#50 どったんばったん
翌日、ソーア達は宮殿に訪れていた。なんとも、大会優勝者の扱いはかなり特別らしい。
それなら、カラフル騎士団を潰すことが目的ならミロワールとミュールもカラフル騎士団に潜入すれば良かったのにと思う。
つまりアルブムの計画にカラフル騎士団を潰すことは計画外、もしくは他の目的で入っていなかったということだ。
しかし、彼らはもう砂に成り果てた。
なぜ、砂になるのかは、ライでさえもわかっていないのだという。
「まさか、この宮殿だったとはな……」
ソーアとシュリにはには見覚えしかない宮殿だった。赤のカーペット。ホコリひとつない綺麗な廊下。
この宮殿。ソーアとシュリがこの地下世界にワープした場所であり、侵入者として追いかけ回された場所でもある。
追い出されたところから、逆に招待されるのはなんとも皮肉な気がする。
ソーア達は控え室のようなところに移された。
「二人とも似合ってるなぁ……シュリちゃんはちっさい頃のリーラにそっくりや!」
マジマジと見つめられるとこっちが恥ずかしくなってくる。
アマランスの家で、こちらでいう正装に着替えたのだった。だが……
これのどこがカラフルなんだ!
前々から思っていたが『カラフル』と名乗りながら、服装が全員真っ黒とはどこかの黒の組織もびっくりだ。
ソーアは上下真っ黒のスーツ。しわがひとつもない。誰かのおさがりらしいが管理していた人はかなり几帳面なのだろう。
シュリはも上下真っ黒のドレスには違わないが、しわが何本かある。このドレスを管理していたのはアマランスだ。そこがまたアマランスらしい。
じゃあ、このスーツは誰のものだろうか……?
「ソーアくんは誰に似ていると思う? シ エ ル 君!」
アマランスは口角を上げ、わざと煽り口調で、シエルの左腕をおもいっきりわしづかむ。服の上からだと分からないが割と筋肉質だ。
いつもは無言で手を跳ね除けてそうだが、今回は目を閉じて下を向いたまま黙っている。
シエルは背後から近づいてくるもう一人の仲間に気付かなかった。
右肩をがっしり掴まれ、
「ねえ。小さい頃の誰に似ていると思う〜?」
イグニスもにんまりと口の端を上げる。
今まで黙っていたシエルが沸騰していくヤカンのように顔が赤くなっていき、
「だ、誰にも似てないよ!」
急に顔を上げたと思ったら強気に言い放った。顔はのぼせたように赤くなっていた。
「そんなことないよ〜。ほら小さい頃の……」
「あー! 全く似てない」
肩をすくめるライにソーアは近づくと、
「なにを隠そうとしているの?」
ソーアの服に指をさし、耳打ちした。
「その服は元はシエルのだ」
その瞬間、背筋に冷たい風が吹き抜けた。
もし僕がこのことを知っているとバレたら殺されるのではないか? いやここは逆に日頃の恨みを晴らす時だ! 恨みはないが……
「僕、誰に似てますか?」
徐々に近づくソーアを見る目はだんだんと恐怖へと変わっていく。
「誰に似てると思うんや?」
「誰に似てると思う〜」
という、三方向同時に攻められ、逃げ場のないシエルがとった行動は……
バタンと大きな音がしたかと思うと目の前のシエルが気絶していた。
「あー! シエル!」
「やっちゃったね〜」
シエルの身体を揺するアマランスと、面白そうに笑うイグニス、助けを呼びに行こうとするライ。
どったんばったんする控え室に、
「ソーア様、シュリ様、入団式の準備が整いました」
執事が四十五度に、丁寧に頭を下げていた。




