行くと、一枚の紙を持って帰ってきた。確か援軍で来てくれた人だ。
「これだ。ロボットが現れたところ全てに印がつけられている」
ライから紙を受け取るとそれは地図だった。
「ありがとうございます」
地図を地面に広げた。
「もし、このロボット全てオトリだとしたら……」
「陽動か〜」
イグニスの言葉にソーアはうなずきながら、地図の上にかけられていたペンを取り外し、ふたを外す。
「そう。そして、この襲撃箇所を展望台を中心に結んでいくと……」
サインペン特有の音と匂いを出しながら点と点を結んでいく。ソーアは続ける。
「どうだ。展望台の周辺箇所だけがロボットの襲撃がされていないんだ」
皆、小さく感嘆の声を上げる。ソーアは続ける。
「僕はこの地下世界に来た時からずっと変だと思っていた」
「私はそんなふうに思わなかったけど」
シュリは小首を傾げる。
「それも当然すぎることだからね。なぜこの地下世界には空があるのかってね……」
ソーア意外が全員「えっ?」と声を上げる。
ソーアは決意を込めた声を出す。
「説明は後です。今すぐ展望台に向かいます」




