#034 どう捜査する?
「風のカラのシルバー……っておい」
うなずくアマランスに狼狽した様子のシエル。
「おいそれ報告するのか、パニックになるぞ」
「いったいどういうこと?」
「シュリは知らなかったな」
ピンと人差し指をさしてイグニスは説明しだした。
「さっきソーアをさらったと思われるのは風のカラを使うシルバー・ダーリャ。まあ一言でゆったらこの国の政治家の娘だ。それも人望が厚い。そんな奴が敵にいるとわかれば
どうなると思う?」
「知るかよ」
ため息をつくとしょうがないなぁと言った風で肩をすくめた。
「ちょっとは考えてみなよ。結論は、大パニックだ。政治家の娘が敵なら、親も敵だと思われかねない」
「ただの想定に過ぎないだろ」
「世論はうわさだけでも、簡単に傾くもんだ。火のないところに煙は立たないというだろ」
「おいイグニス。正確には『立たぬ』だ」
「まあ細かいことはいいじゃない。そこでだ、上にダーリャのことを報告するかい?」
一人ひとりの顔を、イグニスは眺めていった。
「私が思うに、あの時のダーリャはおかしかった」
「何がおかしかったんだ?」
「シエルも聞いたやろあの口調。あの子はあんなに口が悪くない」
「そんな、口調なんて――」
「それに」
シエルの言葉をさえぎってアマランスは続けた。
「あの仮面。あの子が仮面をつけるなんてあり得へんねん」
「どうしてそう言い切れるんだい?」
イグニスが優しくたずねる。
「昔、ピエロのお面を見てから急に怖がってん。それっきり、他のお面を見るたびに激しく怯えるようになってん。だから自ら仮面をかぶるなんて、大袈裟かもしれないけどあの子にとったら自殺行為のようなものやねん」
「つまり、あいつは操られていたと?」
シエルの目を見ながら、ゆっくりうなずく。
「ところでシュリちゃん。あれを使ったら、ソーア君の場所はわかるの?」
一瞬何のことかわからなかったが、すぐに理解した。
私、今日冴えてる!
そんなことはない。ただ思い出すのが早かっただけである。
「わからないが、同じことを考えていると出来ることは確かだ」
「じゃあ今、ソーア君が考えそうなことを考えてみて。助けて〜とか、ここどこ〜とか」
「んんんんん〜」
目を閉じて一通り考えてみたがペンダントは反応しなかった。
「やっぱり距離があると無理なのか〜」
「なあ、お前ら何の話をしてるんだ」
「「それは女の秘密だ」よ〜」
奇跡的に同タイミングで同じことを言った。
「はぁ〜?」
「とにかく明日の報告はダーリャのことは伏せておいた方がいいだろうね〜」
「そうだねっ」
一冊の本を取り出し、机に置いた。
「さぁ、どう捜査する?」
取り出した本は地図帳だった。




