#016 ゴースト
「おい。何で周知の事実であるカラの事を何一つ知らないんだ?」
シエルは振り返りざまに目を剥いた。
その目は双子の心を射抜くような鋭い視線だ。
「アマ! こいつら地上人だろ。地上人が出たら捕まえるのがベスト。別に殺しても構わない。そういう規則だだったよな」
「そうだけど…………」
アマランスは俯いてしまった。
「よって」
左腰のホルスターに手をかけた。
「規則に乗っ取って殺させてもらうっ!」
瞬間、黒と水色の模様を織り交ぜた拳銃をホルスターから勢いよく抜きとった。
カラを銃に込め、水色の模様がシエルの手を中心にきらめく。
銃口を二人の地上人に向けた。
「悪く思うなよ」
「やめてー‼︎」
アマランスが叫んだ声もむなしくカラを込めた銃、独特の銃声が昼の庭にとどろき響いた。
ん? なんだ。
両目の視界に捉えた赤と青の髪の毛。
刹那、左右の首筋に手刀が同時に勢いよく押し込まれた。
――な、なぜだ……まさか弾をよけた……の……?
ぐらんと目の前が揺れ、シエルは力なく崩れ落ちた。
†
「ん……はっ!」
シエルはベットから勢いよく飛び出び起きた。
消毒液の臭いが鼻を刺激してくる。
外は赤く夕焼けに染まっていた。
「お、おぉぉそよ〜」
壁の側に立っていたイグニスが暇そうにあくびをした。
「俺は、いったい……」
「あーソーアとシュリに両方から首筋を叩かれて気絶したんだよ」
「そう……だったのか」
「もう凄かったよ。弾が止まって見えてるかのように弾を避けて行ったんだもん。眼福だったよ」
イグニスが満足そうに何度もうなずく。
「騎士を五年ぐらいやっているがあんなの初めてだ」
「んー俺も初めてだった」
イグニスがクスッと笑った。
「何で笑ったんだ」
シエルは馬鹿にされたと思い顔をしかめた。
「いやいや。初めて意見があったな」
「確かにな」
シエルは素直に感心した。
「あら。今日はやけに素直ねぇ」
急におねぇ口調になるイグニスの言葉に顔を赤らめながら「うるせえよ」と突っぱねる。
「本当にごめんなさい!」
荒々しく扉を開ける雑音と同時に、その雑音をゆうに越すアマランスの声が医務室中に響きわたった。
アマランスは二人にこれまでの経緯を事細かに伝えた。
「なるほど……」
「これも規則だというのかね。シエル裁判官くん」
思考を巡らせている最中にイグニスが割り込んできた。
「あ、いやそれより。最初の白ローブの奴らってどこかで聞いた気がするんだが……――まさか……!」
シエルが額に当ててた指を勢いよく外した。
「えっ⁉︎ 何がわかったん?」
「ああ、おそらくそいつらは――」
「《ゴースト》だろ?」
いいとこ取りをしていったイグニスを睨みつけた。
「《ゴースト》ってあの、ライが追っている奴ら?」
驚きっぱなしのアマランスにシエルが相槌を打つ。
「おそらくは」
「えーっ! 何で地上なんかにおるん?」
「それはまだわからない。ただ……」
「ただ?」
「何かが起ころうとしているのかもしれない」
シエルはすっかり日が落ちた庭を眺める。
「ところで。話が戻って悪いんだけど」
イグニスが話の腰を折って割り込んだ。
「結局ソーアとシュリに関してはどうするの」
「それに関してはあいつらと話し合ってから決める。アマランス悪いが二人を呼んできてくれないか?」
「おっけ」
アマランスは小走りで二人を呼びに行った。




