#65 シエルと狙撃銃
イグニスとシュリがロボットを遠くへ追いやってくれた。
あとは、ライとダーリャのチームだけだな。
「おい、そろそろだな……」
「そうですね」
シエルの声にいよいよだと思うと緊張してきた。
もし、失敗したら……いやいやそんなマイナスな考えはしないでおこう。失敗は許されないんだ。
ソーアは頭をブンブン横に振ると、気合を入れた両手で顔を叩いた。乾いた音が響いた。
「ソーア。もう一度子供らの救出方法を確認しておくぞ」
「はい」
「俺はグリフォンの操縦だ。だからお前がロボットの二人を無力化しろ」
「はー……い?」
「どうかしたのか?」
「いえ。このハンドガンで当たりますか?」
ソーアはホルスターに入った黒の拳銃を手に乗せシエルに見せる。大会の時に使ったものと同じものだ。
空からの射撃。揺れることはもちろんだが、なにより射程距離外にいるだろう。銃弾を当てるのは無理に等しい。
「そうだな……よし一旦グリフォンのところに降りるぞ」
いうや否や、忍者のような素早さで斜めの屋根を滑り降り、窓のふちに足をかけトントン拍子で地面に待機しているグリフォンの元まで降りて行った。
嘘だろ……この高さを……
地上三階分の高さをおりるなんて考えただけでも足がすくみそうだ。
降りるのをためらっているとシエルがため息をつき、「ちょっと待ってろ」というとグリフォンの身体の側面に付けられたケースを取り外した。
ゴルフバックくらいの縦長のケースだ。
シエルはそれを右肩にかけると重さを感じさせない軽快な動きで窓を伝ってソーアがいる屋根にあっという間に上がってきた。
「おい、お前このくらい降りろよ」
「いやいや、流石に無理があるでしょ」
「まあいい。これを見ろ」
肩からゴルフバックくらいの長さがあるアタッシュケースを下ろすと横向きに置いた。ダイヤル式ロックを外す。
蓋を開けるとそこには使われるのを待ちわびていたかのような綺麗な黒の狙撃銃があった。弾は水のカラで作れるので問題はない。
シエルは狙撃銃を大事そうに持ち上げると、
「狙撃手には狙撃手をだ」
シエルはソーアに手渡した。
「うおっ!」
かなりの重量感があり、持っただけで落っことしそうになった。
「おい、落とすなよ。毎日点検してるお気に入りなんだから。単発でも使えるが連射もできる優れものだ」
「あははは……はい」
落としてしまったら敵よりも先に殺されるんじゃないか?……ソーアは乾いた笑いをしながら震える手で受け取った。
瞬間――ソーアの身体を包み込むような光のあと、ゴォォォンという耳をつんざくような爆音が耳に飛び込んできた。
「らっ……落雷っ⁉︎ あっちの方向って……。まさかっ! おい、ソーア早く行くぞ!」
シュリがいる方とは別の方向。つまり、ライとダーリャがいる方向だ。
「なっ、何があったんですか?」
「説明は後で話す!」
言うが早いか。青い顔をして駆け出し、三階建ての屋根から飛び降りた。
「だいじょう……ぶですよね」
心配したのがバカらしく思えるほどだ。
シエルは飛び降りたと同時にグリフォンに飛び乗り、ソーアの眼前に現れたのだった。
バッサバッサ音を立てる羽音と共にシエルが言った。
「おい。早く行くぞ」
「了解です」
ソーアはグリフォンの背中に乗った。




