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#67 獣の目で

 夕焼けに染まるグリフォンに乗るソーアは子供達にとったら英雄か何かに見えたのだろう。

 地上に降り立った瞬間、子供達が目をキラキラ輝かせながらソーアの前に集まった。

 浴びるくらいの感謝の言葉。


 「おいにいちゃんありがとう」

 「私、お兄ちゃんみたいになる!」


 そんな無垢な言葉がソーアには痛かった。

 だから、「ああ……」とやつれた声しか出せなかった。

 その中を無言で歩く。その後ろを有名人だと言わんばかりについてくる幼い子供が口々に喋りかけてくる。

 ソーアは子供達の綺麗な声が今は不協和音にしか聞こえない。

 次第に何の反応も示さないソーアに飽きたのか徐々に解散していった。

 炎も収まったロボットの前にソーアは立ち尽くす。

 そこから力なく崩れ落ちる。


 「くそぉ! コイツさえいなければ……」


 土の地面を叩きつける。手に細かな電流が流れるようにしびれる。

 だが、そんなことは気にする余裕すらなかった。

 そこから悔しさを、何度も、何度も、何度も、地面にぶつけた。

 

 「ソーアッ!」


 途端に右手が空中で止まった。

 シュリの声が頭上でする。

 ソーアはゆっくりと顔を上げ、辺りを見渡す。

 アマランス、イグニス、そしてソーアの後ろに立っているシュリ。全員がそこにはいた。ライは別の騎士と話している。ダーリャはその後ろで一緒に話を聞いている。

 アマランスが、


 「作戦は成功したんやで。無事、ワープ口は破滅させもう、出入りできひんようにした。シュリとイグニスもロボットの撃破に成功。どうしてそんなに土を殴ってたんや?」

 「…………だ」


 ソーアの声は小さすぎてみんなに聞こえていなかった。


 「なんて?」

 

 アマランスの優しい顔がソーアの眼前に迫る。その優しさがソーアの心を抉る。

 怒気を滲ませた声でソーアは言う。


 「シエルが死んでどこが作戦成功だ!」

 

 一瞬世界が凍り付いたかのようにソーアは思った。いっそ凍り付いてしまえばよかったのにとすら思ってしまう。

 沈黙という氷を最初に割ったのはアマランスだった。


 「う……そ……」

 

 目を見開き情報が処理できていない。

 シュリとダーリャは無言で目を見開いている。

 イグニスも「まじか……」と硬直している。

 ライは振り向き、「やはり一歩遅かったか……」と呟くとソーアに近づいてきた。


 「大変だったな。シエルはどの辺で?」

 

 ソーアは「あっちの方です」と後ろを指差す。

 かなり大雑把なソーアに丁寧に対応し、さっき話していた騎士に向きなおった。


 「シエルの捜索に向かってくれ」

 「了解しました!」


 騎士は自分のグリフォンに乗るとソーアが指差した方向へ飛んでいった。

 ライは優しい声色で言った。

 

 「本当にすまなかった。俺が逃したばかりに」

 「えっ? 逃したって?」

 「落雷の時に殺し損ねた狙撃手がいたんだ。そいつがシエルに向かって――本当にすまない」


 てっきり、ソーアが爆破させた方のロボットの狙撃手がシエルを撃ったのだと思っていた。

 ライの方が付き合いはずっと長いはずなのに……

 そんなに謝られるとこちらが申し訳なくなってくる。


 「いや、もう大丈夫……ではないですが、その狙撃手はまだ生きていますか?」

 「えっ? そこの柱にくくり付けているけど……」


 ソーアは無言で立ち上がり、柱に紐で手をくくりつけられている男を見据えた。

 獲物を骨の髄まで噛みちぎるような獣の目で。

 

 

 

 


 


 

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