#040 赤の斑点
もう一度やってみようと、床に落ちた銀色の棒を拾い上げた。
ザラザラする持ち手を握り。
さっきよりも大きく振りかぶり、力強く振る。
するりと流れる様に、さっきのゴーストが持っていた剣と同じものが出てきた。
砂となったゴーストの持っていた剣の刃はもう刃こぼれしている。
良いのを使っていないことを可哀想に思う。きっと組織の環境も悪いのだろう。
つまり、今僕が持っているこの剣も強度が非常に低いということか。
そんなことを考えながら、廊下に出ると白を基調とした無機質の廊下が左右に続いていた。
蛍光灯の電気が壁の側面を照らしさらに白を強調させる。
目の前には上に階段が続いている。
深く考えず左に進もうと思うと無数の足音が響いてきた。
とっさに目の前の階段裏に身を隠す。
ゴーストがソーアのいた扉を開くと一人が舌打ちした。
「くっそ。もう行かれてる。三方向に別れるぞ」
リーダーらしき男が周りのゴースト達に言うと、三方向に散っていった。
頭上でカンカンと複数の人が登っていく音が聞こえた。
そのたびに、見つかるのではないかと身震いした。
あんなに大人数を一人で制圧する自信は流石にない。
リーダーの男は一人残り、アゴに手を当てて考えている様子だ。
この機を逃す手はない。出口を聞き出せるかも。
音を立てない様に細心の注意をはらい。階段裏から飛び出した。
「まさか!」
刹那――
高らかに響く二者の剣が交わった。
男は振り向きざまに剣を構え、額に汗を浮かべた。
僕の足音が聞こえていたのか? いや、違う。この男は振り向く時に『まさか』と言っていた。僕がここにいることが読まれていたとしたら……今の完璧の不意打ちに対応できた理由も納得がいく。
この階段の材質上、登ったらやたらと響く。そして、通路は一直線で長い。
逃げたと考えるのならば、ゴースト達が来た方を除けば二択。
だが、先に駆けつけた五人がやられてから、三十秒も経っていない状況で逃げる事は不可能。
つまり、隠れたと考えるなら、階段の裏しか隠れる場所はない。
そんなことをこの数秒で考えたというのか――この男、相当頭が切れる。
だが、切れるだけでは勝てない。
細い剣にカラを込める。
剣に水色のカラがまとわりつく。
男も危険を察知したのか、少し後ろに後退する。
だが、そんなこと何の意味も持たない。
今ここにある空気中の全ての水に力を借りて、しかと対象を見定め。
流れる滝の様に疾く、美しく――疾駆する。
破格の疾さで、近づいたソーアに対応できるはずもなく。断末魔を上げる暇さえなく一刀両断。ゴーストの砂が宙に赤黒く舞う。
白の廊下は赤の斑点で埋め尽くされた。




