#64 狙撃手の逃亡
イグニスとシュリがロボットを引きつけるのと同タイミング。
ライとダーリャのチームもロボットを引きつけようとしていた。このロボットも後ろを向いている。
ライが後ろにいるダーリャに言う。
「ダーリャ。あいつらが気づくレベルで風のカラを当ててくれ」
「そ……そんなこと……」
「大丈夫だ! あいつらが気づけばそれでいいんだ」
弱気なダーリャを鼓舞させる。
「やってみる……」
腰の短剣に手をかけ、短剣と鞘が擦れる音が聞こえる。
「カラさーん。きて……」
弱々しく掛け声。短剣に風のカラを込める。
銀色の風のカラが短剣にまとわりつく。
「えいっ!」
短剣を横向きにし、思い切り放った風のカラはロボットを地面からすくうように屋根の高さまで持ち上げると、派手な音を鳴らして落下した。
ダーリャにとって破格の威力。だが、失敗だ。
横向きに倒れたロボットはバランスを失い大破した。薄汚れたロボットの破片が太陽に反射しながら銀色に光る。
「くそッ! 引きつけるのは無理だと考え、始末に移る!」
額に汗を浮かべながら、背中にせおっている大剣を引き抜く。
鞘と大剣が擦れ火花が散る。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
「失敗を悔やんでも後の祭りだ。今は前に集中しろ!」
「はいっ!」
ライの迫力のある声にダーリャは思わず背筋をピンとしてしまう。
ライは大剣に雷のカラを込める。バチ……バチッと刀が閃光する。大剣を縦に一振り。
「ハッ!」
刹那――ゴォォォンと身体の芯にまで届く音と同時に地面を震わせんとするばかりの落雷がロボットの上に落ちる。
「うぁぁぁぁっ!」
「キィァァァ!」
ダーリャはグリフォンに振り落とされないようにライにしがみついた。グリフォンも動揺している。
ライは気ようにグリフォンを操りながら目を細め、眼前の落雷を眺めている。
背中に大剣を納めながらグリフォンを下降させる。地面におり立つ。
「ダーリャ。ここで待っていてくれ」
子供に死体は見せたくない。煙が立ち昇る黒こげのロボットに近づく。
ロボットの中を覗き込むと黒こげになった何かがある。これは操縦していた人のものだろう。
砂にならない……こいつらはアルブムではないのか?
もう一人の焼死体を探す。狙撃銃を持っていた方だ。
操縦席の上だと思われるところに目を移す。そこに死体はなく血が数滴あるだけだ。
遠くに吹き飛ばされたのか?
そう思い、辺りを見渡すと、あるものを発見した。
ん? 血が路地に続いて…………ヤバイッ!
血相を変えてライは地面を蹴り、路地に走り出した。
早く始末しなければ……ソーア達が狙われる。血が続いているのならまだそう遠くへは行ってないはずだ。
必死に血の跡を追う。路地の角を曲がって、曲がって、曲がる。
「ハッ!…………」
三度目の角を曲がったところで、ライは立ちすくんでしまった。
そこで血の跡がばったり途切れていたのだ。
ライは急いで困惑の顔を浮かべたダーリャに状況を報告をした。
「操縦席の奴はは死んでいたが、狙撃手の行方がわからない。こっからは敵を刺激しないように慎重にだが速く見つける」
「はい……」




