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#004 狂気のシュリ

 二人は下山すると街に入っていった。

 街は山から見えた時よりも人が多く活気に満ち溢れていた。

 そして、人が大勢いる所は苦手、いや超が十個つくほどに苦手なソーアは前を行くシュリに頼んで脇道に入った。

 ソーアとは対象的にアウトドアのシュリはもっと、街を散策したいようだった。


 「もうちょっと街、見ようよ。靴買うんじゃなかったの?」


 シュリは半ば怒り気味で言った。

 山を下山する際に靴を買う話をしていたのだ。

 

 「あ、でも私たちお金持ってなくない?」

 「あ、そういえば……」


 決定的なことを忘れていた。

 お金が無いと何も買えないのは街の雰囲気を見ているとわかる。

 シュリは辺りを見回しながら疑問を口にする。


 「というかここどこなの? 母さんの故郷だとしてもこんな変な場所だったの?」

 「わからないけど、自分たちに起きたことを整理しよう」

 

 ソーアは口元に手を当てて考え出した。


 「まず、《秘密の扉》に入った。街の看板やらは文字が全く読めなくい」


ソーアはまさかと呟いた。


 「も、もしかして、僕たち《異世界転移》したんじゃないか」


 ソーアは狼狽した。


 「イセカイテンイ? 何それ?」


 はじめて聞く単語に困惑した。

 「よくわからない所に入って文字が読めないって《異世界転移》しかないじゃん」

 「よくわからないけど、まずいことなの?」


 ソーアが早口で一気にたたみかけた後、シュリは訳がわからないという表情できいた。


 「うん。かなりね。そもそも世界が違うとなると日本円があっても物は買えないし、生きていけるかどうかすらも怪しい」

 「え、それまずくない?」


 二人が焦っていると、後ろから大きな声が聞こえた。

 

 「おーい旅行者さん達じゃないか〜」


 ソーアは振り向くと、やっぱりと心の中で呟いた。

 そこには、ボディービルダーのような屈強な男達が二人いた。

 皆手にはナイフを持っている。

 

 「旅行者は金持ってるのが当たり前なんだよ〜有り金出せよ」

 

 ソーアは深く深呼吸するとシュリに小声で耳打ちした。


 「逃げるぞ」


 シュリはポケットから輪ゴムを出した。

 後ろに下ろしていた髪の毛を無造作にまとめると言った。


 「逃げる? こんな雑魚相手に? ファ!」

 「へ?」


 シュリは相手を挑発する様に鼻で笑った。

 戦うという選択肢はなかったソーアは変な声を出してしまった。


 「なんだと! お前たち出てこい!」


 リーダーが怒鳴ると後ろにスタンバイしていたのか、後ろの通路からも二人の屈強な男達がナイフを持ってニヤニヤしながら出てきた。

 あっという間に包囲されてしまった。


 「何人増えても一緒。雑魚には変わりないんだから。むしろそっちが金出せよ」


 シュリはため息をつき、あわれみの目でリーダーの男を見据える。

 リーダーの男は完全に堪忍袋の尾が切れた。


 「テェメェラー‼︎ かかれー!」


 男達は一斉に二人に切りかかってきた。

 男達の汚い雄叫びをあげるの中、一人こう呟いた。


 「血が騒ぐぜ」


 そう呟いた赤毛の少女は狂気じみた顔でニタァと笑った。


 「アハハハハハハハハハハハハハハッ!」


 シュリは発狂しながらソーアに飛びかかってきた男の顔面を風の如く、素早く動き右手で正拳突きをする。

 突かれた男は跳ね返された。

 別の男が背後に迫っている。

 シュリは男の腹に右肘を勢いよく食い込ませると、男はたまらず地面に倒れ込む。

 そのままの勢いで、左足を高く上げ後ろにいたまた、別の男の顔面を蹴り飛ばす。

 

 「み、みんな! これは皆の仇だっー!」


 この男、意外と仲間思いなのかもしれない。

 前方にいたリーダーの男は走り出した。

 蹴り飛ばすことに集中していたため、シュリはナイフに気付くのが一瞬遅かった。

 シュリは間一髪よけたがリーダー格の男に右腕をナイフの切っ先がかすった。

 だが、シュリには精神的にこのかすり傷はかなり、こたえたようだ。

 シュリは自分の落ちてゆく血液を見た。

 ゆっくりと顔上げていき見た。

 目の前にいる人をゴミを見るような目で。

 カッと狂気の目を大きく見開いた。


 「私の肌にキズをつけたなっ‼︎」


 リーダーの男は完全にひるんだのか、手がぶるぶると震えている。

 シュリは叫ぶとリーダーの男を押し倒しナイフを奪いとった。

 馬乗りになったシュリは叫んだ。


 「殺してやるっ!」

 「「やめろ!」」


 ソーアと誰かの声が重なった。

 ナイフの切っ先はリーダーの喉仏ギリギリで止まっていた。

 ソーアは深呼吸すると、声の主の方に目を向けた。

 そこには、一切シワのない黒色の軍服を着た金髪の男が剣の先をこちらに向けて立っていた。

 


 

 


 

 



 

 


 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

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