#54 虚空に消えていった
話が終わるとすぐに解放された。
といっても話が長すぎる! 任務の話だけならまだ許した。だがなんだ! 全く関係なく、一ミリも面白くない話を延々と聞かされる様は!
もう外が真っ暗ではないか! とっとと帰って寝よう。
みんな疲れと怒りで全員無言。昼は綺麗に見えた建物が今は疲れ切っているように感じる。
宮殿から外に出ようとした直前。
門番の騎士がライを呼び止めた。
「ライ様! 伝令です。ダーリャ様の意識が戻られました」
「本当か! ありがとう!」
疲れが吹っ切れたように、近くにあるグリフォンをつないでおく場所に小走りで近づいていった。ソーア達も続く
この世界の移動手段はほかならぬグリフォンだ。だから、駐車場ならぬ駐グリフォン場が存在する。
ライは寝ている自分のグリフォンに飛び乗る。瞬間、仕事だと言わんばかりにすぐに立ち上がる。
僕もあんなに早起きになりたい。シュリに蹴られなくてもよかったあの訓練週間一日目の朝が恋しい。
ライがグリフォンのモサモサした背中を二回叩く。
ヘリコプターにエンジンがかかるように、徐々に羽ばたき始める。
「面会はまだ少し先になりそうなんだ。だからここで一旦お別れだ。ではまた!」
ライはそれだけ言うと、グリフォンの背を三回叩いて加速した。
「ああ……っちょ……もう私にとっても妹みたいなもんやのに……」
「アマさん。『私にとっても』ってライさんにとってダーリャさんは何なんですか? 非常にウキウキしてましたけど」
アマランスはいかにも嫌そうな顔をした。
「あー……ダーリャは男友達の子供やってん。でもその男友達も騎士団の一人やったんやけど、事故で死んじゃったんだよね……」
周りに生えている木が風に揺られてソーアの心をかき乱すようにザザザザと音を立てる。
ソーアとシュリは言葉が出てこなかった。知らぬが仏。この場に置いて一番最適なことわざだ。
「……そう……だったんですか……」
「でもそんなん十年以上前の話だし気にしないで……じゃあもう遅いしこの辺でお開きにしよか」
パチンと両手を鳴らす。乾いた音は虚空に消えていった。




