#039 砂
けたたましく鳴り響く警報音。ここが本当に地下だということが怪しく思えてくる。
人々の不安を煽るように作られたであろう音が、自然とソーアを急かせる。
「早くしないと……ん? なんだこれ」
意識を失っているゴーストの懐中から出てきたのは、小さい棒のようなもの。
警棒のようなものかな?
左手の鉤爪もあるが、やはり武器が多くあったほうが便利だと思う。
海外映画などでよく見る警察が警棒を振って伸ばすシーンを思い出した。
試しに振ってみれば?
スイキはソーアの考えていることを読んだのか話しかけてきた。
やってみるか。
棒を振りかぶって、勢いよく振ってみると、カシャン、という音と共に中の物が動いた気配がした。
これ案外いけるぞ。もういち――。
振りかぶった直後、近くにあったこの部屋唯一の扉が開かられた。
「くそ、なんだよ」
扉を開けた一人のゴーストは無言で襲い掛かってきた。
ざっと見たところ五人といったところか
『ソーアくんの三十秒クッキング〜ナレーターはスイキでお送りしま〜す。最初に襲ってきたのはゴーストのお兄さん。顔が全然見えませんが、たぶん俺よりブス! さあ、どう調理するのでしょうか。ゴーストが持っているほっそい剣を難なく避けて爪を腹にぶすり。残りのゴースト達呆気に取られている様子。ゴーストの手がブルブル震えている。恐怖を植え付けることに成功! あっ! 全員で襲うことにしたようです。この窮地――でもなんでもない状況をっ……ジュルリ……むふふふふふ……二ィ……ニクゥゥゥ!』
おいっ。身体かえせよ勝手に人の戦闘実況しといて、しまいには身体まで乗っ取るのかよ。
でも全員殺ったよ。ほら。
あまりにも呆気なく、地面には六つの白ローブ。全員倒した証拠だった。
「では、早速。おニクのじか……あれ?」
ゴーストの白いローブをめくると、無い。普通に考えてあるべき物がそこには無い。
白ローブの中には死体が無かった。あるのは砂。それだけだった。
「俺のニクがぁ……とほほ……」
そうとう落ち込んだのか、すんなり身体を返してくれた。
「ま……まあ、ここから出たら肉ぐらい食べられるから元気出せよ。人間は嫌だけど」
なんか可哀想だったので慰めてやると、
そ、そうだよな。でも人間がいい。
じゃあ一生肉食うな!
うっ……それはツライ……。
なら、他の肉で我慢しろ!
なぁ……そんな強気に言ってるが、俺はお前の身体なんかすぐに乗っ取れるんだからな。
ん? 知ってるよそんなこと。
えっ! 知らないと思ってた。じゃあ何でそんな強気な態度を取れるんだ?
別に僕の身体を完全に乗っ取ったて、どうせ殺されるだろ。
俺は絶対に殺されない自信があるね。
じゃあどうして乗っ取らないんだ?
別にこうしているの悪くない。そう思っているだけだ。
なんか釈然としないなぁ。




