#53 アルブムを潰す日もそう遠くないかもしれない
「ささ、皆さん腰掛けて」
部屋ギリギリに収まった大きなソファーに皆、腰掛ける。真ん中には木のテーブル。その先に女王が座っている。
無論、目の前の人は女王。シュリでさえも背筋に鉄板を入れているかのように背筋を立てている。
その様子を見たからか女王は、
「身体。楽にしてね」
「わかりました」
さっきの鉄板はどこへやら、シュリは速攻で背筋を立てる姿勢を解除した。シュリの決断の速さは見習いたいものだとソーアはつくづく思う。
みんなの顔を見回し、
「じゃあ。早速本題に入るね」
ニコニコした顔から、一変。老婆とは思えないようなキリリとした顔になった。これが、女王の素質なのだろうか。
「改めて、ダーリャのことはありがとう。そこで、ライ」
「は、はい!」
自分に来るとは思ってなかったライはうわずった声で返事した。
「ライが提出してくれた報告書によると……」
数枚の紙が一つにまとめられた報告書を女王は手に取った。
ペラペラと紙をめくった後、ソーア達に見えるように真ん中のテーブルに置いた。
「ダーリャ・シルバーはゴーストに操られていた。少なくともゴーストに操られる寸前の記憶は残っているはず。なら、そこからどういう手口で操られたかを調べる必要があるわ」
少し前のめりになりシエルは、
「操られている時の記憶は残っていないのですか」
「それはないんじゃないかな」
まさかのソーアが答えたことで『お前には聞いてねぇ』という言葉を寸前で飲み込んだ。
キレそうになるのをなんとか押し戻し、口の端を無理やり上げ、引きつった笑顔を作る。
「どうしてだ?」
「だって、僕があの子を操られていた状態を……無理やりだけど……解いたとき、『ここは……』ってうっすら目を開けた後、すぐ気絶しましたから」
「ソーアの言う通り。だが少しくらいは記憶が残っていてもおかしくない。ライ、シエル、ソーア、シュリ、アマランス、イグニス」
女王から向かって左から順々に名指ししていく。
「そして、ダーリャ。計七名にアルブム専門の特別捜査官に任命します」
「えっ……それはあまりにも……」
シュリの左横で紫髪を揺らしながら、勢いよく立ち上がった。
「了解しました」
それにつられて、シュリ以外はソファーから立ち上がり、
「「「「「了解しました」」」」」
と声を揃えた。もちろんソーアもこんなことがあるとは想定もしていなかった。
だが、アマランスの『女王には絶対服従』という言葉を寸前で思いだし、なんとか流れに乗れたのだった。
「シュリは?」
と、ニコニコしながら女王は言う。温かみを言葉に含ませながら。
女王の喋り方は、良くいえば温かい。ぬくもりがある。が、逆に悪く言うと、心裏。心の中が全くわからない。
温かさという表面が分厚すぎて、心の中は全く見透かせない。そんな女性だ。
「……わかっ……た」
「よし。じゃあダーリャには後で言っといて。じゃあ任務の本題に移るわね」
その後女王からこの特別捜査官の任務内容について解説させられた。
最終目標は任務の遂行。つまりアルブムを完膚なきまでに潰すことだ。
僕たちが、特別捜査員ということを他の人に明かしてはならない。
これは、この部隊が発足されたことを悟らせないためらしい。
確実に一歩ずつだが前進している。アルブムを潰す日もそう遠くないのかもしれない。




