#43 この子は誰かに操られていたんだ。
少女は破格の竜巻をつくる。確実に本気で殺りに来ている。
さっきは目で見えなかったが、竜巻の渦がはっきり見えている。
「これなら、ソーアが考えていた水の渦を作れるかもしれない」
どうやってやるんだ。
心の中でソーアが聞いてくる。具体的なプランはなかったようだ。
「まぁ俺の華麗なる動きを裏から傍観しとけ」
自意識過剰日本代表選手。ソーアの身体を借りたスイキが竜巻の側面に、着地の瞬間と共に水の地面をつくり、竜巻の周りを半分垂直の状態で駆け上がる。
「なに! そんなことができるのか⁉︎ ソーア。いや、今はスイキか、お前をあなどっていたよ……これでどうだッ!」
瞬間――短剣の刃幅と同じものが竜巻の中から飛来した。
刃は、スイキの頬をかすり、血をにじませた。
「くそッ。次は避けれないようにしてやる」
竜巻の轟音で人間には聞こえない。だが、スイキには、はっきりと聞こえた。
また、刃をつくったようだ。小さい刃が何個もできるのが聞こえた。
さっきと同じ刃が、五本。これを踏み台に一気に潰す。
耳をいつも以上にすまし、刃が来る位置を予測する。
キタッ!
偏差で放たれた風のカラをまとった刃が近づいてくるのがわかる。
このタイミングッ!
スイキは水面を蹴って飛び上がる。
予想通り目の前に刃が現れた。小さな刃を踏み台にして、加速。
竜巻の側面を走り続けるスイキの行動に少女は全く気付いていなかった。外側の側面が水で埋まっていることに。
「さぁ。本当の終わりだ!」
さっと竜巻から離れると地面に着地し、顔の前で左手を勢い良く握った。
刹那――水がいっせいに竜巻内に流れ込んだ。
予定どおり、巨大な水の渦ができ少女は飲み込まれた。
スイキ、彼女を解放してやってくれ。
ソーア本気か⁉︎ あいつはお前を殺そうとしたんだぞ。
彼女にはまだ聞きたいことが山ほどある。
わかったよ。そうゆうと、左手を引きながらパッと開いた。
すると、急に栓が抜けた風呂の水のように、すぅーと水が引いて行った。
激しい水に巻き込まれとっくに竜巻は維持できなくなっていた。
あくまで臨時ということだろう、スイキはソーアに身体を返してくれた。
ソーアの身体を操作するのは疲れるらしい。
まるで機械かよと思ったが、脳が機械の疑惑がある以上笑えない。
狐の面が取れた銀髪の少女はグッタリした様子で気絶しているようだ。幼い顔が謎の罪悪感を感じさせる。
「…………げっほげっほ」
少女は水を激しく飲み込んだことで、風邪の時のように激しく咳き込んだ。
「大丈夫か……」
鬼の手ではない、右手を差し出すソーアを見て、驚き百パーセントの声でスイキが聞いてきた。
おまっ! えーー! まさかその子に好かれようとしてるんじゃないだろうな。
実際にはわからないが疑いの目を向けてそうな声のトーンだ。
そのまさかだよ。
おいクソたらし、そんなことなら俺がお前を始末してやる。
冗談だよ。この子は……
「ここは……」
うっすら目を開けながら、周りを見渡した。
それだけ言うとバタンと後ろに倒れた。また気絶したようだ。
やっぱり。この子は、誰かに操られていたんだ。




