#42 今度こそ終わらせてあげるよ
ん? 僕の前髪どうして全て右に向いているんだ?
そうか。この風は真正面から来ているではない。
風が強すぎてわからなかったが、少し左から右にかけて、反時計回りに風が吹いているんだ。
目に見えないような竜巻のようなものができているはずだ。
ならば、この竜巻を逆に利用して、渦のようなものをつくれないだろうか。
ものは試しだ。
剣に水のカラを込める――はずだった。
込める直前――ポキっと剣が折れた。最悪のタイミング。ここまでくるとどんな素材を使っているのか気になる程だ。
対照的に少女の短剣は傷一ついていない。
「うっそ!」
ソーアの折れた剣を短剣で器用にはね上げる。
雪崩れが流れるかのように、バランスを崩し、仰向けになったソーアに馬乗りになる。
「終わりだ。ソーア」
少女が高らかに短剣を振りかぶる。
銀色に光る切っ先が今から死ぬことを連想させる。
抵抗する気力もなく、ギュッと目をつむった。
――カキンッ。
恐るおそる、目を開けるとなぜか、少し離れたところで立っていた。
「勝手に死ぬんじゃねぇよ」
スイキが怒り口調で訴えてくる。口振りから相当怒っていることが読み取れた。
どうやらスイキが入れ替わり、抜け出してくれたらしい。
「この野郎! 今度は俺が相手だ!」
「んッ!……」
地面に刺さった短剣を勢い良く引き抜いた。地面に刺さるほどの力で刺したのだから、もし頭に当たっていたら、頭蓋骨陥没待ったなし。
うまい具合にスイキが入れ替わってくれて良かった。
少女は首を右に傾けた。怪訝な表情を浮かべているのが予想できる。
「ソーアには、二重人格の設定があったのか……」
「はぁ! 違うわ! 俺はスイキだ!」
「ん? 本当にお前は水のカラの使い手か? お前はどっちかというと、は――」
訝しむ目を向ける少女をスイキはさえぎった。
「そんなこと、どうでもいいんだよ! 忠告だ。出口はどこだ」
「誰が教えるとでも」
「なら拷問でもなんでもして聞き出してやる」
スイキもこの少女が非常に危険なことぐらいわかっている。
敢然と地を蹴ったスイキに少女は「はぁ〜」とため息をはいた。
短剣を胸の前で構え、風のカラを込める。
「今度こそ終わらせてあげるよ」




