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#57 何者

 「連れてきました」

 

 刑務官が例の女性ゴーストに手錠をかけた状態でソーアが待つ部屋に連れてきた。


 「えーその人も一緒なら何も言わない」


 駄々をこねるようにライを睨みつける。

 

 仕方あるまい。何よりも聞き出すことが最優先だ。


 そう思うとライは無言で出ていった。


 ゴーストは眉を上げ意外そうな顔をすると自ら部屋に入り、ソーアとシュリの机を挟んで向こう側にある椅子に腰かけた。椅子に手錠を結びつけられた。

 今この部屋にいるのはソーア、シュリ、ゴーストの三人だけだ。

 

 無論。ライはそんなに物わかりはよくない。横のマジックミラーで部屋を見ていた。


 「重大情報とはなんですか?」

 

 彼女の目を真っすぐに見据えた。


 「別に重大情報ってわけでもないけどー」


 イグニスとはまた違う変な間延びがソーアに不快感を与え、しゃくに障る。

 容姿だけは綺麗なゴーストは続ける。


 「私たちはあの時以外に一度会ってるの」

 「「は?」」


 ソーアとシュリの頭に疑問符が浮かぶ。

 あの時とはライに捕まえられた時のことだ。

 

 それ以外に会っているとするとどこで。


 ソーアは脳をフル回転させ、この世界に来た時の記憶を鮮明に思い出させていく。


 宮殿、街中、裁判所、闘技場……どこだ……どこで……はっ! まさか……まさかな……


 一つの場所に行き着いたが、そんなことはありえないと頭を振る。


 「そのまさかの図書館なんだよねー」


 心を読みとくように言ってきた。

 しょうもなさそうに爪ばかり見ていた彼女はチラリとソーアに視線を送ると、右端の口角を上げニヤリと笑った。


 なんなんだこいつ気味が悪い。


 「えっ? えっ? でもあの子黒髪だったよ」


 シュリはあの黒髪メガネ少女を思い浮かべているのだろう。

 だが、あきらかに不審な動きをしていた。


 「まだわかってないの」

 

 ため息混じりに哀れむような目をゴーストはシュリに向ける。

 瞬間、机を思い切り叩いたと同時にシュリが怒りに立ち上がった。


 「なんなんだお前」


 今にも殴りかかろうとするシュリを左手で制する。

 ソーアも必死に動揺を抑え、隠しながら、平常を装う。


 「それだけか?」

 「ええ。それだけよ」

 「で? 帰れると思ったか?」

 「は?」


 ゴーストの顔が初めて歪む。


 「スイキ」


 ソーアが短く合図を出すと鬼の手がある左半身からスイキの身体が出てきた。

 そこでもまたゴーストは初めて驚きに目を見開いた。鬼だということは額のツノから分かっているだろう。


 ペタ……ペタ……裸足で一歩ずつ近づくスイキにゴーストの逃げ場はない。

 ホラー映画さまさまの演出にゴーストは今にも恐怖で泣き出しそうな顔。

 

 「君はこの水の痛みに耐えられるかな」


 刹那――スイキがゴーストの目を覆うように左手で頭をわしづかむ。

 ニヤリと笑ったスイキの表情は恐怖以外の何者でもなかった。

 

 



 

 


 

 

 


 


 

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